ブログネタ:あなたの周りの「未解決事件」教えて! 参加中

奴の名前はコテツ、半年前に庭の石灯籠の横で大きな体を横たえていた。白地に薄い灰色の斑模様、ふさふさの髪少し切れ長の目からすると、どうも外国からやって来たようだ。

色付いた葉が落ちて地面をカラフルな色に埋める頃、奴は石灯籠の横にぐったりと寝ていた。それがコテツの出会いだ。奴の髪は外見上ふさふさとしていたが、疲れ果てた顔つきから髪の下に潜んでいる身体は、細く痩せていると推察できた。

奴は力尽きたかのように、冬の空気で冷たくなった庭の石灯籠の土台に身を寄せ、身動きもせず横たわっていた。初めて見る鋭い顔つきに最初は怖くて近づけなかったが、奴がじっと動かない事を知って、円の半径を絞るように少しづつ近づいた。

どんなに近づいても奴は、境内にある狛犬のように微動だともしない。切れ長の目がこちらの動きに併せ、時々ギョロリと動くだけだった。そんな状態の奴を観察するように、冷たくなってきた外気の中で石灯籠の周りをグルグルと歩き回った。

どんなに地被いても奴は動かなかった。試しに鳴き声を立ててみたがそれでもピクリとも動かない。そんな姿に恐怖心も薄れてきた。もう少し近づいて名前を聞いてみると、小さく細い声で「コテツ」と言って、そのまま眠ったかのように口と目を閉じていしまった。

酷く気になって、石灯籠の周囲を歩き回って鳴き声をあげていると、炬燵の中で昼寝をしていたご主人様は、障子を通して鳴き声を聞聞きつけたのか、木製のサンダルをつっかけて庭へ様子を見に降りてきた。石灯籠の下の「コテツ」を見つけると、そっと優しくだきあげて家の中へ連れていった。

ご主人様について家へ上がると、奴はご主人様の腕に抱かれ先の尖った水差しのような物で、ミルクを飲まされていた。飲む力は無くとても弱々しいかったが、ご主人様は、根気良く奴にミルクを与えた。どれ位の時間が流れたのかわからない。ご主人様の周囲をグルグルと回りながらその様子を見た。

奴がミルクを飲み込んでいる間、ご主人様は手を伸ばして頭を撫でてくれた。ミルクが終わると奴は蓋の無く毛布の敷かれた大きなダンボール箱の中へ寝かされた。時々ダンボール箱の中を覗くと身動きもせず、目を閉じた姿が見えた。

そんな日が続き、そして1週間が過ぎると奴はやっと起き上がった。ふさふさした長い髪の毛の中にある細い身体を起こし、一生懸命に立ち上がろうとしていた。目には光が戻り元気になったように見えた。恐る恐る近づき話かけてみたが奴は何も話そうとはしなかった。

「コテツ」そう話しかけてみた。すると鋭い目の奥に優しい光を作りこちらを見つめた。日を追う毎に奴は元気になりた。冬の一番寒い日を迎える頃、奴はやっと部屋の中を歩きまわれるようになった。するといつもの食事が置かれる場所に二つの皿が並ぶようになった。

一つは自分、そしてもう一つは奴の分だった。元気になった奴は、それまでのミルクではなく一緒に皿から同じ物を食べるようになった。ご主人様の置いた皿に頭を突っ込み、ポリポリと口をうごかし水を飲んだ。ドキドキ奴はこちらを確かめるように見てはニヤリと笑った。もちろん白い石のトイレだってちゃんと奴の分が用意されていた。

こうやって長い冬は「コテツ」と一緒に過ごす日々が過ぎた。寒い雪が降る日も奴と遊んでいれば寒くなかった。奴の爪を研ぐ姿は凄くクールだ。そんな奴の姿や仕草をカッコイイと思ったりもした。一緒にダンボールの中で寝れば冬の寒さも感じなかった。

そんな風に冬は瞬く間に過ぎ、そして春がやって来た、奴は花の上を飛ぶ蝶を追いかけるのが好きだった。冬に増えた体重も苦にする事なく、白い蝶を追いかけて高いジャンプを繰り返す。好奇心の塊のようだった。

でも、ある朝コテツが突然のように告げた。「そろそろ、帰らなきゃ」。奴にどんな過去があるのか知らなかったけど変える場所があるのは驚いた。そんな事は聞いてなかったし、奴は一度も話さなかった。だけどきっぱりとそう言いきった目には決意のような物を強く感じた。

次の朝早く目を覚ますと、ダンボールの中に奴の姿は無かった。そして一月も過ぎる頃になると皿は去年と同じよう1枚に戻り、毛布も1分の毛布だけになった。部屋には奴の使っていた大きなダンボール箱がポツリと置かれていた。

コテツは黙って何処へ行ってしまったのだろう、きっと元のご主人様の家へ戻ったに違いない。きっと夏が終わった頃、何食わぬ顔をしてひょっこりと顔を出す……コテツの無邪気な顔を思い出すとそんな気がしてならなかった。
■想定はラグトールって感じですかね。
■推敲する気力が無いのでワンショットで行きます……すみません。Run 0Km
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