At Rainy Days


水が地面を叩く音窓の外で響いている。虚ろいだ頭は音が遠くの街での出来事のように感じていた。瞼を開きデスクの上のアラームクロックへ目を送ると、朝の5時を少し過ぎたところだった。現実を少し引き寄せると、窓の外で響く水音がやっと雨音だと気付く。

カーテンを通して入る明かりで部屋の様子も見える。見慣れている筈の部屋は始めての場所にように、何故かよそよそしい。壁に吊るしたお気に入りのウォッチ・キャップも他人の持ち物のように見える。重たい頭でベッドを抜け出てカーテンを開くと、重い雲の中に沈んだ夜明けの街が続いている。

雨粒は筋となって地面を叩き大きな音を立てている。そんな憂鬱な風景を眺めていると急に尿意を感じ慌ててトイレへ駆け込んだ。便座の前に立ち用を足していると、前夜の新橋の居酒屋で5杯目の焼酎を注文した事を後悔する。その後、何杯の飲み物を口にしたのか記憶も曖昧になり、おぼつかない足取りで帰ろうと駅へ向かうと豪雨になった。

その豪雨のせいで終電近くまで電車は遅れ、まるで朝のラッシュ時のような混雑が下車駅まで続いた。暑による汗と雨のせいでワイシャツやスーツまで湿らせた。シャワーに入っても体に残ったアルコールのせいで気分は優れない。粘り気のある空気は体にまとわりつき、肺の中にも水飴のような液体で満たされている。やっとの事でブログにペタを打ち、コメの返事を書いてPCの電源を落とした頃は、既に1時をまわっていた。

記憶が蘇ってくると重たい頭の理由が分った。トイレから出て再びベッドの中でぼんやりと天井を眺め、「休んでしまいたい」という思いが頭に浮かぶ。その日のスケジュールを考えた直ぐに外せないミーティングが2つある事に気付き、失望感に体が包まれた。突然、そんな考えを怒るようにアラームクロックの音が鳴り響き、ラジオの電源がオンになった。ラジオの中の元気なパーソナリティの声は、重い頭に無神経に響く。

「きょうはそんな気分じゃないんだよ」パーソナリティにそう言ってみても声は届かず。彼は、一方的に天気や交通情報を読み上げる。「関東地方は、雨模様です……」「そんな事はとっくにわかっている」そう言い返したいがそんな事をして何になるのだろうか。

暫くベッドの上でシーツを被って丸くなっていたが、諦め、シャワーを浴びて、浮腫んだ顔を呪いながら髭をそり服を着る。胃の中へ物が入る気分じゃないから支度が整うと直ぐに玄関の扉を開き、傘を持って雨の通りへでた。灰色の空から落ちる雨は起きた時よりは少し弱くなっていた。

駅の階段を駆け上がり、いつもの満員電車へ滑り込む。扉のガラス越しにぼんやりと窓の外の景色に目を送ると、黒い雲がまるで意志を持った生き物のように空で動き回っている。黒い鱗は大きな河や建物を上を形を変えグルグルと動き回っていた。

次の駅に停まると白いブラウスを着た婦人が乗り込んできた。直ぐ横に立つ婦人の頭とと上半身だけが見える。白い薄いタイトなブラウスから透けて見える黒いキャソール、黒く長く艶やかな髪に混じる幾つかの白い物。胸を張った婦人の瞳はまっすぐに外を見つめている。

幾つかの駅を過ぎ婦人は開いた扉へ向かう、「未だ降りないで」心のなかでそう願った。
It Should be revised. Thanks!