少年は暗い部屋の中で間が覚め、自分が生きている事を確認するように寝たまま大きく息をした。小さな部屋についた小さな窓から赤い光が差し込んでいた。あいまいな赤い光の筋は頭の横にある花瓶まで長く伸び、ピンク色の大きな花弁を鈍く照らしているている。背中を押すような堅い感触は無く柔らかい感じの寝心地だった。

力が無く体は動かない。重い疲労感の塊が体全体を包み部屋の風景は再び色彩を失って滲み始め、そして目の前が闇に包まれた。少年が再び目を開いた時、今度は窓から青い光が花瓶へ伸び同じようにピンク色の花弁を照らしていた。赤と青の光を当ててもピンク色に発色する花弁を少年は初めて見た。

少年の知っている花は皆、赤い光が当れば赤くなり青い光が当れば青くなった。物の色は絶対的に空から照らされる光の色彩に左右されて決まっていた。赤の昼間は赤い大地を作り、青の昼間は青い大地を作る。そうでない草や白い雲のような常に絶対的な色彩を持った物質は自ら発色する機能を持っていた。

もし、この星に夜がやってきたとしても、自分で発色する雲は空で白く輝いて見えるはずだ。しかしその花弁は自ら発色しているようにも見えない。窓から入り込む光を反射しているだけなのだ。最初に起きた時の記憶では花弁はピンク色だった。しかし最初に目覚めたのは、とても僅かな間で記憶も確かではない夢でも見のかもしれないそう思った。

そんな花の色の事よりも、考えなければいけないもっと重要な事がある。所在だ。そこが何処なのかも分らなければ、どうやって辿り着いたのかも記憶が無い。気を失う直前に見た最後の景色が少年の頭の中へ現れ、草原の壁の上でで意識を失った事を思いした。壁から落ちて、砂漠の蟻や毒蜘蛛の餌食になり死ななかったのかが不思議でならなかった。さらに少年の居る場所が何処なのか知りたかった。

花の近くには頭蓋骨のアムレットがあり、青くぼんやりと輝いていた。初めて目にする事の多さに戸惑った。光る頭蓋骨も観るのは初めてだった。幾つもの頭蓋骨を磨き続けてきたが、頭蓋骨自身が発光するのを観た事はなかった。随分前に、骨屋の主人が奥地には光る頭蓋骨があると言っていたが、直ぐ横に見える頭蓋骨がそれだと思った。何故頭蓋事が光るのかとても不思議だった。

最初に目覚めた時の疲労感は少しも無い。体は何とか動きそうだ。不思議だったが体の中に力は出発した時と同程度、体にみなぎっている。これが奥地の力と呼ばれるものなのだろうか。上半身だけを起こして座る。横になって観ていた部屋の様子は、現実感を帯び部屋としての実感を持つようになる。

部屋全体は、少年の土でできた家の何倍も立派だったが、殺風景で何もない。部屋には小さなベッドと木製の台に花の入った花瓶、そして同じ台に頭蓋骨のアムレットが載せられていた。青い光の差し込む部屋全体は、光を乱反射して薄い青色の壁でできているように見える。丁度窓の反対の壁には扉があり、壁と同じ青い色をしている。

ベッドから足だけを降ろしベッドへ座るような格好になる。頼まれた荷物が気になり床を見回すと、少年のバッグと一緒にベッドの脚の直ぐ脇に木箱は置いてあった。ベッドから降り木箱まで行き、異常がないか箱全体を細かく調べた。異常も開かれた様子もなく預かった時と同じ状態だったを観ると、少年は胸を撫で下ろした。

それから窓際まで行き外を見た。窓の外には田舎の村の風景が広がっている。小高い丘を中心として丘の中腹に建物が点在していた。丘の頂上にはかつて目にした事も無い程の大きな建物が聳えている。自分のいる建物は丘の麓にあるようだ。街の中を伸びる通りには、壁で見た赤い動物が数頭、散歩のようにのんびりと丘へ向かって歩いていた。
☆I should have run. Run 0Km Swim 0Km Walk 0Km Two pint of beers!