ズーラシアンブラスの制作者大塚です。

今回はズーラシアンブラスの演出法第2弾、プログラムのつくりかたについてお話しします。

 

 お笑いネタはブラスアンサンブルの文化のひとつ

 ズーラシアンブラスのコンサートは大抵、いわゆる【お笑いネタ】が入っています。

これはズーラシアンブラスが特別なのではありません。

かの「フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル」から始まり「アート・オブ・ブラス・ウィーン」、「エンパイア・ブラス」、「カナディアン・ブラス」、「ジャーマン・ブラス」など、殆どのブラスアンサンブルはこの【お笑いネタ】を取り入れています。言うなれば【お笑いネタ】はブラスアンサンブルの文化みたいなものです。

 

ただ、ズーラシアンブラスがほかのアンサンブル楽団と少し異なるのは、その多くがアンコールに取り入れているのに対し、ズーラシアンブラスは本編の演目にしている点にあります。もっとも、「ムノツィル・ブラス」のように全編ネタ的演出の楽団もありますが。

 

 集中力をコントロールするスパイス

 では、なぜお笑いネタを本編に入れる必要があるのかといえば、それはズーラシアンブラスの中心的な聴衆が親子であるためです。クラシックにあまり興味がない人や、小さな子どもたちにとって、クラシック音楽は聴くための集中力が散漫になりがちです。観客の集中力を演出する側がある程度コントロールすることによって、終演時に「楽しかったね」「また来ようね」といった感動が生まれてくると考えられるのです。そうした観客の集中力をコントロールする上で【お笑いネタ】は重要なスパイスになります。

 

 

 ズーラシアンブラスのコンサートは大きく分けて「音楽の絵本」「定期演奏会」「イベント出演」と3つあります。「定期演奏会」はコンサートごとにテーマやコンセプトが異なり、「イベント出演」では、イベントを主催する主催者の意向が大きく演出に関わってしまいますので、ここでは「音楽の絵本」の演出についてお話ししたいと思います。

 

 「音楽の絵本」は文学作品の入り口として「絵本」が用意されているように、クラシック音楽における「絵本」のような役割を果たしたいという意味合いで「音楽の絵本」というタイトルをつけています。絵本のようにお話があるコンサートという意味ではなく、クラシック音楽の要素を絵本のようにかみ砕いたコンサートを演出すると言う意味で「絵本」というイメージを利用しています。

 「音楽の絵本」はいわゆる子どものための音楽会とは異なり、小さなお子さんが知っている曲を中心に演奏する訳ではありません。子供たちが知らない楽曲もどんどん演奏します。

 知らない曲を演奏しても最後まで楽しくコンサートを鑑賞するために重要になってくるのが、時間とともに移り変わる観客の集中力をプログラム構成によってコントロールし、楽しい思い出となるコンサート体験を実現させることです。

 

 

 集中力の変化を時間軸で区分する

 私たちは集中力の段階を6つに分けています。

それぞれ

①集中力の高い時間帯

②集中力を取り戻す時間帯

③観客をあえて飽きさせる時間帯

④興味を引き戻す時間帯

⑤リフレッシュする時間帯

⑥盛り上げる時間帯。

これら観客の集中力の段階を鑑みながらプログラムを構成することによって楽しい思い出となるコンサート体験を実現できるものと考えています。

 

①集中力の高い時間帯

 コンサートの冒頭は、開演ベルとともに出演者も観客も最も緊張する時間帯です。この時間帯は知らない曲や少々難しい曲でも観客は無理なく聞けてしまいます。逆に言えば、ここを逃してはもったいないのです。ズーラシアンブラスのコンサートでは冒頭3曲は司会も登場しないことが多く、集中力を音楽家を聴くことに注力しています。

②集中力を取り戻す時間帯

 コンサート1部の中盤から休憩までの時間帯は観客の集中力は失われつつあるとても難しい時間帯です。ズーラシアンブラスではこの時間帯に司会者が登場します。司会の登場とお話により少し集中力が回復します。そしてメンバー紹介など息抜きの時間を作ります。そして何よりこの時間帯にソロ楽曲を取り入れます。ソロは人を惹きつける力があります。

③観客をあえて飽きさせる時間帯

 休憩明けの2部の冒頭は集中力が最も散漫になっている時間帯です。一部を聴いて脳も疲れていますし、休憩中にトイレに行ったり物販を覗いたり飲食をしたりと、特に子供の集中力は果てしなく散漫な状態です。ここでは無理に集中力を引き戻さず、いっそのこと子供には飽きてもらいます。集中力を引き戻すためには、飽きてしまうことも必要なのです。聴衆を絶妙に飽きさせるには、古典派あたりのどクラシックが最適です。

④興味を引き戻す時間帯

 飽きてしまった後は比較的簡単に集中力を引き戻しやすくなります。ここで、冒頭の【お笑いネタ】が効果てきめんです。観客はどんどん舞台に惹きつけられます。

⑤リフレッシュする時間帯

 コンサートの最後に向けた観客の集中力を引き出すためにリフレッシュする演出が必要になります。たとえは、客席登場など観客の概念を少し覆す演出や観客の視線を移動させることによって観客の集中力を高めておきます。

⑥盛り上げる時間帯

 「終わり良ければすべてよし」ではないですが、コンサートの締めくくりはとても重要です。この終わり方によって、楽しい思い出となるコンサート体験が実現できるか否かが決まりますし、ここで「楽しかったね」を生み出すことにより、家庭に帰ってからの豊かなコミュニケーションが醸成されるのです。ですので、最後の楽曲やアンコール曲は「感動し」「盛り上がる」楽曲を選曲したいものです。

 

 このように、ズーラシアンブラスでは演奏したい曲を並べるのではなく、観客の集中力を捉えて、それにあった選曲と演出をするように心がけています。

 

 

 

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