In the commuting train

満員電車の中にある唯一の自然、それは「蚊」。どこから来るのか「蚊」は寒い冬の朝でも満員電車の中を涼しい顔で飛び回っている。人が押し潰されている隙間を塗って「蚊」は飛び回っているのだ。

今朝は車両に入ると同時に「蚊」に出くわした。外から大勢の人に押し潰され車両の中央まで辿り着く。その「蚊」も、人々が作り出す空気の流れに乗って一緒に車両の中央へ。手は吊革と鞄を握り締めているのでその「蚊」を叩き潰したくてもできない。

見ているとその「蚊」は前の座席でよく眠っているOLの頬へ静かにとまる。蚊は頬にとまったままじっとしてうる。車両は駅やポイントを通過すると揺れ、その都度そのOLの頭も揺れるが、蚊はそれでもしぶとく動かない。見ていると「蚊」の体色は次第に赤くなり風船が膨らむようにどんどんと太ていく。

OLの血液が体の中へ取り込まれていく様子がよくわかる。2駅、3駅その「蚊」はOLの頬でじっと血液を吸い続けている。起こそうかと思ったし、何度か頬を叩いてその「蚊」を叩き潰したい衝動に駆られたが、じっとその様子を見続けた。

暫くするとその「蚊」は満腹になったのか、重くなった体をよっこらしょと言うように、ヨタヨタと飛び立ち車両の奥へ消えていった。見ると蚊の飛び立った後のOLの頬は「蚊」の体液が注入されたのかぷっくりと膨らんでいる。

見ているだけで全身が痒くなってくる。やがて降車駅に来て降りたが、あの蚊の行方とOLのその後が気になって仕方が無い。あ~見ていただけで、今でもどことなく痒い感じが収まらない。どこか喰われていないかなぁ~
どうすればいい?気持ちよく眠っているOLを起こすのがいいか、OLの頬を思い切り叩いて「蚊」を潰すのがいいのか。