少年はその様子を観察するように興味深く見守った。
「妹に会わせてもらえないか」
瞼を開くと男は、青の民のアクセントで男は言った。男の突然の言葉にビクリとしたが
「わかりました」
と予想していたかのように、落ち着いた声で答えた。それから骨屋に仕事を休む事を告げ骨屋の奥へ行く、机で書き物をしていた骨屋は、男にチラリと目を送ると、帰宅を許し直ぐに書き物の続きに戻った。
忙しいさなか、骨屋が簡単に許してくれた事は不思議だったが、仕事ぶりが認められたのだと思い急いで青の民を連れ立って店を出た。男はアムレットを脇に抱え黙ったまま、石畳の道を少年の後に続いた。
土を塗り固めた少年とその妹の住む家へ入ると、青の民は少女のベッドへ案内された。そして少女の眠るベッドの脇に持っていたジークの灰色の革を敷いて、その上にアムレットを置いた。
少年が丸椅子を男へ渡すと、ベッドの脇に置き腰を降ろした。
そして、腰に下げた水筒のような容器から、不思議な臭いがする液体を自分の手へかけた。男は慣れた手つきで少女の病状を見る。少年は、そのように人の身体を診察するのを始めて観た。その様子真剣に見守った。
瞼を開き、口の奥をのぞき、脈を測り、長いジークの骨を使って肺や心臓の音に耳を澄ます。そんな一連の作業が流れるように行われた。男は少女をくまなく診察すると、先ほどを同じように瞼を閉じて何か考えるように瞑想にはいった。何かを聞きたい衝動に駆られたが諦めて、男の瞑想が解けるのを待った。
それ程長い時間ではなかった。男は瞼を開くと、革の上に載っているアムレットを取り上げ、少女の前で祈りをあげた。その言葉は赤の民の物でもなく青の民の物でもない。不思議なリズムを持った不思議な言葉だった。祈りの言葉を聞いているうちに少年は気持ちが良くなり、そんな力を持った言葉なのだと実感した。
祈りが終わると、皮袋から取り出した。小さな粒を少女の口へ運び唇を開け喉の奥へ入れた。そして少年に向き合うと、少年の目の奥を覗き込みながらゆっくりとした太く説得力のある口調で話し出した。
「きみに頼みたい事がある。ある物を国境まで運んで欲しい。その間私がこの少女の面倒をみよう。もし、ちゃんとそれを国境まで運んでくれたらそれなりの礼をするつもりだ。どうかね」
少年は病気の妹を残していく事が心配だった。しかし、骨研の仕事は順調だったが妹と二人で暮らしていくには十分な金額とは言えない。増して妹は重い病の床に臥していた。病気をなんとしても治すためにお金が必要だと思った。呪術師の予言した事が現実になった今、言葉に従わない理由は無かった。