ブログネタ:夏休みの自由研究、何やった? 参加中夏の初めになると思い出す夏休みの自由研究。最後の夏の自由研修は長後二年前。三年前は近所の神社仏閣巡りだった。家の徒歩圏には50以上の神社仏閣があって自転車を使えば一日で全て巡る事ができる。猛暑の中、汗をかいて写真を撮って回ったのが三年年前の夏休み。
50もある神社を自転車で回った。強制でもなんでもない……ただ地域の事を知りたかっただけだ。調べてみて改めて地域の事を良く知る事ができたし、地域に愛着を持つ事もできた。単に歴史や背景を知るといった知識を越えた副次的な効果もあった。
そんな事を経験したから、次の年も自由研究に望もうと思った。丁度二年前の話だ……その年の冬と春の間、丁度、鴨の言葉をマスターした。毎日、走って河原へ通って鴨の伯父さんから、鴨の言葉を教わった。甲斐があって桜の作頃には、河原の鴨達とすっかり仲良しになれた。
河原のランニング・ロードを横切る鴨の集団とも話ができた。彼らは横切る時に小さな声で「失礼」と唱えている。ある朝、道を横切る鴨に聞いてみた。
「貴方達はどうして危険な道を横切るのですか」
先頭を歩いていたリーダー的な鴨君は、不思議そうな顔をして
「おや、変わった人間だな」
と言った。
「君はどうして鴨の言葉を話せるんだい」
と話しかけてきたので、すぐさま鴨伯父さんの名前を出した。すると鴨君は納得した様子を見せ
「あぁ、鴨伯父さんだね。うん伯父さんに教われば間違い無くマスターできる」
そう言って質問を置いて行ってしまおうとした。横切る理由をどうしても知りたかったから、慌てて後追いかけ、もう一度リーダーに同じ事を聞いてみた。すると、リーダーは少し困った顔をして
「あっちにとても良い餌場があるのさ、誰にも邪魔されずゆっくりと餌が取れる場所が」
そう言ってクチバシでその先を指した。そのクチバシ先には青鷺のコロニーがあり、そこは、人間の社会とは隔離された「お狩り場」と呼ばれるがあった。確かにお狩り場ならゆっくりと食事が出来るし鬱陶しい人間は入って来ない。
そう言い残すと、リーダーは皆を引き連れてお狩場の方へ消えていった。そうやって春までには鴨とまともに話ができるようになり、河原ではちょっとばかり顔が売れた。
さて、生物との話に味をしめたその夏の事、自由研究のテーマを「別の生物の言葉をマスターする事」と決めた。夏の自由課題だから、夏の生物を題材にした方がいいに決まっている。公園の高い樹の幹によりかかって考えていると、土の中から小さな声が聞こえた。それは脱皮を間近に控えた蝉の幼虫だった。
幼虫は、土の中から何かを語りかけてきた。一生懸命言葉を聞き取りようやく理解できるようになるまで3日間通い詰めた。その明け方、蝉は附加し土の中を這い出て一生懸命に木を登り脱皮して立派な成虫になって飛び立った。
片言で聞き取れるようになった蝉の言葉、何とかコミュニケーションを取ろうと話しかけてみた。するとその朝公園で羽化した蝉君が、
「一週間あれば言葉を教えてあげるよと」
と蝉語の講師を快く受けてくれた。こうやって運転免許の合宿のように、蝉語の7日間限定の短期研修が始まった。蝉君は、帰り際にオシッコを引掛けて帰っていく事以外はとても良い奴だった。オシッコを引掛けられたTシャツはとても臭くなったが、蝉君のゼミには代えられない。洗濯すればいいのだ。
「試験にでる蝉単語」という本を使って熱心に記憶法を教えてくれたし。ゼミナール形式の教室も開催してくれた。おかげで6日目には70%程度の言葉を理解できるようになっていた。クマゼミ、ミンミンゼミと言った方言はあったが、大まかには話す内容を理解できるようになった。
7日目は地域特性を含めた包括的な実習だった。実習の成果があって理解力は90%まであがった。7日の終わり間際に蝉君は、目を見つめて
「これで実習はほぼ終わりだ、明日からは別の先生に付くか自習してくれないか、実際君は人間にしては良くやったよ」
蝉君はそう言って、いつもようにオシッコを引掛けて教室の公園を後した。残りの10%も教えて欲しかった。お礼も満足にしていなかったから次に会った時にお礼をしようと、甘い蜜とスイカを買いにスーパーへ走った。
翌朝、いつもっように公園へ行ってみたすると蝉君は、まるで小石のように身を堅くして公園の芝の上に落ちていた。彼は自分の寿命を知っていた。蝉君をそっと拾って穴を掘り土をかけてあげた。蝉語のプロジェクトはそれで終わった。
あの蝉君の事を思い出すと、その後も、次の年も、再び蝉語の自由研究を始める気ににはならなかった。しかし今年の夏になって蝉語を話せる素晴らしい女性に出会った。素晴らしい事だ、どうも彼女は窓越しに
蝉君と話せるようだ。詳しい事はわからないが、蝉君と見つめあって蝉語をマスターしたようだ。
だから今年の夏の自由研究は、彼女から残りの10%を教えてもらおうと思う。今年の蝉君とちゃんと語り合えるようになりたいと思う。二年前の夏、死んでいった蝉君の気持ちを無駄にしないためにも……それが夏の自由研究のテーマだ。