俳人坪内稔典氏は歌人でもある。

歌集「豆ごはんまで」は2000年の上梓。

俳句集「ぽぽのあたり」の後の刊行。

ただ、「ひっそり」刊行された観があって

ボクもその数か月後に

「こっそり」手渡しでこれをいただいた。

同じ頃、

俳句的人間は客観的で冷静、自己をも茶化す道化的精神の持主。

短歌的人間は主観的、自己陶酔的、真面目。

坪内稔典氏らしい「説」を書いた

著書「俳句的人間短歌的人間」(岩波書店)が出ている。

 

 桜散る四つ辻にありわが町のさくら銀行さくら蒟蒻  坪内稔典

 

 さくらさくら朝のごはんをふっくらと箸にのせつつまたさくら見る

 

 デパートの食品売り場、直進し昆布曲がれば豆ごはんある

 

 ベランダに火の舌吐く蜥蜴いてむずむずしている私の舌も

 

 子規伝を書かんとしつつパチンコの玉はじきつつ春の日暮れぬ

 

数ページ読んだだけで楽しくなる。

俳句と違って判りやすい。

最初の「さくら銀行」はいまの三井住友銀行。

その発足の仕事をしたので、個人的な懐かしさで選んだ。

最後の「パチンコ」は著者のパチンコ好きがそのまま表れている。

学生時代、河原町今出川の角のパチンコ屋で

一緒に並んでパチンコを打ったことを思い出す。

 

俳句と違って、絵がはっきり見える。

それはそれで書く方の難しさがあるのかも知れない。

とても楽しいので、この歌集を引き続き読んでいくことにする。