安田さん、またこんなにして!
ほら見てこれ、ねぇ
おばさん達がまた騒いでいる
なんでも今日はシャーペンの並び方らしい
何でこんな事も出来ないんですか
いい加減にして下さいよ
直す方の身にもなって下さい
ねぇ
いいいいいいい加減にしろってのは
あんたらだ
こっちは金払って雇ってんだから立場も弁えずに口だけ出すなよ
あんたらに何が出来るよ
金作れよ、客増やせよ
あんたらの態度で客離れてんだよ
こんだけ売上下がってんのにシャーペンもクソもねぇって
米飯が一番粗利高ぇのに入荷ん時、検品しねぇでカウンターん中でくっちゃべって
ちっちぇえとこグチグチ言うなって
いいんですか!本部に言いますよ!
言えよ、勝手にすりゃ良いじゃねぇか
こっちが我慢してたら調子に乗りやがって
あんたら勘違いした連中に騙されりゃ良いんだよ、うちの程度の低い会社も
こんなところやってられるか!
寝てなかったのと不安が僕を我慢出来ない精神状態に持ってったんだろう
僕はめんどくさくなって制服を叩き付けると職場を出た
lineの着信が入った
休み決まった?
舞桜からだった
もういつでも休めるよ
僕は送り返した
違う違う違う、一回、僕の家に来てた
あの時、夜勤明けで僕は寝ていた
コロコロと何かを買ってきた袋は近所のホームセンターの袋だった
そのホームセンターには合鍵を20分で作れる鍵屋さんがある
いや、それだと逢おうと言うだろうか
のぞみの話だとともだち屋の上の人間は
どうも灰色の人間ばかりでキナ臭いし
もし舞桜が鍵を作るように指示されていたらどうだろうか
舞桜、今から逢える?
僕は確認したくてそう送ったが返事が来ない
のぞみに
舞桜ってともだち屋でどんなポジションにいるか解る?
と送った
舞桜さんはともだち屋でもよく稼ぐ人で
上の方からも気に入られてますよ
上の人と付き合ってるように聞いてます
相変わらず早いレスで有難い
何か犯罪に巻き込まれたとか聞いた事はない?従業員か、客か
そう言うお話は私には入って来ないですけど、こう言うお仕事なのでトラブルはあると思います
カッちゃんさん、今、どこにいますか?
私は今、療養で鎌倉に来ています
こっちは風が気持ち良いですよ
僕は家に帰らずクレジットのキャッシングに寄ると鎌倉に向かった
のぞみさん、鎌倉のどこら辺にいるの?
鎌倉に向かう電車の中で打った
今、漁船の見える小屋みたいなところまで
散歩に来ました
もう19時を過ぎたので帰らないといけないんですけど少し疲れたんでここで休んでます
地図が添付されていた
カッちゃん、どこ?
舞桜からlineが入った
カッちゃん、家にいないんだけど?
家にいない?僕の部屋に入ってるのか?
僕は身動きも取れずに息を飲んだ
カッちゃん、逃げた?
逃げた?逃げたって何から?
舞桜のlineが怖くなってきた
カッちゃん、逃げられると思う?
ともだちだって言ったよね?
カッちゃん、良いの?
カッちゃん、今、電車?
カッちゃん、東京出た?
舞桜からlineがどんどんと入る
カッちゃん、解るんだよ
こっちからでも
カッちゃん、返事しないの?
怒るよ、カッちゃん
返事しろよ!
カッちゃん、見っけ
本当かどうかは解らないけれど
勝手にアプリを入れられてGPSで監視されている可能性もあるので僕はスマホの電源を落として電車の中の人間を見回した
鎌倉に着いた僕は海岸に向かった
もう21時を過ぎている
のぞみがまだあの地図の場所にいるか
確認しないまま諦め半分で歩いた
海岸が見えた時にスマホの電源を入れた
舞桜の鬼のようなlineが入ってくる
それを無視してのぞみの送ってきた地図をナビで検索した
ずいぶん遠く奥まった所のようで街灯の無い海岸沿いの道を3時間かけて地図の場所に着いた
のぞみさん、まだ小屋の近く?
小屋を見つけて打ってみた
珍しく返事がない
小屋を開けると蜘蛛の巣が張られて
ずいぶん使われてない様子だった
真っ暗で何も見えない
僕はスマホのカメラを付けてフラッシュを着けた
その灯りで周りを照らしながら狭苦しい小屋を奥へ進んだ
何かを踏んだので足元を照らすとそこには舞桜がいた
驚いた僕は背中を小屋に打ち付けた
目を開けて顔中から血を流して微動だにしない舞桜に近付いて舞桜、舞桜と声をかけながら脈をとった
冷たい腕には脈がない
僕は吐き気をこらえて小屋を走り出た
考えろ、考えろ
どう言う事だ
舞桜は俺に連絡をして来ていた
スマホは他の人間が使っていた?
誰が?呼び出した人間?のぞみ?
のぞみは地図を貼ってきた
のぞみにも何かあったとしたら?
僕はツイッターを開いた
のぞみはアカウントを消している
つまり?
つまり、つまり、つまり?
舞桜がともだち屋に合鍵を作らされて
ともだち屋が僕の財産を奪った
僕が恨みを買う何かをした?
いや舞桜が邪魔になっていた?
僕がフラフラと道路に出た時、急ブレーキでクラクションをけたたましく鳴らしながら車が停まった
危ないだろ!
タクシーのようで運転手が怒鳴っている
僕は右手を前に出しながらタクシーに近付き乗せて下さいと言った
運転手は眉間に皺を寄せたままドアを開けてくれたので駅までと言った後、財布を出して手持ちを確認した
舞桜の血が着いた震える左手でタバコを吸いながら、もう一度、舞桜が殺されなければならなかった理由を探る為にともだち屋のサイトを開いたがエラーで開けない
これにもし理由が無いとすれば?
僕や他の客から金を採る遊びの延長
だったとしたら?
邪魔になった舞桜を殺して誰かに罪をかぶせようとしたら?
ラジオから古い曲が聞こえる
彼の車に乗って
恋の終わりを知っていた
ああああと言いながら運転手がラジオのチャンネルを変え
ごめんなさいね、泣かせちゃって
と続けた
どう、僕は泣いてないですよ
いや、おたくの彼女さん?右の方が泣いてるでしょう
停めろ!停めてくれ!
僕は一万円を投げ付けるように運転席に出すと車から崩れ落ちて側の自動販売機まで這って行った
タバコに火を着けて自動販売機に凭れるとサイレンを鳴らすパトカーが目の前で停まった
安田さんですか?
車から降りてきた警官が聞くので、はい、と答えた
沖 恵理子さん殺害に関してお伺いしたい事がありますので、ご同行願えますか
沖 恵理子?…舞桜の事か
解りました
僕は何が何やら解りません
巻き込まれたのか何をしているのか
僕が呟くように言うと警官が歩み寄って来て座り込み頷いて言いました
大丈夫、ともだちだろ
終