ブログネタ:最近されたどうでもいい話 参加中「ねぇ、ちゃんと話を聞いてる……」
そう何度言われた事か、数えろと言われても多分数えられないだろう。一人で生活をしている時には想像も出来ない事だった。そして人の話を聞く事がこれ程難しく時には苦しいという事を始めて知ったのはその時だったんかもしれない。どんな内容の事でも言葉がうまく入って来ない。
テレビを観ている間でもガールフレンドは話しかけてくる。その日に会社で起きた出来事を話している様だった。テレビの中はストーリーがきちんと構成されたドラマだ。魅力的な女性が犯罪を犯し、探偵役の年老いた俳優が少しずつ謎を解き明かし、イケメンの助演俳優は年老いた老俳優が演ずる探偵を楽しく助けている。
犯人の魅力的な女性は、不敵にも老俳優が演じる名探偵に挑戦を挑むかのように、次々に犯罪を犯していき、犯行現場には必ず何らかのメッセージを残していく……そんなストーリー展開だった。クライマックスに向かってストーリーは盛り上がる。ちょっとした場面、場面に女性のアリバイを崩すヒントが隠されていた。巧妙に仕掛けられたトリックと崩すためおヒントだ。
夕食の後片付けを終えたガールフレンドがカウチの空いている場所へ座る。楽しみにしていたテレビドラマを観る為に、ガールフレンドが買ってきた材料を利用して早くから料理を開始し、ドラマをゆっくりと観られる時間には料理を終えていた。そしてとても満足のいく夕食を二人分作ったのだ。ガールフレンドは
「美味しかったわ、後片付けは私にやらせて」
そう言って流しに立った。テキパキと片付け始めるとあっという間に片付け終わり、エプロンを外すとカウチに座って耳元で話し出す。
「全く、あの八百屋さんのおじさん嫌になっちゃうわ、安い方のジャガイモを袋に詰めて、高い方のジャガイモの値段を取ろうとするの、たまたま横にいた奥さんが気づいてくれたから余計なお金を支払わずに済んだけど、間違っていたら20円も余計にお金を取られる所だった」
テレビの中では犯人の女が最後の犯罪を犯す準備を始めた。老俳優は、既に埋まったしまったピースを頭の中で組み立て、犯罪のシナリオを構成し始めたという名探偵の演技をしている。名探偵はきっとこれまでの数分間の番組の間に何か貴重な真実の鍵を向けたのだろう。そんな風に推察できるシーンだ。次の瞬間ガールフレンドが続ける。
「そうそう、燃料の値段が暮れから上がったでしょ。全くスーパーの物価全体も少し上がったみたいなの」
なんか所帯じみた話の展開になった。テレビのストーリーを追いかけながら話を聞く。名探偵は被害者の書斎の書簡にある本を空けその一行を、助演のアシスタントへ言って聞かせるが、アシスタントはその謎が解けていない様子だ。ガールフレンドは続ける
「ほら、友達の和美の家はオイル・ヒーター使っているの、先月の電気代は2万円を越えたって。彼女言っていたわ。全く原油価格の高騰がそんなに響いているなんて考えられない。あっ、和美と言えばボーイフレンドの優くん覚えてる、先月和美誕生日だったのに、彼、何も和美にあげなかったらしいのよ」
美しい犯罪者は、そして名探偵、アシスタント、そして警視庁の警部補、被害者の家族が一つの部屋に集まる。警部は被害者の家族の一人を犯人だと考えている。警部補は一連の証拠を取り上げて家族の一人を捕まえようとするが、名探偵は警部補を制し皆を静めた。ガールフレンドは続ける。
「和美ったら凄く落ち込んじゃって、でも誕生日から2日後にその彼がやってきてとても大きな石の付いたリングを持ってきたらしいの、そしたら、今度は和美大喜び、でも、何でちゃんと誕生日にプレゼントをあげないのかしら。そういう男の人の神経って良くわからないの、ねぇ……どう思う?」
そうガールフレンドが質問をした時、名探偵はついに謎解きを初め、ドラマの中で一番大切なキーとなる言葉を説明した丁度その瞬間だったのだ。その瞬間を逃したらこのドラマの結論はわからなくなる。テレビに集中してガールフレンドの言葉を無視した。
「ねぇ、ちゃんと私の話、聞いてる……」
次の瞬間ガールフレンドはそう言って怒り始めた。やれやれ……
■練習はオヤスミです。代わりにワインを買ってきました。1994年オーメドック、ブルジョワ級です。