引退・本田真凜に浅田真央33歳が何度も伝えていた″気遣いの言葉”…後輩スケーターたちに現在も与え続ける影響『マナーの面でも手本だった』

  1月11日、本田真凜が競技生活からの引退会見を行った

 

  その中で印象的な言葉があった。引退を決める中で、相談した人、かけられた言葉で印象に残っている言葉などがあったら、という質問に対し、多くの人に感謝しつつ挙げたのは浅田真央の名前だった

 

『私にとって憧れの女性であり、憧れのスケーターである浅田真央さんにお話をさせていただく機会があって、その時に最後のシーズンだっていうことをお話させてもらったんですけど、いつも私がつらいなって思っている時に何かを察して、こっちから連絡をしない時でも、心に響く本当に素敵な言葉をかけてくださるのが浅田真央さんです』

 

『一言一句間違わずに言えるぐらい自分の中では覚えているんですけど、それは自分の中の秘密にできたらいいなっていうのもあって。「最後まで小さいときから逃げずにここまで頑張ってこれたのはすごい偉いことなんだよ」「新しいスタートも胸を張って思いっきり進んでいけばいいよ」とかけていただきました』

 

浅田真央『真凜のことを応援している人はたくさんいるんだよ』

  本田が語ったように、それまでにも言葉をかけられたことがあった。例えば2021-2022シーズン、『自分の中で誰のために滑っているのか分からなくなっていて、昔のように応援してくれる方はいるのかな』と葛藤しているとき、連絡をくれたのは浅田だった

 

『1時間以上、2人でお話をさせていただいたり、練習を何回か教えていただいたり』

 

  会話の中で、『私も含めて、真凜のことを応援している人はたくさんいるんだよ』と浅田は話してくれたという

 

『何回も言ってくださって』

 

  その後、浅田との交流を糧としてブロック大会を勝ち抜き、全日本選手権出場を勝ち取っている

 

 

宇野昌磨を導いた浅田『フィギュアスケートをしようよ』

  振り返れば、浅田が影響を与えたのは本田だけに限らない

 

  例えば宇野昌磨がいる

 

  宇野が大須スケートリンク(名古屋)のスクールでスケートに励む中で、フィギュアスケートとアイスホッケー、スピードスケートのうち、どのコースに進むのかを選ぶときが来た

 

  宇野が選んだのはフィギュアスケート。きっかけはその頃大須で滑っていた浅田のひとことにあった

 

『フィギュアスケートをしようよ』

 

  もちろん宇野自身が『やりたい』と決めたことだが、浅田の言葉も影響していただろう

 

浅田真央は″マナーの面でも”お手本だった

  それだけにとどまらない

 

  数多くの利用者がいるリンクでは、例えばジャンプの練習をしたくてもなかなかできないことがままあった。それがために氷を蹴ったり八つ当たりする子もいる中、浅田はそういう態度を見せなかったという。宇野も当時からマナーがきちんとしていたことは知られているが、手本たる浅田の存在もあったはずだ

 

  宇野は少しでも長く練習したいことから、朝から行けるときはリンクのオープン前から受付に並んだ

 

  日によっては、一番乗りを目指す列のなかには宇野だけでなく、浅田あるいは村上佳菜子もいた。年代を超えて切磋琢磨したこと、彼らの関係性を思い起こさせるエピソードの1つ

 

村上佳菜子『(浅田は)最高の友達であり、憧れの人です』

  村上と浅田の縁も深い

 

  村上が中京大中京高校の入学式で着用した制服は、浅田が着用していたものをもらったもの。また、のちには『振り返ってみると私の人生の大事なところはいつも真央ちゃんがいて、刺激をくれるの。それが、とてもいい方向に私のことを引っ張って行ってくれるんです』と綴り、感謝を寄せている

 

  宇野と村上は、2017年に浅田が引退したのに寄せてこう語っている

 

『人生を変えてくれた人で、昔からずっと努力をしていて、ほんとうに尊敬するアスリートで、自分もいつか手本となるような選手になりたいです』(宇野)

 

『ずっと背中を見て追いかけるようにして頑張ってきました。これからも最高の友達であり、憧れの人です』(村上)

 

現在は…ジュニア世代にも多大な影響を与え続けている

  影響は、浅田とともにリンクで励み、試合で過ごしてきたスケーターばかりではない

 

  今シーズンは故障に苦しんだものの、昨シーズン、中学2年生ながら全日本選手権フリーで2本のトリプルアクセルを成功させて4位、世界ジュニア選手権でも銅メダルを獲得した中井亜美は、浅田真央の演技に惹かれてスケートを始めた。のちに直接教わる機会もあり、『とても貴重な経験になりました』と語っている

 

  今シーズンのジュニアグランプリファイナルで銅メダル、先月行われた全日本選手権で4位となって脚光を浴び、世界ジュニア選手権代表にも選ばれた中学1年生の上薗恋奈。4歳の頃アイスショーを見に行き、そこで浅田に手を振ってもらったことがきっかけでスケートを始めたという

 

  形だけの、おざなりのことであったなら、上薗の心はおそらく動かなかっただろう。そう、大須のリンクで見せてきたスケートに取り組む姿勢、トップスケーターとなり、引退後も見せてきた立ち振る舞いがあって、浅田真央は追いかける背中となり、スケーターを支える言葉となり、憧れとなってきた

 

  そして宇野の言葉が象徴するように、後に続くスケーターの手本ともなってきた

 

  今なお浅田真央の存在の大きさを実感させる契機となったのが、本田真凜の引退会見だった