開放的なロビー。
異国の地に立った瞬間に感じた香りは、すでにしみついたはずだ。
その証拠に、通された部屋で開いたスーツケースからは、何かを意識させられる。

まずはバスタブ。
洗礼されたつくりの清潔感あふれるバスタブに、今夜の楽しみを思う。
浴びたいシャワーを耐えて、まずはホテルをぐるりと回る。
レストラン、バー、ライブラリー。

プールサイドバーに座り、ドリンクを注文する。
すぐには飲まず、グラスを眺め、ゆっくりひとくち。
グラスには水滴が滴る。
そこへ、程良い風が肌を撫でていく。
フライトの疲れは一気に吹き飛ぶ。

大きな息を吸い、ゆっくり吐き出す。

さて、リゾートの始まりだ。

ビーチに出る、或いは街へ繰り出す。
体がウソのように軽く、刺激をすべて吸収していく。

レストランを眺め、地元の人と会話を交わす。
日本に無いものを探し、日本にあるものを微笑む。
オーナメント、カトラリー、服や鞄、アクセサリーかもしれない。
少しの楽しみを残しつつ、ホテルへ戻る。

17時

ホテル内の動きはゆっくりし、部屋に戻り、先ほど我慢したシャワーを浴びる。
アメニティの香りを身に纏い、少しオシャレをして到着時に予約したレストランへ向かう。
海が見えるレストランかもしれない。
開放的なビュッフェかもしれない。
カジュアルなビストロかもしれない。

日本にはない雰囲気。
景色。
味。
盛りつけ。
音楽。
そのどれもに酔いしれていい。
充分に吸いこんでいい。
ここでは誰も遠慮はしないのだから。

沈みかけた夕陽が景色を照りつけ、真っ赤になる。

オイスターにレモンを絞る。
喉を通る瞬間、そのさわやかな果汁が体を包む。

いつまでもいたい。

そう思う。

何もしたくない。

そう思う。

きっとそれこそがリゾートなのだと思う。

xperiaで音楽を聴きながら、9月の晴天を歩いていた。

僕が初めて1人で三ノ宮へ来たのは、小学4年生の頃。
音楽を聴きだして、walkmanを片手に移動を覚えたのは、確か小学6年生の頃だった。

walkmanのメディアがカセットからCDに、CDからMDに代わっていくのと同じように、震災が起こり、マルイができ、ミント神戸ができた。
居留地は、一層洗礼され、僕はそんな街にもう20年いる事になる。

転勤族だった僕が初めて"自分の街"だと胸を張って言える場所だ。
駅の改札はあそこにあって、その信号は長く待たされる。
あそこに行くには地下をくぐった方が早いし、あのレストランは誰が行っても喜ぶ。

いくつものカフェに行き、服を買い、急いでいる時には走り抜けた。

知り合いができ、人が去り、また新しい人との出会いがある。

やっと大人になって、やっと街の顔がはっきり見えてきた。

今音楽はメモリースティックでもなければ、SDでもない。
google musicで自宅のPCに保存している膨大な曲が一瞬でxperiaに届けられる。
聴きたい時に聴きたいものが瞬時に手に入る。

buletoothを通して無線で耳に流れてくる音質は、以前のそれとそう遠くはない。

三ノ宮へ来る事の一大さは、昔とは大きく変わったけれど、見えてくるものはやっぱりどれも新しい。

15時。
ミント神戸から出ると、一気に体に熱気がまとわりついてきた。

たくさん巡ってきた、たくさん知っているはずの"秋"なのに、"毎年今年は"と言って巡ってくる。

上島珈琲の脇を通り抜け、駅へ向かおうとすると、ふと知った顔が近付いてきた。



「こんにちわ」

立ち止まり、サングラスを外したのは、タンカフェオーナーのタンさん。

「どうも。おひとりですか」
こう表現しては失礼なくらい、上手な日本語で僕に声をかけてくれる。

「また伺いますね」

「ぜひ」
そう言って、強く握手を交わした。

再び歩き始め、ポートライナーの改札を横切り、OPAへ向かう階段を降りようとすると、ふと秋を感じた。

なぜだかわからないけど、本当に僅かにそんな気がした。

それは街が僕に教えてくれたように思えた。

イヤフォンを外し、僕は晴天の中、駅へ向かった。



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