蜂の巣太る四月五月とふしだらに  坪内稔典

 

 饅頭は春の土色甲斐の昼

 

 新緑の闇に灯して万屋は

 

 裏庭の陽をかきまぜて李咲く

 

 男来て四月の雑木ぶったぎる

 

「俳句という遊び」(小林恭二著)という岩波新書があった。

1991年初版で1992年末に六版、その後も版を重ね続け、

1995年には続編「俳句という愉しみ」まで出た。

これほど「売れた」俳句の本を私は知らない。

楽しく、面白く、判りやすく句会を小林恭二氏実況描写し、

俳句作品を丁寧に解説している。

 

「俳句という遊び」は三橋敏雄、安井浩司、高橋睦郎、

坪内稔典、田中裕明、岸本尚毅、小澤實の七人の俳人が

甲斐の国の飯田龍太邸に集まり、八名で

一泊二日の句会を開催。

初日は投句者がそれぞれに兼題を出題の十ラウンド、

二日目はひとり十句の自由雑詠投句。

いまは故人となった俳人もいるが

強者たちだけに、いやこの強者だからこその

濃密な、大句会である。

それをレポートする小林恭二の巧みな筆致も

見もの、読みどころ。

私はいまでもスランプ時にはこの本を引っ張り出し

エネルギーをもらっている。

 

掲出句は「俳句という遊び」に掲載された

坪内稔典の作品の一部。

「俳句という遊び」の句会では二十句を投句していて

その半分の十句が「人麻呂の手紙」に再録されている。

「人麻呂の手紙」ではそれぞれに「読み」が

付いているが、ここではそれを省いた。

 

上は3月16日開催の「ことばカフェ心斎橋」の写真。

劇作家伊地知克介氏のトークをもとに

三十名の参加者がそれぞれに自分の思いを語りあい

熱い時間を過ごした。

場所は芥川賞受賞の玄月さんが運営するバー。

この雰囲気がいいのだ、また。