それをどのように受け取れば良いのか当惑した。「もう帰ってこなくていい」そんな意味で指をさしているのか、不安と詫びる気持ちが入り混じり困惑した。頭を深く下げ部屋をでると店先にある作業場へ行った。前の日に急いで帰ったために、幾つかの道具がそのままになっていた。
散らかったている物を整頓するために作業用の踏み台の板を開くと見慣れない革の袋があった、手にとって中を見ると幾らかのお金が入っていた。働いた期間の賃金なのか、数えるとずいぶん余計に入っている。骨屋の心遣いなのだろうか。少年はもう一度入り口を見て深く頭を下げた。
空を少し上がった位置にある赤い太陽は、お辞儀をする少年を背中を照らしている。少年の形をした長い影が木製の階段を登り入り口まで長く延びていた。男はいつまでもお辞儀をしている少年の背中を軽く叩くき
「さぁ、行こう」
と出発を促した。少年は腰を伸ばし男の顔を覗くと、手早く踏み台や道具を骨屋の地下室へ片付け男のの元へ戻り、持ってきた荷物を背負い一緒に街の北へ向かって歩き出した。街は東西南北の4つのブロックに別れていた。少年の住んでいる東のブロック、そこから北のブロックまでは徒歩で1日半程必要だった。
乗り物の無い街の移動は足だけ頼りだった。赤の民も青の民もどこまでも歩いて目的地を目指す。健脚でなければ旅はままならない。男の後と並んでどれ程歩いたのだろうか。半日たった所で二人は東の街の領で宿を取りそれから北の街との境界を越えた。
北の街の領に入ってから、幾度か茶屋に立ち寄りジークに肉の燻製や甘味のある白く丸い形をしたサロという名の食べ物を食べた。東の街でも同じ食べ物があるが違う名前だ。少年はその甘みがとても気に入っていた。残った幾つかのサロを包んでもらうとショルダー・バッグの中にしまった。そして帰る時には妹のために買って帰ろうと誓った。
赤の太陽は、西の地平線へ傾き東の空が青く色付き始め少年は再び眠気を感じたようだった。その時間がやってきたのだ。「赤の民は青の昼で眠り、青の民は赤の昼で眠る」それがこの街に住むルールだった。そのルールを守らなくいいのは旅人と猟民で、街に住めば互いの生活を侵害してはいけない。
北の町の中心までもう直ぐだった。北の街は東より栄え人通りが多い、少年は眠さをこらえて街の様子を伺った。男は煉瓦作りの家の扉を開け少年を中へ導いた。誰かの家のようだったが少年は疲れて案内されたベッドへ倒れこみそのまま深い眠りに落ちた。