『真央ちゃんがこんなに…』浅田真央が初出演、高橋大輔との共演で思い出した″10年前”…なぜフレンズオンアイスは『特別なショー』になったか

  8月30日から9月1日にかけて、アイスショー『フレンズオンアイス』がKOSE新横浜スケートセンターで行われた

 

  2006年、トリノ五輪で金メダルを獲得した荒川静香を中心に初めて開催され、以降、荒川のプロデュースのもと、コロナ禍の2020年を除いて毎年、新横浜で行われてきた

 

  18回目を迎える今回は、記念すべきショーとなった。例年のようにステファン・ランビエルやシェイ=リーン・ボーンら海外のそうそうたる顔ぶれそろったのに加え、出演者には高橋大輔、今年5月に競技生活から退いた宇野昌磨が名前を連ねた

 

  さらには浅田真央が初めてフレンズオンアイスへの出演を果たした

 

  現役時代の活躍もさることながら、高橋は『アイスエクスプロージョン』『滑走屋』、浅田は『浅田真央サンクスツアー』『BEYOND』『Everlasting33』、宇野は9月7、8日に再演される『ワンピース・オン・アイス』等に出演。現在もそれぞれにショーを牽引するスケーターが一堂に会したのである

 

『大ちゃんが意外といちばん頼りになって(笑)』

  オープニングでは荒川、高橋、浅田が明るくなったリンクにいて、3人が滑る。荒川が語る

 

『振り付けを担当してくださった宮本賢二さんのアイディアも大きくて、3人でスタートするとなったとき、そういえば、この3人で1つのナンバーを滑ったことってないなと思って、創っているとき、楽しかったです。大ちゃんが意外といちばん頼りになって、しっかりしていてびっくりしたんですけど(笑)』

 

  3人が滑る場面は今公演を象徴していた

 

  ソロのナンバーでは、高橋は『Wake Up,YouYou’re Dreaming』を披露

 

『(ショーのテーマでもある)宝石って人を惑わす部分も多いのかなって思うんです。その惑わせるっていうところから、不思議な世界に迷い込んでしまい、そこから抜け出せなくなってしまう。その感じを、自分自身で振り付けしました』

 

  高橋ならではの世界を描くと、浅田は『深夜のシャンデリア』をみせる

 

『苦悩を表現しています。自分自身もスケーターとしてこれまでショーで滑ってきているんですけど、滑っていく中でも楽しいとか幸せだけじゃなく、やっぱりどこか大変だったり辛いこともあるので、其れを表現しつつ、でも私は負けずに輝くんだという力強い滑りを皆さんに見ていただきたいなと思います』

 

  浅田の足跡は、まさに打ちのめされてきたように見えても立ち上がってきた歴史だ。その時間に裏打ちされた演技は、繊細な技術に加え、細部まで行き届く感情表現とともにメッセージを伝えていた

 

スケーターのいちばん輝く姿

  宇野はプロになって初めてつくったプログラムであると説明したうえで、こう続けた

 

『すごくアップテンポで、ジャンプ以外の部分でかなりエネルギーを使います。自分もこのプログラム滑りがいを持って滑っているプログラムになっています』

 

  さまざまな魅力を持つ宇野の1つの側面をみせる演技が、場内の熱量を高める

 

  彼らだけではない

 

『フレンズオンアイスのずっと変わらないコンセプトでもありますが、それぞれのスケーターのいちばん輝く姿が理想で、今年はそれをジュエリーに例えて、一人ひとりの輝きがリンクの上で発揮されるように、今の輝きがこんなに素敵なんだよというのを伝えたいという願いがあります』(荒川)

 

  出演者それぞれの演技に加え、宇野とランビエルをはじめとするコラボがショーを華やかに彩る。浅田同様、初めてフレンズオンアイスに出演した三浦佳生もソロに加え、高橋らと『エクソジェネシス』で持ち味をみせる。ショーへの出演は、貴重な時間となっただろう

 

思い出した10年前『高橋と浅田の共演』

  荒川の思い描いていたように、すべての演目に輝きがあった。スケーターたちの力量とともに、ともに同じリンクにたつからこそ生まれた相乗効果もあったのではないか

 

  フレンズオンアイスは、10年前を思い起こさせた。2014年12月、同じ新横浜で行われた『クリスマスオンアイス』で高橋と浅田は共演し、2人が一緒に滑るナンバーも披露された

 

  ソチ五輪を経て、高橋は最初の現役引退を発表したあと、浅田はシーズンの休養を選んだ中で成立したショーだった

 

  ともにこれからを模索する2人が、雪の舞う演出のフィナーレでみせたのは、これからもそうであってほしいと見る者に思わせるような、とびっきりの笑顔だった

 

  あれから10年、高橋と浅田はそれぞれの軌跡を描き、今もトップスケーターとして輝きを放ち続ける。そればかりではなく、フィギュアスケートの新たな可能性をなお探り続ける

 

 集結した″特別な顔ぶれ”

『特別』と言ってさしつかえない顔ぶれがそろった今回でも、2人は、いや2人に限らず出演したスケーターたちは晴れやかな笑顔をみせた

 

『真央ちゃんがこんなに楽しい人って思わなかったです』

 

  と荒川が言えば、浅田が応える

 

『静香さんが、こんなにしゃべる方だったとは。(バックステージで)ずっとしゃべっています』

 

  新たな交流も生み出した今公演もまた、スケーターたちのこれからの糧になったことだろう

 

  彼らのここからの活動と、来年のフレンズオンアイスに想いを馳せる、特別な空間と時間があった