いまでも何枚かの名刺を持たされている(持っている)。

多い時には8,9枚肩書きの違う名刺を持っていた。

その中でいちばん付き合いの長い名刺がこれ。

ただ名前だけ。

ウラに自宅の住所とメルアドが書かれている。

お気に入りだ。

実はこの名刺、

イラストレーターの黒田征太郎さんの文字で

デザインは先年お亡くなりになった長友啓典さん。

仕事終わりの飲みの席で黒田さんにお願いして

できあがった。

 

沢木耕太郎さんのエッセイの中に

次のような文章があった。

初めて仕事をするとき

日本の代表的グラフィックデザイナー長友啓典さんに

名刺をプレゼントしていただいた。

その名刺はシンプルな中に、気品があり、

その名刺にふさわしい仕事をしなくてはならないと

思わせるものだった。

たしかこんな感じだったと思う。

その文章がずっと記憶の中にあって

黒田さんにそのことをお話ししたら

引き受けてくださったのだ。

 

それから一か月たった頃

印刷された名刺とデータが届いた。

そのデータで何回か増刷をして

いまもこの名刺を大事に使っている。

名刺にふさわしい仕事ができたかどうかは別だが。

 

黒田さんに「何用の名刺?」と問われ

俳句での出会いなどに使うと思いますと

言った気がする。

「俳句の人の名刺はつくったことないなあ」

黒田さんのその時の答え。

なによりこの名刺が黒田さんの答えだろう。

これからも大事に使おうと今回、紹介をした。