私は、ネット証券に加えて、国内最大手の証券会社の支店に口座を設けている。当初の目的はカードで出し入れ自由のMRFを普通預金の代わりに利用しようと考えたのだが、窓口の勧めで株式のホームトレードもできるようにした。
総合証券は、ネット証券と異なり担当者がいる。開設したMRFのかなりまとまった金額を見て投資信託か株でもと舌舐めずりをしたのだろう、担当者が早速家に来た。真面目そうな中年男で、地域型社員ですから定年まで支店を離れませんと言った。
私は、長年記録した非鉄銘柄の玉帳を見せ、このような売買をするのは、手数料の安いネット証券でしかできないだろう。と言い、彼も納得してかえった。
大手証券会社の利用のメリットは、調査能力の高さにあり、銘柄ごとのレーティング発表はその株価へ跳ね返る。またレポートの内容も充実している。彼は私が手掛けている非鉄銘柄のレポートを送り続けてくれた。
こうなると、私も情にほだされる。長期保有を目的とした企業の株をポツリポツリと拾って、金がMRFから株式へある程度移動しし、彼への面目が保てた。
その株は買っている期間は含み損であったが買い終わってしばらくすると含み損が減っていき、やがて含み益にかわり、それが次第に増大していく。
彼も、私の口座に関心を持って拾い方とその後の静観の態度を見ていたのだろう、電話をしてくるようになった。非鉄銘柄の相場観を聴きにだが、私は予測下手を自認している。「とりあえず、つなぎ売りを始めた段階だが強いね。」とか「保ち合っているので様子見だよ。」と、言うしかない。
昨年から、その彼が支店が開催する講演会の案内を送ってくれるようになった。本社の調査部やお抱えアナリストが講演する定例の講演会だが、暇だから妻と二人で参加している。将来はドル円が130円になる。日経は3万円になると明るい未来を語ってくれる。弁舌さわやかで講談を聴くより面白くて楽しい。帰り道で、嘘だよな。ありっこないよな。とあれこれ批判しながらだが。
しかし、気になることがある。会場が300席であれば満席、500席であってもそれも満席に近い、そしてもっとも驚くのが参加者の大半が私と同年輩で、しかも配られたボールペンでメモを取っている人が多いことだ。
これが、高齢者の金が証券会社に狙われている確かな証拠だろう。
今私は、場帳とグラフをたよりにツナギをどうにかやっているが、そのうち売買が乱れてくる。そうすると彼は言うだろう。「お歳ですから投資信託に切り替えませんか」そしてゴッソリ・・・・・
このあたりだろうな。わたしが証券会社のカモになるのは。