注意:本文には性的な表現が使われています。作品の表現に必要な範疇に留めたいと考えておりますが作者と読者の理解の違う場合がありますのでご理解ください。若年層の方及び性表現に嫌悪感を抱かれる方はご遠慮いただく事をお願いいたします。
近未来の世界、人々は高度な電子化へ対応で不眠症に苦しんでいた。「NDT Inc.」社は、独自開発した特殊装置で不眠解消のために「夢」を売るサービスを提供していた。装置の悪用を計画する非合法プロバイダ「MAL(マル)」。NDT社の社員である「不眠症の主人公」と恋人「ケィ」が装置をMALから守るために繰り広げる「近未来・冒険・ドリーム・ラブロマンス」BugsLifeをお楽しみください。
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18.仕事と謎のコイン ~ #7 ~
「42階へお越しですね。ご案内いたします」
そう言い先にたって進んだ。真直ぐに背筋の通った職員の背中を見ながら黙って後に続いた。職員は一度も振り向く事も無く回廊を奥へ進み行突き当りまでくると、ぴったりと足を止めた。まるでロボットのような動作でジャケットのポケットへ手を入れると金属製のコインを取り出した。厚さ15ミリ、直径が30ミリ程の分厚く大ききの見覚えのあるコインだ。円周には複雑な溝が刻まれ表面には陰陽円のような模様が掘り込まれ白黒が色付けされている。覚えのある物と全く同じだ。朽ち果てた建物の近くで見つけたコインだ。
あのコインと同じ物であれば相当重い筈だ。どうして職員のジャケットが型崩れしてしまわないのか不思議だ。同時に自分の持っているコインの所在が気になった。あの時のままなら、バックパックの中へ放り込みそのままになっている筈だ。山から戻って存在をすっかり忘れていた。何故同じ物がここにあり職員が持っているのか不思議だった。職員は一度も振り返る事もなく手にしたコインを壁に空いた穴へ入れ、左右に何度かまわした。コインは吸い込まれるように穴へ収まり壁面と同化した。
時代遅れのカラクリ扉を開ける仕掛のようだ。その場所が一般の患者のために作られたのでない事は直ぐにわかった。床の石と同じ素材で作られた扉は、エレベータをカムフラージュするように壁と同化している。ロビーから見ても誰もエレベータの存在を気付きはしないだろう。
もし、誰かが教えてくれなければ通り過ぎてしまう。勿論、行き先のフロアを示す表示があるわけが無い。あの42Fへの小さな看板が便宜的に取り付けられているだけでまるで隠し扉だ。そんなエレベータを一般の客が使う事が無い事は考えれば誰にでも解る事だ。しかしそんな特殊な場所にどんな診察室があるのか不安感が膨らむ。
暫く待つと行き止まりだった石の壁面がゆっくりと開きその奥に銀色の小さな部屋が出現した。職員は無表情に振り返り「中へどうぞ」と言う具合に手で導く。職員の横を抜け、中へ足を踏み出し見回すとザラリとした銀色の壁面は無機質で冷たく金属の箱の中のようだった。職員も後から乗り込むのだと思っていたが扉の外で「いってらっしゃい」と言うように数十年勤め上げた執事のような丁寧なお辞儀をしていた。
暫くすると扉が音も無く閉まり、隙間から職員がお辞儀をする姿が消え完全に銀色の金属に囲まれた。目を凝らして見ないと入ってきた壁面にある扉の継ぎ目を見つけるのも難しい。しかしエレベータの一番の特異性はボタンと階数を示すインジケータが無い事だ。扉の開閉のためのボタンも行き先階を支持するボタンも無い。扉が閉まってしまうと中から何の指示を与える事もできない。立方体の金属の箱の中へ閉じ込められたのと同じだ。
耳を澄ましたが金属の箱が上昇している音は無く天井のパネルと筐体の間に出来た細い隙間から細い管の中を空気が流れるようなシューという高い音が漏れているだけだ。壁面に触れると見た目通りの金属の冷たい肌触りがした。壁面からは一切の振動も感じない。もしこのまま二度と扉が開かなかったらといった恐怖感が沼地の底から湧き出す泥のように湧き上がってくる。
一度目を閉じ、恐怖感を打ち消けそうと山で見た青空と雲を思い出して大きな深呼吸をした。落ち着くと靴の裏側に押し上げられるような加速を感実できるようになった。「確かに移動している……」そんな現実的な感覚が得られなかったら本当に動いているのかわからない。いつ開くのか分からない冷たい扉を見つめ大人しく到着を待った。
空気の漏れる音が小さくなると同時に床からの抗力も小さくなり、完全に音が消えると扉がゆっくりと開いた。扉の向こうには気の遠くなるような暗く長い廊下が続いていた。先程まで居た明るく広々としたロビーと比べる暗くて狭い。細長い廊下の先は暗くて見通せない。廊下に所々に取り付けられた暗い幾つかのランプがその先を照らしているだけだ。先程までの近代的な建物とは似ても似つかない。エレベータの中へ数百年もそこに留まっているような湿気が流れ込み、カビの臭いが鼻をつく。
箱の中へ再び閉じ込められるのは嫌だった、勇気を奮い起こし扉の外へ足を踏み出すと、体はたちまち重い空気に包まれる。床はロビーのような石の床ではなく古い学校で使っていたようなリノリュウムの床に似た感じだった。体がエレベータの外に出てしまうと背後で扉が閉まる気配がし、エレベータの照明が扉の間隔が狭くなるに従って廊下の照らす範囲を狭めた。光が細い線に変わりって扉が完全に閉まってしまうと、背後はロビーと同じ様に完全な壁になってしまった。もうその場所にエレベータの存在は無い。
まるで洞窟の中に一人置き去りにされたような状況だった。エレベータを呼び戻そうにもボタンは無く廊下の先へ進む以外道は無かった。廊下には古い廃坑のような金網の中に入って切れかけた白熱灯がポツリポツリと天井からぶら下がっているだけだ。切れかけた白熱灯は最後の力を振り絞って細かく点滅し、フィラメントから光が消えると周囲は濁った闇に包まれる。
もう後戻りしてロビーに戻る事もできない。何故こんな事になってしまったのかいきなり訪れた災難を受け入れるしかなかった。ケィが何故この病院を紹介したのか、そしてこの廊下の先に何が待ち受けているのか想像も付かなかった。
■お待たせしてすみません。次回は廊下です。
■何を思ったのかロースト・ポークを焼きました。じっくり低温で2時間、油を絞りだしました。美味しく焼けたと思います。タコ糸苦労しました。
近未来の世界、人々は高度な電子化へ対応で不眠症に苦しんでいた。「NDT Inc.」社は、独自開発した特殊装置で不眠解消のために「夢」を売るサービスを提供していた。装置の悪用を計画する非合法プロバイダ「MAL(マル)」。NDT社の社員である「不眠症の主人公」と恋人「ケィ」が装置をMALから守るために繰り広げる「近未来・冒険・ドリーム・ラブロマンス」BugsLifeをお楽しみください。
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18.仕事と謎のコイン ~ #7 ~
「42階へお越しですね。ご案内いたします」
そう言い先にたって進んだ。真直ぐに背筋の通った職員の背中を見ながら黙って後に続いた。職員は一度も振り向く事も無く回廊を奥へ進み行突き当りまでくると、ぴったりと足を止めた。まるでロボットのような動作でジャケットのポケットへ手を入れると金属製のコインを取り出した。厚さ15ミリ、直径が30ミリ程の分厚く大ききの見覚えのあるコインだ。円周には複雑な溝が刻まれ表面には陰陽円のような模様が掘り込まれ白黒が色付けされている。覚えのある物と全く同じだ。朽ち果てた建物の近くで見つけたコインだ。
あのコインと同じ物であれば相当重い筈だ。どうして職員のジャケットが型崩れしてしまわないのか不思議だ。同時に自分の持っているコインの所在が気になった。あの時のままなら、バックパックの中へ放り込みそのままになっている筈だ。山から戻って存在をすっかり忘れていた。何故同じ物がここにあり職員が持っているのか不思議だった。職員は一度も振り返る事もなく手にしたコインを壁に空いた穴へ入れ、左右に何度かまわした。コインは吸い込まれるように穴へ収まり壁面と同化した。
時代遅れのカラクリ扉を開ける仕掛のようだ。その場所が一般の患者のために作られたのでない事は直ぐにわかった。床の石と同じ素材で作られた扉は、エレベータをカムフラージュするように壁と同化している。ロビーから見ても誰もエレベータの存在を気付きはしないだろう。
もし、誰かが教えてくれなければ通り過ぎてしまう。勿論、行き先のフロアを示す表示があるわけが無い。あの42Fへの小さな看板が便宜的に取り付けられているだけでまるで隠し扉だ。そんなエレベータを一般の客が使う事が無い事は考えれば誰にでも解る事だ。しかしそんな特殊な場所にどんな診察室があるのか不安感が膨らむ。
暫く待つと行き止まりだった石の壁面がゆっくりと開きその奥に銀色の小さな部屋が出現した。職員は無表情に振り返り「中へどうぞ」と言う具合に手で導く。職員の横を抜け、中へ足を踏み出し見回すとザラリとした銀色の壁面は無機質で冷たく金属の箱の中のようだった。職員も後から乗り込むのだと思っていたが扉の外で「いってらっしゃい」と言うように数十年勤め上げた執事のような丁寧なお辞儀をしていた。
暫くすると扉が音も無く閉まり、隙間から職員がお辞儀をする姿が消え完全に銀色の金属に囲まれた。目を凝らして見ないと入ってきた壁面にある扉の継ぎ目を見つけるのも難しい。しかしエレベータの一番の特異性はボタンと階数を示すインジケータが無い事だ。扉の開閉のためのボタンも行き先階を支持するボタンも無い。扉が閉まってしまうと中から何の指示を与える事もできない。立方体の金属の箱の中へ閉じ込められたのと同じだ。
耳を澄ましたが金属の箱が上昇している音は無く天井のパネルと筐体の間に出来た細い隙間から細い管の中を空気が流れるようなシューという高い音が漏れているだけだ。壁面に触れると見た目通りの金属の冷たい肌触りがした。壁面からは一切の振動も感じない。もしこのまま二度と扉が開かなかったらといった恐怖感が沼地の底から湧き出す泥のように湧き上がってくる。
一度目を閉じ、恐怖感を打ち消けそうと山で見た青空と雲を思い出して大きな深呼吸をした。落ち着くと靴の裏側に押し上げられるような加速を感実できるようになった。「確かに移動している……」そんな現実的な感覚が得られなかったら本当に動いているのかわからない。いつ開くのか分からない冷たい扉を見つめ大人しく到着を待った。
空気の漏れる音が小さくなると同時に床からの抗力も小さくなり、完全に音が消えると扉がゆっくりと開いた。扉の向こうには気の遠くなるような暗く長い廊下が続いていた。先程まで居た明るく広々としたロビーと比べる暗くて狭い。細長い廊下の先は暗くて見通せない。廊下に所々に取り付けられた暗い幾つかのランプがその先を照らしているだけだ。先程までの近代的な建物とは似ても似つかない。エレベータの中へ数百年もそこに留まっているような湿気が流れ込み、カビの臭いが鼻をつく。
箱の中へ再び閉じ込められるのは嫌だった、勇気を奮い起こし扉の外へ足を踏み出すと、体はたちまち重い空気に包まれる。床はロビーのような石の床ではなく古い学校で使っていたようなリノリュウムの床に似た感じだった。体がエレベータの外に出てしまうと背後で扉が閉まる気配がし、エレベータの照明が扉の間隔が狭くなるに従って廊下の照らす範囲を狭めた。光が細い線に変わりって扉が完全に閉まってしまうと、背後はロビーと同じ様に完全な壁になってしまった。もうその場所にエレベータの存在は無い。
まるで洞窟の中に一人置き去りにされたような状況だった。エレベータを呼び戻そうにもボタンは無く廊下の先へ進む以外道は無かった。廊下には古い廃坑のような金網の中に入って切れかけた白熱灯がポツリポツリと天井からぶら下がっているだけだ。切れかけた白熱灯は最後の力を振り絞って細かく点滅し、フィラメントから光が消えると周囲は濁った闇に包まれる。
もう後戻りしてロビーに戻る事もできない。何故こんな事になってしまったのかいきなり訪れた災難を受け入れるしかなかった。ケィが何故この病院を紹介したのか、そしてこの廊下の先に何が待ち受けているのか想像も付かなかった。
■お待たせしてすみません。次回は廊下です。
■何を思ったのかロースト・ポークを焼きました。じっくり低温で2時間、油を絞りだしました。美味しく焼けたと思います。タコ糸苦労しました。
