女子バレーが28年の銅メダル獲得で、日本中が喜びました。本当に嬉しかった。
でもなぜメダルが取れたのか?それを考えてみたいと思います。
今までのアテネ五輪、北京五輪もいいチームでした。特にアテネ五輪は速めのBSを効果的に使いながら、更には高身長の選手がずらりと。自分的にはアテネ五輪の選手達の方が、世界的には戦える能力があり、個人的に好きですが、当時実力的には明らかに世界と差があった。メダルと言葉に発するも試合内容的には完敗。正直メダル獲れるようなバレーシステムにはなってなかった。
結局は選手達が自分たちが何が良くて、何が武器で、相手の弱点が何で、どうやれば勝てるのか?という勝利への具体的な戦術がなく、結局は選手個人技術任せになってしまったこと。
しかし、2009年に就任して以降、真鍋監督が一斉に選手たちの考え方を変えたようです。最初は戸惑ったでしょう。でも戦術を理解し、そのために意味ある科学的な練習をすることで、バレーに対する考え方が大きく変わったと思います。
データバレーの意味
全てにおいて計算された、ある意味、精密機械のようなシステムで、一度壊れると元に戻るのに時間がかかるのが非常に難点だが、逆に言うと、やることがはっきりしていて、更に詳細な部分まで指示がくるのて、選手としては迷わず自信を持って思いっきりできるというのが非常にいい部分。
特に思うのは、日頃の練習の意味。自分の課題や弱点そして自分の武器をどのような練習をすればいいのか?が明確になり、意識をした練習ができ、練習によって自分にいいのか?悪いのか?がはっきりすること。
この練習基準の明確化が、日本バレーの発展へとつながったのは間違いないと思います。
そしてその練習成果が試合で決まることによって、最も教えるのが困難な相手の癖や相手との駆け引きを試合中に覚えていくという成長と経験につながる。
いままでの選手の成長は、どちらかというと自分の目の前の2枚ブロックがきたら、この選手は手をあまり出さないとか、低いとか、ブロックの形が悪いから端っこを叩けば、ブロックアウトできるというような指示だったと思います。あくまで個人的な想像です。
だからこそ、日頃の練習では非常に難しく、試合で試すものの、具体的な確証がなく、それがチームへの成長になりにくかった。
でも今は、相手ブロックの指先まで㎝単位でどういう癖があるのか?竹下のこのセットであれば、相手ブロッカー陣は0.1秒遅れて、30㎝の隙間が2枚ブロックにできるので、そこに打てばいいとか?おそらく具体的な数字のレベルまで非常に細かい指示があるんだと思います。
そしてその戦術をきっちり練習でき、フォームや体系までビデオ判定できること。
よって、選手はそれを実際に実行すると、上手くいき、なるほど!世界の高身長相手には、そうやってポイントをとっていけばいいのか!というように、精密機械的でもあり、状況判断もできるバレーを叩き込まれたんでしょうね。
勝利の方程式の自覚
それが3年半の長い歳月を経ると、選手達の体にはこの選手にはAで対応する!別の選手にはBで対応する!のように反射神経のように浸透されている。だからこそ、選手自身が理解し、「どうやれば勝てるのかが、はっきりと分かった」という言葉がW杯でエースの木村沙織から発された。
それが自分の中での真鍋ジャパン最高峰の試合と今でも思うW杯最終戦の『日本×アメリカ』
相手の攻撃をブロック+ディグで完全に封じ込め、データ通りの攻撃で相手をかく乱していき、金メダル間近のアメリカに3-0勝ちの圧勝!逃げも隠れもしない、マグレでもない、完全実力の勝利!戦術の勝利でした。
そして今回のロンドンオリンピック。3位という素晴らしい成績でした。確かに、イタリア、ロシア、ブラジルと強豪国に負けたのは課題でしたが、ある意味それもメダル獲るための運だったかもしれません。下手に1位通過でもしたら、何と準々決勝でブラジルとの対戦でした。
更に、データバレーの神髄はリアルタイムでの情報把握。それを選手達に伝達し、選手達が実行すること。しかし今大会では驚くことにwifiが使えず、リアルタイムでなく、元々あるセット間での情報しか得られなかったことが苦戦の原因の一つと思います。
準決勝や決勝の状態のブラジルでは、今の実力的には勝てないです。100%以上の150%くらいの状態でないと。
北京、アテネ五輪の時と違うのは、チームが何をすれば勝てるのか?何が悪いと勝てないのか?データで原因が詳細な部分まではっきりわかること。
でもこういうデータって、今の現代のマーケティングビジネスに非常に似てるんですよね。勝つにしても、ポイントをとるにしても、選手個人技術の冒険ではなく、チームとして組織として非常に確率の高いバレーをしていること。
それが今の日本女子バレーの基盤となり、銅メダルに導いた結果だと思います。だからこそ、言い過ぎかもしれませんが、誰が入っても同じような力が出せるチーム力ですね。
そして気持ちが1つになり、コート上の選手1人1人が役割を果たすことで、ブロックゼロでも勝てるような勝利の戦術システムになるということ。でもブロックポイントではなく、リバウンドが30本もあり、ブロックポイント10点くらいに相当するディフェンスがあることではないかと思います。
勝負強い選手の育成と増加
そういう勝つために必要なことを積み重ねることにより、選手への経験、そして何よりも確固たる『自信』と変わり、日本の「負けないバレー」へと変貌し、土壇場でも冷静に判断しながら、勝負強さを発揮できる選手が何人もいることが今の日本の強さだと思います。
「木村沙織・江畑幸子」は今までの実績で十分見せましたが、今大会ある程度の安定した結果を出し、韓国戦の終盤でも何度も大事なポイントを決めていた「新鍋」、復活した「大友」、更には大事な大一番で23点と活躍した「迫田」。
更には絶対的なセッター「竹下」と守護人「佐野」。すでに勝負強い選手が7人もいる。これがアテネ・北京とは大きく違う、日本女子バレーがシステム自体でチーム力が大きく成長し、世界トップにでも勝てるバレーに変わったことでしょう。
おそらく2009年の全日本終了時に、江畑、迫田、新鍋、大友がオリンピックでメダリストになるとは思わなかったでしょう。
以前の記事 にも紹介しましたが、中田久美さんが久光に入る前にコラムを書いている。非常に納得できる内容のコラムで、
「気づき」
自覚という意味だと思いますが、個人が勝利するために戦術の意味を知らなければ、チームとしては何もならない。個人の自覚があって、初めてチームとして勝利の方程式がシステム化できる。
「自分で考え自分で動く」
練習の意味、勝利するための方程式を理解する(戦術)、そしてこの戦術を実行できる選手でないと全日本では通用しないし、世界でも戦えないということ。
「土壇場で挑める選手」
上記に記載したように、勝負強い選手の育成ですね。今の全日本には勝負強い、土壇場でもしっかりと結果を残せるメンタリティと技術と戦術があること。
狩野・山口選手に対しては、若干メンタルの部分で物足りなさを感じてしまう部分もありましたが、このチームに入ることによって、中国戦や韓国戦で、改めて気づかされただろうと思います。今後の成長につなげてほしいです。
色々と話がそれたこともありましたが、基本は勝利するために、選手を育成するには時間がかかることが非常にわかりますね。少なくとも2年間は必要だと感じました。
これからは、自分が期待するセッターの「宮下」、オーバーセットを得意とするリベロの「座安」、大友・井上を後継する若手のMBの成長が急務です。
日本の大きな課題は、セッターのブロックの低さ。これは新鍋、江畑にも言えるかもしれません。このブロックの低さをどうするのか?おそらく来年からは、2mクラスの若手選手がどんどんでてくるでしょう。いつまでも低身長では限度とハンデがありすぎます。
今のバレー界、185㎝の木村でも低い方。中国にもすでに201㎝の選手がいました。やはり、今後は187㎝の栗原恵、185㎝の狩野舞子、187㎝の岩坂名奈。この2人の日本バレーの戦術的にあった復活が必須と考えます。
何とかジュニア・ユース世代から新しい高身長の選手達が出てくることを望みたいと共に、また次のリオ五輪に感動させてもらえることを期待しながら、徐々に応援したいと思います。



