老犬をまたいで外へお正月
なめくじのへの三匹が同じ向き
オムレツは北から食べる若葉雨
睡蓮へちょっと寄りましょキスしましょ
恐竜の卵まで行こ秋日和
「ぽぽのあたり」は坪内稔典54歳、
第八句集にあたる。
何かと話題の多い句集である。
タイトルの源で、帯にある
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
この句はいまなおあれこれ評判である。
詳しくは別の機会にするが
この句集、珍しく年代別に構成されている。
冒頭の五句は「一九九四年」の章から
私がとくに気にいっている作品。
「睡蓮」の「キスしましょ」は発表時には驚いた。
「キス」はいいとして「キスしましょ」は
俳句には似つかわしくないと一部にひんしゅくもあった。
「睡蓮」と「キス」の取り合わせが強烈だったのだろう。
新鮮で、とてもさわやかだと私は思う。
「なめくじのへ」とか「オムレツは北から」とか
発想がユニークで「やられた!」という
感想をもったことも記憶にある。
全体として、この句集あたりからだろうか。
概ね口語で書かれ、「や」「かな」などの切れ字も
影をひそめている。
そこらも含め、この句集を深読みしていきたい。