さみどりの心にならん旅さきの朝の緑雨をゆっくり行く 坪内稔典

 

 手に残る花梨の匂い百年の昔の妻に日がさしている

 

 恐竜のかって歩いた道にいて恋人へ放つ秋の草の矢

 

 湖へ行く約束をしましたね露草の咲く朝の約束

 

ボクの読み方としては

1首目と他の3首は趣が違う。

1首目はすべてが作者に向かっている。

他の3首は自分以外へ関心が移っている。

とくに2,3首目は相手の存在が前提となっている。

ボクは3首目がとくに好きだ。

作者の無邪気な表情が読み取れる。

短歌はこういうものがいいと考えている。

1句目はと言えば

多くが自分に向かうところは俳句的ではないか。

俳句と短歌の違いを語るのではない。

ただ、そんな違いをこの歌集で知ったつもり。

 

写真は昨日の朝、撮ったユキノシタの花。

幼い頃、熱が出ると、祖母が庭のユキノシタの葉を焙って

アタマに貼ってくれたことを思い出す。

ユキノシタの天ぷらが美味いと感じたのは

四十代のちょっといい居酒屋だった。

今日は大雨警報が出ている。

テレワークにした。