「ダンが来週帰えるんだ。」


2本目のグルナッシュが空いた時にロバートが呟いた。ダンもカリフォルニアに帰って新しい人生を歩もうとしていた。


口元までグラスを運んだ手が一瞬止まったが、聞こえなかったかのように運んだグラスを空けた。ナオミも遠くを見るように焦点の無い目つきだ。


別のボトルを買いに行くと嘘をついて、ナオミを一人残しロブの家を後にした。彼らは戻って来ない事は承知だろう。外へ出ると早朝の冷たい空気で身震いした。体が温まるように早足でフラットを目指した。


玄関のドアを開けると急に吐き気に襲われた。ベルトを外し、ジーンズを床へ投げ捨てベッドへ倒れこむ。スタンド・ライトをOFFにして、瞼を閉じるたがそれで眠れるというわけではなかった。


頭の中に定規できちんと線を引っ張ったように、思考の四角い輪郭がわかった。誰かが頭の中でオイラーの定理を解き始める。


「止めろ、止めろ、止めろ……!」


大きな声で怒鳴ったが、誰かが頭の中にいる訳がなかった。


ゆっくり瞼を開くと、部屋は少しだけ明るくなり、窓の外にはもうその日の朝が訪れていた。

眠れないのはわかっていたが、太陽に反抗するようにシーツの中にもぐり続けた。


公園から7時を知らせる音楽が聞こえた。諦めてダイニングへ行き、冷蔵庫から冷たいミネラル・ウォーターを出して氷を入れたグラスへ注いだ。


音を立てて氷にヒビが入る。コップの中身を一気に飲み干し、クローゼットの中からトレーニングウェアを出し身に付けた。全てがいつもの週末だ。玄関の鏡を見ると、頬が扱け目が落ち窪み顔色の悪い妙に老けた他人がいた。


「他人だ」


そう言いきって、iPod、シューズ同じ様に雨の街へ走り出す、Night Runningのおかげだろうか、体が性能の良いベアリングを付けた車輪の様にスルスルと前にへ出る。


川沿いのランニング・コースに出る、海へ向かって真っ直ぐな道が続いていた。東からの涼しい風。先週のRunと全く違う、脚が動いてくれる。


「前へ、前へ」


自分へ言い聞かせる。道の脇のススキはもう花を付ける準備をしてなびいている。時折、赤とんぼの群れがコースを横切る。秋の蟲達が草の中で音楽を奏でる。


コース脇のプールからは子供達の声が消え、代わりに救難救助訓練が行われていた。秋は確実にそこにあり、月日は確実に進んでいた。


「前へ出なくっちゃ、走れ!、走れ!」

雨が上がって雲の切れ目から太陽の光が河の向こうに広がる街を照らしていた。



今日は10.88キロです。眠っていないのに何故走れるのだろう?走る人


優れもの紹介します。 Nike + iPodです。 iPodと一緒に使うと。ヘッド・セットから走った時間と距離を教えてくれ、応援してくれます。自分の走行距離から世界での順位を算出してくれます。


iPodを持って、靴の中にセンサーを入れて走るだけです。無線で通信してiPodへデータを保存してくれます。


iPod


上のチップを靴に付け、下のトランス・ミッタをiPod nanoへ差し込みます。