読書『地下室の手記』『賭博者』『怒りの葡萄』『飢餓海峡』他、2023.7~12月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

プロ野球シーズンが終了する(11月中旬)まで読書に集中できず7月以降に読んだ本は僅かです。内容も最近読んだもの以外ほとんど忘却しているため読んだ作品名のみ列挙し、最後に全体的な感想を記しています。

 

ドストエフスキー全集6  (新潮社)

【収録作品】

 冬に記す夏の印象 小泉猛訳

 地下室の手記   江川卓訳

 鰐                  原卓也訳

 賭博者                原卓也訳

 

 

 

 

『怒りの葡萄』上中下 ジョン・スタインベック (新潮文庫)

 

 

 

現代日本文學大系90  (筑摩書房)

島尾敏雄 小島信夫 安岡章太郎 吉行淳之介集

 

【収録作品】

 

『島尾敏雄集』 

夢の中での日常 徳之島航海記 われ深きふちより

死の棘 島へ

 

 

 

『小島信夫集』

小銃 吃音学院 殉教 馬 アメリカン・スクール

十字街頭 返照

 

 

 

『安岡章太郎集』

海辺の光景 ガラスの靴 愛玩 ハウス・ガード

サアカスの馬 驢馬の声 質屋の女房 家族団欒図 

 

 

『吉行淳之介集』

原色の街 薔薇販売人 驟雨 娼婦の部屋 不意の出来事

 

 

 

『安部公房』 新潮現代文学33  (新潮社)

【収録作品】

砂の女 密会 デンドロカカリヤ 赤い繭 詩人の生涯

無関係な死 棒になった男

 

 

 

『山月記 李陵』 中島敦 (新潮文庫)

【収録作品】

 山月記 名人伝 弟子 李陵

 

 

 

『女生徒』 太宰治 (角川文庫)

【収録作品】

灯籠 女生徒 葉桜と魔笛 皮膚と心 誰も知らぬ きりぎりす

千代女 恥 待つ 十二月八日 雪の夜の話 貨幣 おさん

饗応婦人

 

 

 

 

『飢餓海峡』上下 水上勉 (新潮文庫)

 

 

 

『世界遺産を旅する6』 近畿日本ツーリスト

日本・中国・大韓民国・東南アジア

 

 

 

感想)ドストエフスキー全集6

 

『地下室の手記』

ドストエフスキーの思想の根幹にある人間への深い洞察と人間の理性に対する懐疑が主人公(物語上の手記の筆者)を通して語られ、ドストエフスキー作品を理解する上で必読の作品に思えた。『鰐』は友人と一緒にアーケードに展示されている鰐を見物に行った男が、鰐に飲み込まれ鰐の腹の中で生活して行くことを余儀なくされるという奇抜なストーリーで、ドストエフスキーにこんな作品があったことに驚く。

 

スタインベック『怒りの葡萄』

1930年代の初め、土地を追われ南のカリフォルニアへの移住を余儀なくされる南部の貧しい農民たちの厳しい現実。

一握りの権力を持った富裕層たちによる土地や収穫作物の収奪。

ジョード一家の苦難の旅路を思うと贅沢を言っていられないと身にしみて感じる。ラストシーンの描写が感動的。

 

『現代日本文學大系90』

島尾敏雄、吉行淳之介は10代終わりから20代にかけて読んでいたが、安岡章太郎、小島信夫とは縁がなくこれまで読むことなく来てしまったが、どちらの作家も大変面白く、特に安岡章太郎の『海辺(かいへん)の光景』小島信夫の『アメリカン・スクール』(芥川賞受賞作)はこれからも何度も再読することになりそうな作品。

 

安部公房『砂の女・密会』

安部公房は20代から好きな作家で『砂の女』は久し振りに読み返したが、映画とは違うイメージが喚起され新鮮な気持ちで読了した。

『密会』は迷路に迷い込むような作品で(安部公房の多くの作品がそんな感じだ)村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を想起させる。迷路に迷い込むような安部公房の世界も好きだが、全く毛色の違う『榎本武揚』を再読したいと思った。

 

太宰治『女生徒』

14作品が収録されすべての作品が女性の一人称で書かれている。どの作品も本人にとっては切実な問題でありながら、他者の視点で見ると滑稽さを感じるものばかりで太宰の女心を読み取る感受性の繊細さとユーモアのセンスに驚嘆する。

『女生徒』『皮膚と心』『恥』『饗応婦人』が特に印象に残り『恥』には太宰の痛烈な皮肉が感じられた。

 

中島敦『山月記・李陵』

漢学の素養が無いと注釈を読みながらの読書になってしまうが、短編であっても書かれている内容は含蓄に富み、人間の本質や人生について考えさせられる。

 

水上勉『飢餓海峡』

読むのは二度目だが、社会派推理小説として大変読み応えがありこれからも何度も読み返したくなりそうだ。樽見京一郎(犬飼)に人間の業の深さを思う。

 

『世界遺産を旅する』

この本を読みながら、昔、ヴェトナムへ移住することを半分本気で考えていたことを思い出した。

中国の万里の長城の壮大さにはただただ言葉を失う。