ブログネタ:一人焼き肉、一人カラオケ、やってみたい? やったことある? 参加中

頭のすぐ上には、天井からアルミで出来た銀色で円筒形をした大きなエアダクトが長く腕を伸ばしていた。案内された席にビール・ジョッキと突き出しが勢い良く並べられる。約束の時間は過ぎていたが待ち合わせした相手はまだ着いていない。

ジョッキから一口だけ流しこみ喉の渇きを癒す。ジーンズのパック・ポケットへ指を入れて携帯を引っ張り出す。二つに畳まれた携帯のサブウィンドウには時間が示されている。暗い店内ではその灯りがいっそう特に映えて見える。

約束の時間は10分も過ぎていたが、待ち合わせた相手は誰一人として姿を見せない。そのままではビールの量が進むだけで、皆が揃ってから肝心の肉が食べられなくなってしまう。空腹に負けてビニールの安っぽい二つ折りのメニューを広げた。10分も過ぎているのだ先に食べていても文句は言わせない。

キムチやナムルといった漬物や野菜と調べた。皆が揃ったら追加すればいいんだ。そう思って胃の中へ収められそうな肉をメニューの中から選んだ。店員は厨房と客席の間で丸いトレイを持ってぼんやりと立っている。その時間、テーブルには空席が目だっている。店員に向かってメニューを上げて注文を知らせる。

目が会うと黒いエプロンのポケットに手を入れ何かを探す仕草をする。彼らは探す物が無くても必ずそんな仕草をする。決まった動作を終えると真直ぐテーブルへ向かってきた。横まで来ると再度ポケットへ手を入れ、封筒大の四角く薄い器械を取り出して「ご注文ですね」と確かめるように尋ねる。

メニューを観ながら予め用意していた注文を伝えると、手の中にある器械へ細長い棒で器械の表面を操作するように細かく叩いた。操作が終わると無くなりかけたジョッキを見て「お飲み物はいかがいたしますか」と加え背筋を伸ばしてこちらに目を移した。

心の中では「飲みすぎると肉が食べられない」そう思たが、アルコールが手元に無いのも寂しいかった。仕方なく促されるようにビール追加した。店員は、一度ポケットへ入れた棒を取り出すと器械をカタカタと操作して「他にご注文はございませんか」囁くような声で尋ねる。返事が無いのを確認するように、静かに厨房の方へ下がっていった。

約束の時間からは既に15分が経過している。我慢が出来ず携帯を開いてメールを立ち上げた。来るはずの仲間のメールを選び返信ボタンを押す。「待ってるけど、何処にいるんだ」そんな簡単なメッセージ入力しを送信ボタンを押す。キャラクターが画面の中で回転し送信完了を知らせる。

店員は、ジョッキを持って戻りテーブルの上に置き、テーブルの中央の金網を外すと急いで厨房へ下がる。テーブルの中央には落とし穴のような大きな穴がポッカリと口を広げている。店員は大きく重そうな火鉢を厨房から持ち帰り額に汗を浮かべながら穴の中へ丁寧に納めた。

携帯を開いて着信を確認したが返信は無い。店員は点火を確認してから、先ほど外した網をテーブルの枠へ戻して、仕事の結果に満足げに厨房へ下がっていった。開いた携帯で別友達を探し数分前と同じメッセージを送る。網の下では黒い炭が真っ赤に変身しようとしていた。小さな炎は周りへ触手を伸ばし周囲の炭を巻き込んで、パチパチと音を立てた。

ジョッキに手をやろうとした時、別の店員が来て不機嫌そうに肉が盛り付けられた皿を乱暴にテーブルの端へ置く。肉を目の前にして待てる程友達思いじゃない。テーブルの脇に並んでいる付け皿と割り箸を取り、タレを付け皿へ注いで、割り箸をパチンと割った。

肉の入った白いシンプルな皿を左手で持ち上げ、割り箸で1、2切れ肉を纏めて摘み網の上に置く。肉に絡んだタレが網を越えて真っ赤な炭の上に落ちて「ジュワ」というタレの焼ける音がする。それと同時にタレの焼けた香りが鼻へ届き、脳へ強烈な食欲の刺激を送る。

割り箸を置いたのと同時に携帯が細かく震えて2通のメール着信を知らせる。急いで携帯を開けメールを読んだ。「待っているって……どこにいるんだ」、メールを閉じ2通目を読む。もう一方のメールも全く同じような内容だった。「何処って、焼肉屋だよ」直ぐに返事を変す、間を置かずに返信が来る。

「お前、焼肉は明日だけど……」二つの返信には殆ど同じような言葉が書いてあった。集合連絡のメールを見直すと、確かに翌日の日付が書いてあった。大きくため息をつき、手に持っていたジョッキを飲み干して、焼きあがった肉をじっくりと味わい。その晩一人で焼肉を楽しんだ。
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