『パパは、出張中!』『それから』『時代屋の女房』『肉体の門』『(ハル)』他、2023.12月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

これまでストーリーと撮影、音楽、出演者はあとで読み返した時に思い出せるように書いていましたが、今回は作品数が10本を超え、既に単独でブログに感想を書いている作品も数本あったので監督、原作者(がいる作品)のみ記載し、ストーリーも省略、感想も簡略にしました。

 

今年も当ブログにお付き合いいただき有難うございました。

来年も宜しくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

作品評価は★5つが満点 ☆は0.5点 外国映画、日本映画、

製作年度の古い作品順

 

『エデンの東』1955年(アメリカ)

監督 エリア・カザン 原作 ジョン・スタインベック

 

感想)これまで、日本語版の字幕ではキャル(ジェームス・ディーン)が双子の兄弟の弟のようになっていたが、本来はキャルが兄だったようだ。アーロン(リチャード・タヴァロス)

の恋人に扮したジュリー・ハリスは当年30歳だったそう。★★★★★

 

 

『逃亡地帯』1966年(アメリカ)

監督 アーサー・ペン 原作 ホートン・フート

 

感想)刑務所を脱走したロバート・レッドフォードの脱獄理由及び、どのような犯罪で逮捕されたかが不明瞭(日本語字幕なしで鑑賞)だったのと、脱走犯を庇護しようとする町の保安官マーロン・ブランドが主演だったため何かチグハグな印象を受ける作品だった。脚本はダシール・ハメットと交流があった女性脚本家(劇作家)のリリアン・ヘルマン。狂暴化した町の連中にさんざん殴り倒されたあとのマーロン・ブランドの腫れあがった顔が実にリアルだった。★★★★

 

 

 

『パパは、出張中!』1985年(ユーゴスラビア)

監督 エミール・クストリッツァ

 

感想)1950年のサラエボ、チトー大統領統治下の時代、愛人にふと漏らした国家批判の言葉が男と家族の運命を変えてしまう。クストリッツァに初めて出会ったのがこの作品。夢遊病者になって彷徨う6歳のマリク少年がせつない。★★★★★

 

 

『赤線地帯』1956年(大映)

監督 溝口健二 原作 芝木好子『洲崎の女』(一部)

 

感想)売春防止法が国会で審議されていた昭和30年代初めの吉原遊郭のお話し。娼婦それぞれが個別の事情や夢を持ちながら、ある者は夢破れ、ある者は息子に捨てられ発狂し、ある者は男たちを手玉に取ってたくましく生き抜いていく。事情があって店で客を取ることになった賄の少女のラストシーンが痛切。

★★★★★

 

 

『血は渇いてる』1960年(松竹)

監督 吉田喜重

 

感想)会社側と社員が集まった屋上集会で、首切り勧告に抗議して拳銃自殺を図る男。男を自社の宣伝広告に利用しようとする生命保険会社。ゴシップ週刊誌の悪徳カメラマン、狂奔するマスコミ報道。ねじれた現代の欲望がうごめく吉田喜重の問題作。

『夜のヒットスタジオ』の司会者のイメージが強い芳村真理が、女優として存在感を見せる。★★★★

 

    

 

 

『太平洋のGメン』1962年(東映)

 監督 石井輝男

 

感想)主演が江原真二郎で随分地味なキャスティングだと思っていたら、当初の企画では鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎などオールスターキャストで企画されたが、鶴田浩二の病気、健さんのスケジュール調整のアクシデントがあったりして江原真二郎の起用になったようだ。クラブのちょっと奇妙なホステスに扮した佐久間良子が新鮮。石井監督らしい切れのいいカッティングに痺れた。★★★★☆

 

 

 

『死闘の伝説』1963年(松竹)

 監督 木下恵介

 

感想)昭和20年8月、北海道大雪山系の寒村が舞台。

東京から疎開してきた一家と地元の開拓農民の間に起こる壮絶な闘い。閉鎖的な山村農民とそこで権力を持つ村長一族、よそ者として差別される疎開した家族。木下恵介監督にこういう作品があり、岩下志麻、加賀まりこ、田中絹代、菅原文太の共演作があったのも初めて知った。アイヌの民族楽器ムックリを使った音楽(木下忠司)も耳に残る。★★★★☆

 

 

 

『俺たちに墓はない』1979年(東映セントラルフィルム)

 監督 澤田幸弘

 

感想)松田優作が主演した『遊戯シリーズ』を彷彿とさせ、内容的にも似たような感触があるものの、シリーズ的なつながりは持っていないようだ。微妙に手触りが違うのはそれぞれ脚本を担当している永原秀一『最も危険な遊戯』丸山昇一『殺人遊戯』田中陽造(本作)という脚本家たちの個性の現れのように感じる。

この種の作品にありがちなストーリーとは言え、派遣デパート店員から徐々に堕ちていく竹田かほりの描写には田中陽造らしさが垣間見える。石橋蓮司はなぜか包帯と松葉杖がよく似合う。★★★★

 

 

 

『時代屋の女房』1983年(松竹) 

 監督 森崎東 原作 村松友視

 

感想)映画の後半に登場するアフロヘアの女性、美郷(夏目雅子二役)が、真弓の変装した姿なのではないかという疑念を前回観た際に覚えたが、今回再鑑賞すると全く見当違いであったようだ。当時流行していた中森明菜の『少女A』の替え歌を酔っぱらった夏目雅子が歌うシーンは何度みても笑える。都会に憧れ田舎を出てきて派手な遊び人のように見えても美郷のような隠れ○○は実際いても不思議でないだけに、安さんとの駅の別れのシーンはジーンときた。名古屋章、平田満、村瀬幸子が登場する盛岡のシーンも傑作。夏目雅子の二役が見れるこの作品は希少価値あり。★★★★★

 

 

 

『それから』1985年(東映)

 監督 森田芳光 原作 夏目漱石

 

感想)松田優作が夏目漱石原作の文芸作品に主演することに違和感を抱いた映画ファンは当時多かったと思うが、改めて鑑賞してみると先入観のない立場で無心に鑑賞すればその演技力の確かなことを認めないわけにはいかない。藤谷美和子に関しても同じような印象を持ち、それは監督の森田芳光に対しても言えそうだ。数日前、原作の『それから』を再読したが、映画は具体性を持つ映像表現とキャスティングの難しさ、時間的制約という様々な枷がある中でこの作品は原作を凌駕しているようにも思えた。

★★★★★

 

 

『肉体の門』1988年(東映)

 監督 五社英雄 原作 田村泰次郎

 

感想)昭和22年、秋、米軍占領下の東京新橋。

  

  「すさむ心でいるのじゃないが 泣けて涙も枯れ果てた

   こんな女に誰がした」

  

  かたせ梨乃と名取裕子のダンスシーンは『暗殺の森』の

  ドミニク・サンダとステファニア・サンドレッリに比肩

  すると言ったらバカにされるだろうか。

 

  爆風シーンの西川峰子(仁支川峰子)の顔が脳裏か  

  ら離れない。★★★★★

 

 

『(ハル)』1996年(東宝配給・光和インターナショナル)

 監督 森田芳光

 

感想)パソコン通信の映画フォーラムで知り合った(ハル)と(ほし)。(ほし)と名乗る男は実は盛岡に住むOLだっ

 た・・・・

 インターネットの時代を先取りした森田芳光の才気を感じる

 作品。深津絵里も内野聖陽も戸田菜穂も若い。         ★★★★☆