りくりゅうが復帰戦でみせた″滑る喜び” 世界選手権に向け『伸びしろしかない』

はい上がっていくイメージで滑るショートプログラム

 『私たちにとって四カ月ぶりの試合なんですけど、2人でスタートポジションに立った時に、「あ、戻ってきたんだな」って』(三浦)

 

  復帰戦となる四大陸選手権のショートプログラムで、2位につけた三浦璃来/木原龍一。記者会見で、三浦は試合のリンクに戻ってきた感慨を口にした

 

″りくりゅう”と呼ばれる2人にとって、昨季はキャリアハイとなるシーズンだった。グランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権のすべてで優勝する″年間グランドスラム”を達成し、最高の成績を残した。それでも常に自分自身を超え続けようとする2人は、緩まずに進む姿勢をみせていた

 

  しかし本格的なシーズン開幕前、昨年9月の今季初戦オータムクラシック(2位)を終えてから、木原が腰椎分離症と診断された。8月頃から感じていた腰の違和感が、痛みに変わってきたのだという

 

  三浦/木原は、グランプリシリーズ2戦(スケートアメリカ[昨年10月]、NHK杯[昨年11月])と全日本選手権(昨年12月)を欠場。実績により世界選手権(3月、カナダ・モントリオール)の代表に選ばれている2人は、昨年12月末に四大陸選手権出場を決断したという。ぎりぎりの調整を強いられたことを、木原はフリー後の記者会見で明らかにしている

 

『1月の第2週目にようやくペアの技を練習できるようになって、2週間前からやっとショートの通しをして、先週初めてフリーを通せました』(木原)

 

  四大陸選手権は、なんとか間に合わせた試合だったことになるが、試合を通して2人の表情は明るかった。どの試合でも滑る喜びが伝わってくるのが″りくりゅう”の魅力だが、今大会は特に、久しぶりに出場する試合を楽しんでいるようにみえた

 

  ショートは、初戦のオータムクラシックとは違う曲を使うプログラムで臨んだ。当初の曲は練習する中で自分たちに合わないと感じていたため、オータムクラシックの前から変更することが決まっていたという。新しい曲『Dare You to Move』は2人らしい爽やかな曲調で、木原はもう一度はい上がっていくイメージを持って滑っている

 

  3回転を予定していたサイドバイサイドジャンプで三浦のジャンプが2回転になってしまうミスがあり、レベルの取りこぼしもあった。しかし何より、2人の魅力である疾走感あふれるスケーティングが印象的だった。ショートのスコアで65.61で2位発進となった

 

  記者会見で『どのペアもミスがありましたが、原因は何だと思いますか?』という質問を受け、木原は『僕も知りたい』と笑った

 

『僕も聞きたいです。解決法あれば。もちろん時差の関係もあったのかなと思いますけど、ミスが出てしまう時はどんな試合でも出てしまうので、そういう日だったのかなと思っています』(木原)

 

  2人の穏やかな笑顔からは、これ以上はできないという準備をしてきた達観が感じられた

 

『途中で止まろうかと』それでも滑り切ったフリー

  三浦/木原のフリーは、セリーヌ・ディオンが歌う『Une chance qu‘ons‘a』を使っている。セリーヌ・ディオンは、2人の練習拠点であり世界選手権の開催地でもあるカナダの歌姫である。ドラマチックな曲に、2人の伸びやかなスケーティングが映えるプログラムだ

 

  このフリーでも、ジャンプの得意な木原が珍しく3回転サルコウの着氷で手をつくなど、ジャンプのミスがいくつかあった。大技のスロー3回転ルッツは美しく決まり、確実に状態を戻しつつあることを感じさせると同時に、採点表には本来の滑りであればしないであろうレベルの取りこぼしも散見される。三浦/木原の復帰戦は、フリー125.16、合計190.77、総合2位という結果だった

 

  演技を終えて笑顔をみせていた木原は、フリー後の記者会見で『本当にフリープログラムがきつくて』と吐露している

 

『練習であまりにもきつかったので、コーチの方から冗談で「あまりにもきつかったらペアスピンの時止まって休憩していいよ」と言われていた。本当に、試合の途中で止まろうかと思って(笑)そんなような感じでした』(木原)

 

  それでもフリーを滑り切った木原は、テレビ局の取材に対し『残念な部分はたくさんあった』としながらも、手応えも感じている様子だった

 

『短い準備期間の中で、ある程度試合できるレベルまでは戻せたので、良かったかなとは思いますけど。また世界選手権に向けてはまだまだ足りない部分が多いので、修正ポイント・伸びしろしかないかなって勝手に思って(笑)。「また一から頑張っていきたいな」と終わった瞬間から思いました』(木原)

 

  三浦も、記者会見で課題を挙げている

 

『今大会ではレベルの取りこぼしが本当に多かったので、そこの見直しと世界選手権に向けていい練習を積み重ねていけたらなと思っています』(三浦)

 

  まだ本来の状態に戻っていないことに対する焦りではなく、滑る幸せを感じながら試合に臨めるのが、三浦/木原の強さだろう。試合のリンクに戻ってきた″りくりゅう”は、3月のカナダで、多幸感あふれるプログラムをより高い完成度で披露してくれるはずだ