Number Webから(5月28日付)

http://number.bunshun.jp/articles/-/830893

 

樋口新葉、北京五輪への新章始まる。『トリプルアクセルは今季中に絶対』

 

 昨シーズンは、17歳の樋口新葉にとってドラマチックな1年だった。好調なスタートを切ってGPファイナルに初進出するも、全日本選手権は4位に終わり平昌オリンピック代表を逃して悔し涙を流した。だが3月の2018年ミラノ世界選手権ではカナダのケイトリン・オズモンドに続いて2位となり、銀メダルを獲得。日本人女子として、史上10人目となる世界選手権メダリストとなった

 

 5月、トロントに短期トレーニングに来ていた彼女が単独取材に応じてくれた

 

世界選手権、本当の勝負は来年に

 

 様々な思いが詰まった昨シーズンを、まずは振り返ってもらった

 

 『GPファイナル、全日本まではオリンピックのために頑張ってきて、そこで結果が出せなかった。(自分は)まだまだだなと思ったので、世界選手権では今シーズンの演技として悔いが残らないようにしたいという気持ちがすごく大きく、自分のために滑りました。いつもそうなんですけど、それを強く思いながら滑った試合になりました

 

 SPではミスがあり8位の厳しいスタートだったが、フリーでは完璧な演技を見せて大逆転を果たした。それでもまだ、自身の力で手に入れたという実感は薄いと語る

 

 『(今回は)たまたま、上の人たちが抜けたという印象が強いので、来年頑張って結果を残せたら自分の実力かな、と思います

 

 そう謙遜するものの、アリーナ・ザギトワの予想外の失敗などがあったとはいえ、多くの実績ある強豪たちを振り切っての2位だった。オリンピックに出られなかった悔しさをぶつけた結果の快挙と、どのマスコミも讃えた

 

 だが本人は気持ちの整理がついていない、と複雑な思いを口にした

 

『平昌オリンピックは見ていないんです』

 

 『今になって思うと、世界選手権が終わった直後はやり切った気持ちが強くて、頑張って(気持ちを)切り替えたというようなことを言ったけれど、いまだに切り替えはできていないんです

 

 言葉を噛みしめるように、樋口はそう気持ちを説明する

 

 『オリンピックに出られなかったので世界選手権で頑張った、というのは確かにそうなのですが、オリンピックに出られなかったという気持ちは消えない。(これからまた)4年たって、どうなるかという気持ちは自分の中にあります

 

 平昌オリンピックはテレビで見たのかと聞くと、『見なかったです。誰一人見ていないです』と小さな声で告白した。『それほど悔しかったということですね』と聞くと、『はい』と頷いた

 

今季はトリプルアクセルに意欲

 

 2022年の北京オリンピックに向けて、すでに着々と準備を整えている

 

 5月に1週間、トロントのクリケットクラブに来たのも、羽生結弦のジャンプ指導もしてきたジスラン・ブリアンコーチに3アクセルの指導を受けることが目的の1つだった。樋口は2017国別対抗戦の公式練習で初めてこのジャンプを成功させ、ミラノ世界選手権の記者会見では将来的に試合で跳びたいと宣言していた

 

 『今シーズンから、絶対にプログラムに入れたいです』と意欲を見せる

 

 同世代の日本女子は、才能のある若手が激しく競い合っているだけに、こうした大技を自分のものにすれば、大きなメリットになる

 

 現在の自分の長所はどんなところだと尋ねると、こう答えた

 

 『あきらめないこと。ジャンプが1個だめでも、次で跳ぼうと思う。技術的なことでは、前よりもスケートが滑るようになったと思います

 

スピードに対する恐怖心は全くないです

 

 彼女の、リンクを大きく使うスピードのあるスケーティングは、ジュニアの時代から定評があった。それは子供の頃からのトレーニングの賜物だという

 

 『小さい時からスケーティングレッスンをしっかりしてもらってきて、ジャンプだけの練習というのは、してこなかった。それで逆にジャンプが安定しなかったこともあるのですが。でもスケーティングがしっかりしてくれば、そこで(ジャンプの失敗を)補えたりできるので、そういうことを考えながらいろんな先生にレッスンを頼んできました

 

 もともとスピードに対する恐怖心というものは全くないのだという

 

 『ですけど逆にそれが、スピードが出すぎてジャンプのタイミングが合わないことが多いので、最近ではスピードだけじゃないと思うようになりました

 

課題は『いつもジャンプを同じように跳ぶこと』

 

 最大の課題は、ジャンプの精度を上げること

 

 ついジャンプを感覚で跳んでしまう、というのは元々身体能力が高いためだろう。だがジャンプを毎回同じように跳ぶことが苦手なのだという

 

 『ほかの選手はジャンプを毎回同じタイミングで跳ぶことができていて、感覚は分かっていても試合で失敗することもあるのは緊張のためと思います。自分の場合は試合で感覚が狂ってしまうんです。昨シーズンはそれがだいぶ直ってきたけれど、もうちょっと同じ感覚で跳べたらなと思います』

 

 何度も同じタイミングでジャンプを跳べるように、昨シーズンは動画を撮影していた。そしてうまく跳べたときの自分の動画を見て、イメージを吸収するようにしてきたという

 

これからの目標、全日本優勝、GPファイナル

 

 これから次のオリンピックまで、具体的な目標については、こう語った

 

 『今年からの4年は、全日本選手権で優勝することがまず目標。また昨シーズンはGPファイナルに出られたので、そこから落ちないよう、毎年出られるようにしたい。毎回の試合でピークを合わせられるように、ということを1番に考えたいです

 

 ロシアなど、世界のトップ選手と戦っていくために、どんなことが必要だと思うか

 

 『海外の選手は、トランジションがすごく入っていて、自分はまだ足りない。ロシアの選手の滑りは機械的にやっているイメージが自分の中では強いですけど

 

 見ていて面白いのはまた違う選手かもしれないけれど、でもしっかり点数がとれるのはロシアの選手

 

 エキシビションでは何をしても良いけれど、試合だったらとにかくトランジションを入れてポイントをしっかり取るということが大事だと思います』

 

新しいタイプの振付にもチャレンジ

 

 昨シーズンのSP『ジプシーダンス』もフリー『007スカイフォール』も、ジャッジに向けてアピールするプログラムだった。樋口自身、振付には積極的に参加していくほうだという

 

 『選曲も、話し合いながら決めます。そして自分らしさを出せるようにというのは、特にSPでお願いして作ってもらいました』

 

 もっともフロアでのダンスは、決して得意ではない

 

 『手と足がばらばらになって、かっこ悪いダンスになってしまうので』と笑う

 

 『でもスケートでやろうと思うと楽で、結構楽しくできるんです』

 

 やはりスケーティングあってこその、自己表現だという

 

 今シーズンのプログラムの振付はまだこれからだが、SPはシェイリーン・ボーン、フリーは佐藤有香との初コラボを予定している。これから滑ってみたい音楽のタイプはと聞くと『ヒップホップとか、逆にバレエ音楽ではない普通の音楽のクラシックとかで滑ってみたいと思います』と幅広いカテゴリーに意欲を見せた

 

 樋口新葉の、新しい4年間への挑戦がいよいよ始まる