【発掘キネマ】〜オススメ映画でじっくり考察 ☆ネタバレあり☆

【発掘キネマ】〜オススメ映画でじっくり考察 ☆ネタバレあり☆

いつの時代も名作は色褪せません。
ジャンル、時代いっさい問わず、オススメ映画をピックアップ。
映画で人生を考察してみました。
【注意】
・ネタバレあり
・通番は個人的な指標です。
・解説、感想は個人の見解のため、ご理解下さい。



『マダム・ウェブ』 

(2024年・アメリカ)

〈ジャンル〉ミステリー/アドベンチャー



~オススメ値~

★★★☆☆

・ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース4作目。

・未来予知の力で敵と対峙するサスペンスドラマ。

・未来は見えても選択するのは現在の自分。


(オススメ値の基準)

★1つ…一度は見たい

★2つ…良作だと思う

★3つ…ぜひ人にオススメしたい

★4つ…かなりオススメ!

★5つ…人生の一本、殿堂入り

〜オススメ対象外は月毎の「ざっと書き」にて紹介



〈〈以下、ネタバレ注意!!〉〉



《あらすじ》


『1973年、アマゾン熱帯雨林で妊婦の科学者コンスタンス・ウェブは探検家のエゼキエルと一緒に新種の蜘蛛の研究をしていた。だが、エゼキエルの裏切りによってコンスタンスは撃たれてしまう。伝説の蜘蛛人間が姿を現し、彼らの儀式によってコンスタンスは子供を無事に産み落としたあと息を引き取った。そして現代。救急救命士として働くカサンドラ・ウェブは相棒のベン・パーカーと一緒に横転した車から男性を救助していたが、キャシーだけ車に閉じ込められたまま水没。生死の境を彷徨ってしまう。その事故をきっかけにキャシーは未来予知能力を手に入れる。始めのうちは不思議な力に戸惑うキャシーだったが、その後、同僚オニールの死を予見していながら防げなかったことをきっかけに未来予知を人命救助に生かそうと決意する。まだオニールの傷も癒えていない頃、今度は地下鉄内で3人の少女が謎の男性に殺されるビジョンを目撃。キャシーは3人を男の襲撃から救い出す。』


〜この糸が、すべての運命を繋いでゆく。〜


《監督》S・J・クラークソン

《脚本》マット・サザマ、バーク・シャープレス、クレア・パーカー、S・J・クラークソン

《出演》ダコタ・ジョンソン、シドニー・スウィーニー、イザベラ・メルセド、セレスト・オコナー、タハール・ラヒム、エマ・ロバーツ、アダム・スコット、ほか



【死の淵で手にした未来】


本作は、ソニーによるスパイダーマン関連作品群の「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」の一作であり、『ヴェノム』や『モービウス』等のシリーズに続いて、これが4作目となる。
MCUにスパイダーマンが仲間入りして以降、ソニーはスパイダーマンを登場させずともスパイダーマンに関連するキャラクターを描いた作品を描いてきた

本作の主人公は女性救急救命士のキャシーである。
キャシーの誕生は神秘に満ちている。アマゾンで新種の蜘蛛を探していた母コンスタンスは1973年、共同研究者であり探検家のエゼキエルの裏切りに遭い、殺された
その時、キャシーを身ごもっていたコンスタンスはアマゾンの先住民族の儀式によってキャシーを出産し、命を落としたのだった。
母がなぜアマゾンに蜘蛛を探しに行ったのかは、物語の中盤で分かる。生まれる前の診断でお腹の中の子供に重大な疾患があることが判明したコンスタンスは、彼女が生きられる術を探したのだ。
その結果、キャシーは確かに元気に生き続けることができている。

ただし、新種の蜘蛛の力を秘めているといっても、スパイダーマンのように蜘蛛の糸を飛ばして派手な戦闘や爽快感を前面に押し出した作品ではない。
キャシーが手に入れたのは未来予知能力。救命士のキャシーは未来予知の力によって、エゼキエルに殺される運命にあった3人の少女をどこまでも守り抜くのだ。
未来に抗い、執拗に追いかけてくる敵の魔の手から逃れていく展開は緊迫感のあるサスペンスドラマである。
「ターミネーター2」で、T-1000がどこまでも追いかけてきたあの緊張感を思い出す。

エゼキエル・シムズはスパイダーマン同様に蜘蛛の力を有している。
本作の時間軸はとある理由からスパイダーマンが活躍する以前のストーリーであることが推測されるのだが、エゼキエルはスパイダーマンのようなデザインの黒いスーツに身を包み、壁や天井を這って移動することもできる。
本作にスパイダーマンは不在だが、スパイダーマンを想起させるキャラクターが敵役となって立ちはだかっているのだ。

また、作中ではベン・パーカーが登場し、さらに彼の弟夫婦の間にもうすぐ子どもが生まれることが示される。
パーティで催された名前当てゲームではギリギリで邪魔が入って生まれてくる子供の名前は明かされなかったが、「ベン叔父さん」との関係性を思えば、その子が後のピーター・パーカーであることは明白だろう。
キャシーのみならず、そこにいる誰もが十数年後、街を守る偉大なヒーローの誕生であることを知らない。
とは言え、このようなつながりはあるものの、物語の中心はあくまで主人公キャシーと三人の少女たちの行動にあるのだ。


【未来を変え続けるヒーロー】


事の発端はエゼキエルが毎晩悪夢の予知夢にうなされていることにあった。
自分を襲撃しにくるであろう3人の少女。彼女たちが力に目覚める前に止めなければ、自分の命が危うい
そのためエゼキエルはまだ何も知らない少女たちの命を狙い始めるのだ。
一方、キャシーはたまたま乗り合わせた電車で少女たちが殺される運命を知る。凄惨な未来を変えるため、キャシーは何も知らない少女たちを守り始める。

主人公は未来を断片的に見る力を得るが、それは便利な能力というよりも、むしろ負担の大きいものである。
危険な未来が見えてしまう以上、何もしなければそれが現実になるかもしれないし、かといって行動すれば必ずうまくいく保証もない
例えば実際にキャシーが少女たちをエゼキエルから守っても、彼女たちはなぜ自分たちが狙われているのか理解できないし、キャシーにも説明できない。
それだけでなく、10代で自由奔放な少女たちはキャシーの言い付けや念押しを守る事なく自ら命を危険に晒すような行動を取ってしまうのだ。
守りたくても、理解を得られなければ守り抜くことは難しい。結局、追いついてきたエゼキエルから逃れるためにその場で機転を効かせて乗り越えるしかないのだ。

この状況は、「先のことがある程度予測できてしまう現実の人生」にも通じるものがある。

たとえば仕事や人間関係においても、「このままだと良くない結果になるかもしれない」と感じる場面は少なくない。しかし、その予感があるからといって、どう動けば正解なのかは簡単には分からない良かれと思って取った行動も、意に反して相手に違う行動を取られることもある。本作は、まさにそのような不確実な状況の中で、それでも選択し続ける人生の宿命を描いている

キャシーの未来予知は単に災難を回避するだけではない。3人の少女たちを助けることで災難を回避しようとしているが、彼女たちも気付かぬままにその結果として3人の少女たちがいずれヒーローに転じる未来へと繋がっている

そもそもエゼキエルもまた未来予知によって自らの運命を変えようとしたのだ。結果的に予知夢とは異なる形で自らの破滅へと導かれたのだが、未来予知は決定事項ではないことが分かる。

未来は自らの手で変えることができる。変えなければ避けられない悲劇なら抗う。そして、その先がどのような未来になるかは分からないのだ。

今回の戦いではキャシーたちはエゼキエルを倒したが、キャシーがエゼキエルによって倒されていた未来もあり得ただろう。未来を変えようとしたことによって、本来3人の少女たちが犠牲になるはずだった運命に、キャシーの犠牲も加わる可能性もあったのだ。現に、キャシーはこの戦いで視力を失ってしまった。原作のキャラクター設定に近付いたのだが、それもまた未来を変えた先に読めなかった未来である。

選択の積み重ねの先に未来が訪れる。

そもそもキャシーがこの世に元気に生まれることができたのは、母コンスタンスが命をかけてアマゾンの奥地まで足を踏み入れてたからである。それもまたコンスタンスの選択の上に繋がった道である。

未来への道は決して不変ではなく、常に変わり続けるのだと感じられるのだ。

総じて『マダム・ウェブ』は、単なるヒーロー映画としての派手さよりも、「不確実な未来の中でどう生きるか」という視点を与えてくれる作品であった。

未来が分からないことを不安に感じるのではなく、分からないからこそ抗い、選び続けるしかない。未来予知は無敵ではない。その積み重ねが結果につながるという、ごく現実的な主人公の戦いが楽しめるサスペンスドラマだった。


(116分)