ジャン・グロ「クリスティーヌ・ボワイエ 」
目に映るすべてを避けるかのように、
うつむき、ものうげな表情の女性が立っている。
場所は静かな水辺のよう、
よく見ると、女性の前には薔薇が一輪、浮かんでいる。
この絵はジャン・グロの描いた
「クリスティーヌ・ボワイエ」である。
前回に続いて
アントワーヌ=ジャン・グロの作品を取り上げた。
この女性は
ナポレオン・ボナパルトの弟リシュアンの妻で、
名前はクリスティーヌ・ボワイエといい、
彼女はすでに亡くなっている。
夫であるリシュアンの依頼で描かれたものだ。
夫が亡くなった妻を描かせる、
その心境はどんなものなのだろう。
夫は長年の戦争により、
妻を幸せにしてあげられなかったという
懺悔の気持ちがあったのかもしれない。
妻の姿を思い浮かべると、
幸せな笑顔は余りなく、暗い背景で、
寂しそうな姿ばかりが浮かんできた
のではないだろうか。
この絵を観ていると、とても切なくなる。
妻の方はだいぶ若くして亡くなったようだが、
この暗い表情から、
彼女の方にも彼へのたくさんの果たせない想いが
あったのかもしれない。
彼女の身に付けているドレスにも注目したい。
生前の彼女はこのように透き通った純白のドレスや
肩に掛けられた赤いカシミアのストールが
お気に入りだったのかもしれない。
これが実に良く似合っているが、
当時、高貴な女性が好んで身に付けたもののようだ。
今晩の
「一人ぼっちのウォークマン」の旅は
生前のクリスティーヌ・ボワイエに会いに・・・・・
