ブログネタ:学校(会社)をサボったときの思い出 参加中高校時代の友達があの図書館を辞めて何年になるのだろう。彼女は短大を卒業して小さな丘の鬱蒼とした森の中に建つ図書館に司書として就職した。高校時代、隣のクラスだったし大人しいタイプだったから、一日中運動に明ける男子高校生と接点は全く無かった。
一度だけ彼女との接点があるとすれば、3年生の1学期に修学旅行委員を一緒に務めたという程度だ。だからその図書館で彼女が声をかけてきた時はとても驚いた。大学の3年生になった夏休みの暑い日、相模原にある大学の医学部に通っていたガールフレンドの有里を迎えに車を走らせて図書館へ行った時の出来事だ。
森の中にある白い石造の図書館は、蝉の鳴き声に包まれ、石造りの厚い壁は音を反射して街へ響かせていた。とても暑い夏の午後で、沢山の鳴きつかれた蝉達は、樹の枝から地面へ落ちそして石のように硬くなっていた。図書館の駐車場へ車を入れると、飛び石のような日陰を選んで図書館の位置口を目指した。
有里は一日中運動に明け暮れる男子大学生とは違ってとても真面目だったから、試験が迫らなくても欠かさず図書館で机に向かっていた。夏期休暇に入って友達が旅行や海へ出かけても、休館日以外は、図書館へ通ってレポートをまとめたり難しい医学書を写したりしていた。
面白半分に、勉強をしている席の横へ行ってノートを見せてもらったが、埋められた符号を一度も解読する事はできなかった。有里はノートを示して符号の意味を丁寧に説明してくれたが、結局
「もういいや」
と諦めてしまっうと
「あなたは、もう一歩踏み出すのが足りないのよね」
と言って笑った。学年でも一、二を争う優秀な成績の有里は、将来脳外科医になるのが希望だった。一日中スポーツに明け暮れていた、二流大学のバカな男子大学生とつきあっている有里がとても不思議に思えてならなかった。整った顔立ちとプロポーション、有里さえOKをださえば着いてくる男子大学生など沢山いた。
勉強をしている時、以外の有里はごく普通の女子大生だった。時折見せるその表情には幼さも垣間見れる。脳外科医を目指す医学生にはとても見えない。大学のキャンパスで眼鏡に白衣姿の有里を観た時は、別人かと思ったくらいだ。
有里の両親は医師で中規模の病院を経営していたから経済的にも不自由はしていなかった。有里の両親とも何度かあったが、気さくで感じのいい両親だった。彼らが有里との交際をどう思っていたかわからないが、とにかく二流大学生でもきちんと接してくれた。
月に一度は、取ったばかりの免許で両親の持っていた葉山に別荘で一日を過ごした。葉山を三浦半島へ少し下った先にある別荘で二人きりでウィークディの一日を過ごした。両親は仕事で忙しかったから、学校の無い日はそこへ行って二人だけの時間を持った。
元町にユニオンや明治屋で二日分食料を買い込み、鎌倉街道を海へ向かって車を走らせた。有里は別荘に着くと、女性としての理由が無い限り、いつも服を脱ぎ捨で裸になった。恥ずかしくて躊躇っていると、笑って目を見つめたままシャツをまくりバックルを外した。
家の中は二人きりのなのは解っていたが、裸で歩き回るのには抵抗があった。大学生の有里の体は大人の成熟した体型だった。スポーツ好きとは言っても骨格や筋肉はまだ大人になりきれていない自分の体と、有里の成熟した大人の体が対比されるのは嫌だった。それにもまして裸の由里を前にして反応する自身が恥ずかしかった。
服を脱いでも有里は堂々としていたから、美しい絵画の中の裸婦や芸術性の高いポートレートのように少しの厭らしさも感じない。それよりも、未成熟でゴツゴツとした自分の体型の方が、余程、淫猥で脂ぎった雄の動物のような気がしてならなかった。
ベッドの中の有里は、部屋で洋服を脱ぎ捨てる大胆さとは逆に、風と波の消えた静かな海を思わせた。ゆっくりと時間をかけて喜びを感じ、大きな盛り上がりも見せないまま、ゆっくりと消えていく余韻を楽しんだ。静かな部屋に有里の吐息と波の音そして蝉の鳴き声が交じり合う、そんな幻想的で甘い時間は夢のようだった。
さいえない二流の大学生活が一変してカラフルな色彩に変わった。医大生と交際する友達は、性的な偏執性を面白く語ってくれたが、有里に関して言えば、ごく普通の二十歳を過ぎたばかりの少女と変わらない。偏執的な儀式もなければ、医学的な実験もない。
ただ普通の少女の顔と医大生として顔の切り替えが、驚くほどはっきりとしていて、どちらが本当の顔なのか解らないという事だった。そんな有里に当惑しながも、二人の時間を楽しんでいた。
その日、図書館へ行くといつもの場所に有里の姿が見えなかった。有里の座る場所は広い図書室の奥の壁際と決まっていて、行けば直ぐに見つけられた。洗面所へ言っているのでは無いかと思い。机の所まで行ったが荷物は見当たらなかった。
見ると有里の居ない机が心を失ったブリキのロボットのように寂しそうに座ってくれる主を求めていた。……惹きつけられるようにその席へ座る。広い図書室には、森にいる蝉建の泣き声が静かに響いていた。有里を感じたくて堅い木の机に掌を置いてみたが何も伝わっては来ない。
冷たい机に頬を載せたがやはり何も感じなかった。机は有里の魂を留めてくれては居なかった。諦めて椅子を離れようとした時、急に肩を叩かれた。振り返ると見覚えのある顔があった。彼女は手招きをして出口を指差してから、図書室を出て入り口のホールの奥にある談話室へ案内してくれた。
「久しぶり、私の事覚えてる」
高く抜けるような声、それが一声だった。
「うん、隣のクラスの田中さんだったよね、就学旅行委員だった……」
どうして彼女の名前が考える事もなくすんなりと出来てきたのが不思議だった。フレグランスなのか、数十センチ程離れた、彼女からは甘酸っぱい香りを感じた。
「えぇ、良く覚えてたわね、忘れてるかと思ったわ、私、今年の春からここで働き始めたのよ。さっきから机に手を当てたり、頭を机に押しつけたり変な事をやっている人が居たから、ちょっと見に行ったら、貴方だった」
そう言って笑顔を作った。久しぶりに会う彼女は、化粧をしているせいなのか、少し痩せたせいなのか、高校時代よりも大人びた美しさが漂っていた。それに、話し方も積極的で明るくなり内面まで変わったのかと感じた。高校を卒業して2年半でこんなにも変わるものなのか
「もう、今日の仕事は終わりなの、時間があるならお茶でも飲みに行かない」
「あぁ、予定がなくなったから時間はある、いいよ」
「動物園の中に洒落た喫茶店があるのよ、歩いてみない」
「暑くない」
「いいじゃない、木陰を歩けば大丈夫よ、少しお話がしたいわ」
そう言って、彼女は荷物を取って戻ってくると、足早に図書館を出た。
To be Continued.
しまった、ブログネタという事を忘れて書き続けてしまった(笑)