「呼び出し」
「大変よ、モーション・ユニット制御システムの23番プロセスのセッションが突然全て停止したの、モーション・ユニットが制御不能よ」
携帯を耳にあてると向こうから緊張したケィの声が頭の中に響いた。緊張が解けてやっとナチュラルな夢の中へ入れるところだったが、ケィからの緊急連絡を無視する訳にはいかなかった。
ほとんど停止(スリープ)状態にあった脳細胞を再起動させるのにはハードディスクへスワップ・アウトしてしまったページ情報をロールバックする必要があった。脳細胞のプロンプトがスタンバイになるとやっと言葉が出た。
「システムがダウンしてからどれ位経たんだい?」
「もう、2分よ、バックアップへは普通1mm秒以下切り替わる筈でしょ、でもバックアップも起動してくれないの、バックアップ・システムへのセッションもモニターできないの、どうしたらいい?」
「モーション・ユニットが切れるとやばいな、・・持って5分かぁ・・5分たつと混乱が起こるな・・ケィ、レコード・ユニットのデータを今のバーションと互換性のある一番古い物から流してみてくれ、コマンドはわかるね。」
「えぇ、わかった、やってみるわ」
携帯の向こうからキーボードをたたく音が聞こえる。
「その方法なら、データを流すだけだからモーション・ユニットをバイパス出来るはずだ・・(たのむ上手くいってくれ)。」
「まずいわ、レコード・データの読み出しが早すぎてイメージ・ユニットの入力制御が同期してくれない。このままではノイズが大きくなりすぎる。どうしたら良いの?」
「オーケィ、じゃあエモーション・ユニットのサブシステムへバイアスを与えて、これでイメージ・ユニットの処理能力に制御が働く筈だ。」
「待って・・オーケィ・セットした・・えぇ何とか同期できた。全てのセッションも同期できているみたい。後はレコード・データを古順番にプログラムすればいいのね。」
「良く出来た、ケィ・・メモリ・レコードのデータバンクには3日分があるから、とりあえずそれを使おう、必要ならアーカイブから取り出せばいい」
「ありがとう。助かったわ。」
「大丈夫、今からそちらへ向かって原因を調べる、ちょっと待っていて。」
「オーケィ、早く来てね、待っているわ。じゃ」