RPG成分が創作の意欲や心のオアシス、そして生きる活力になっているため、
成分補充を目論見、思い切って初めての「テイルズ」シリーズに手を出してみた。
そして選んだのは『テイルズ オブ ベルセリア』
この作品はシリーズ初の女性主人公が描かれ、とある悲劇によって家族を失ったベルベットが、導師アルトリウスへの復讐を目指すという、暗くも重厚な物語が展開される。
「危機感を煽りながらも、なんだかんだハッピーエンドに着地するRPG」を好みがちな自分にとって、
この重々しいあらすじや、どこか馴染みにくいと感じていた絵柄は、正直少し心配だった。
しかし、「女性が主人公のRPGに駄作なし」という勝手な法則を信じ、思い切って挑戦することにした。
結果は大当たり。本当に素晴らしい作品だった。
バンダイナムコゲームスの開発力には脱帽だ。グラフィック、サウンド、細部まで作り込まれたオブジェクト、洗練されたシステム、徹底されたデバッグ。その全てが高いレベルでまとまっており、クリエイターたちの情熱と技術が伝わってくる。
そして大企業の人海戦術の凄みを感じる。
物語作りの面でも、ただ驚かされるばかりだった。冒頭から結末までブレることなく貫かれた物語のコンセプト。設定の緻密さや伏線の張り巡らせ方、そして回収の巧みさ。
重厚なテーマを扱いながらも、仲間やサブキャラクターの絶妙な配置によって、
RPGならではの「冒険の楽しさ」を常に感じられる配慮がなされていた。こうした物語のクオリティとシステムの完成度が高次元で融合した作品は、そうそう味わえるものではない。
本作についての詳細はネタバレを避けたいが、間違いなく「アニメ調の絵柄」という第一印象にとらわれてはいけない、
非常に大人向けの作品だ。
プレイヤー自身がキャラクターを動かすことで、登場人物の心情や葛藤に深く寄り添える点が、
ドラマとは異なるゲームならではの魅力を強調している。
ベルベットをはじめとするキャラクターたちは、皆それぞれの信念や情念に従い、それゆえに衝突し、葛藤する。
正義と悪という単純な図式では片付けられない物語が展開される中で、
特にベルベットは壮絶な悲劇を経験しながらも、自分の信念と行動原則を取り戻し、
「自分らしく生きるとは何か」を示してくれる。
その姿は、「人生の舵を取り、決断することが生きることだ」というメッセージを胸に刻んでくれた。
また、登場人物たちはそれぞれ頑なだったり、理想に突き進む一方で、少しずつ成長し、心の柔軟さを身に付けていく。
その変化が非常に巧みに描かれており、物語に深みを与えている。
キャッチコピーである「君が君らしく生きるためのRPG」という言葉が、今では胸の中に一つの見識として刻まれている。
これほど深く心に響く作品はなかなか出会えない。
『テイルズ オブ ベルセリア』、非常におすすめの一作だ。
