その朝も、いつものようにトラックの荷台から降ろしたジークの頭蓋骨を地下室の棚へ並べ終わると店先でその日に仕上げる頭蓋骨を磨き始めた。慣れた仕事とはいえ、決して仕事の手は抜かないのが少年のやり方だ。仕上げられる数は決して多くなかったが出来上がりには少しの失敗は無かった。
目の前に並ぶ頭蓋骨に集中して手を動かしている間は、周囲の事は目に入らない。だから少年が磨き上げたアムレットを取り上げ、真剣に眺める人がそこに居ても少年は気づかなかった。工程の最後の作業を終えて頭蓋骨の仕上がりを確認していると作業場のすぐ横に、日に焼けた脚が並んで居る事に気がついた。
視線を足元から順に上げると、ジークの革でできたバッグを担いだ人が、少年の作ったアムレットを掲げ、呪術師がやっていたように空を仰いでいた。少年からは赤い太陽が眩しく姿をはっきりと確認はできなかったが、脚の作りや様子から男性であるらしいと思われた。
手で太陽をかざしシルエットに目をこらす。瞳孔が絞られて明るさに慣れると、顔立ちがはっきりとしてくる。初めて見る顔だった。そう思ったところで少年の背筋に電気が走った。男の肌は明らかに赤の民より黒く瞬時に彼は青の民だとわかった。鼓動が速くなり全身あ汗ばむのを感じる。
水の中の頭蓋骨を取り台の上に起き、両手の出し水を急いで拭き取った。そこまですると、それから何をしていいのか、男に何を話しかけて良いのか分からなかった。少年が男へ何か口を開こうとするより少しだけ先に男の方が語りかけた。
「見事のアムレットだ。これはここで買えるのかね」
「いえ、それは売り物ではありません。自分のために作った物なのでお譲りするわけにはいかないのです」
「それは、残念だ。金は出すから譲ってもらう訳にはいかないだろうか」
「それは……」
少年は男に、病気の妹の事と、その妹の病気を治すためにアムレットを作った経緯を説明し、呪術師に言われたように青の民の旅人を待っていたのだと話した。男はアムレットを脇にかかえ少年の目をまっすぐに見て話に耳を傾けた。そして最後に自分が青の民の旅人である事を少年へ告げた。それから瞼を閉じ腕を組み考える格好をした。