『夜の蝶』『銀蝶渡り鳥』『欲望という名の電車』『グロリア』ほか、2022・12 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

星取りは観客目線からの満足度を基準にしています。

誤字、記憶違い、また皆様の評価と違う際はご容赦下さい。

★5が満点 ☆は0.5点

 

『夜の蝶』1957年

監督・吉村公三郎 原作・川口松太郎 脚本・田中澄江 

   撮影・宮川一夫 音楽・池野成

出演 京マチ子、山本富士子、船越英二、穂高のり子、山村聰、小沢栄太郎、川崎敬三、芥川比呂志、近藤美恵子 ほか。

 

 銀座のクラブのトップに君臨するマダム・マリ(京マチ子)に、京都から舞妓あがりの美貌のママ・おきく(山本富士子)が乗り込んできて銀座クラブ戦争の火ぶたが切られるが、マリにはおきくと京都時代の浅からぬ因縁があった。マリはおきくのパトロン(山村聰)を横取りしようとし、おきくは結婚を考え経済的支援を続けていた医師(芥川比呂志)に別の結婚相手がいたことを知らされて・・・大映二大女優の共演、凄惨なラストの幕切れ。事件の噂話もやがて絶えて、人は誰も厳しい現実と向き合う。川口松太郎の原作は実在した二人の銀座のママさんをもとに書かれたという。★★★★☆

 

 

『銀蝶渡り鳥』1972年

監督・脚本・山口和彦 脚本・松本功 撮影・仲沢半次郎  

   音楽・津島利章

出演 梶芽衣子、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、小山明子、南原宏治、

青柳三枝子 由利徹、円山理映子、フラワー・メグ、石井富子、園佳也子、丹羽又三郎、小林千枝、続圭子、五木ひろし ほか 

 

栃木刑務所を出たあと、銀座で夜の蝶に華麗なる変身。時に白いミニスカートの女ハスラー、沛然と降る雨の中、白い着物姿で仕込み傘片手に殴り込む女・ナミ(梶芽衣子)。銀座の夜の手配師に渡瀬恒彦、銀座の元夜の帝王に梅宮辰夫が扮してクラブママ・小山明子と熱い仲。悪党の親分に南原宏治、ヤク中のハスラーに丹羽又三郎。ナミと腕利きハスラー・三ッ玉の竜のクラブの権利書を賭けたビリヤードの勝負で、薬が切れ禁断症状を起こす丹羽又三郎の演技は笑いを誘う。血に染まった芽衣子と渡瀬がパトカーに乗せられ、白々明けていく銀座の朝、画面左手にリヤカーを引く屋台のオヤジの姿。山口和彦の細部に気を使った演出が憎い。梶芽衣子の魅力全開の快作で、梶芽衣子東映主演第一作。★★★★☆

 

 

 

 

『愛欲の罠(桃色の狼 朝日のようにさわやかに』1973年

監督・大和屋竺 脚本・田中陽造 撮影・朝倉俊博 

        音楽・杉田一夫

出演 荒戸源次郎、絵沢萠子、安田のぞみ、大和屋竺、中川梨絵

   港雄一、山本昌平、小水一男、秋山ミチヲ、山谷初男 他

 

殺し屋の星(荒戸源次郎)は、高川(大和屋竺)の依頼で組織の幹部を射殺するが、犯行現場に妻の眉子(絵沢萠子)と一緒に赴いたため組織に素性を知られ、高川から今度は眉子を射殺するよう指令される。ヒロインの絵沢萠子は良いが、主演の荒戸源次郎は状況劇場の俳優とはいえ演技がぎこちなく、中川梨絵も生かされていない(出演シーンは序盤の1分足らず。絵沢萠子の友情出演か?)田中陽造単独脚本のため同じ殺し屋をテーマにした大和屋脚本監督の『毛の生えた拳銃』『荒野のダッチワイフ』に比べ作品の質は大分落ちているように思われた。ポスターに中川梨絵のヌード詐欺はひどい。荒戸源次郎の天象儀館製作第一作。 ★★★★

 

 

『欲望という名の電車』1951年

監督・エリア・カザン 原作・脚本・テネシー・ウィリアムズ 脚本・オスカー・ソール 撮影・ハリー・ストラドリング

音楽・アレックス・ノース

 

出演 ヴィヴィアン・リー マーロン・ブランド キム・ハンター カール・マルデン

 

「「欲望」という電車に乗って、「墓場」という名の電車に乗り換え、「天国」という名の駅に下車・・・・・」

南部の裕福な農園で親の世話をしながら高校の国語教師をしていたブランチ(ヴィヴィアン・リー)は、ニューオーリンズのフランス街区に住む妹のステラ(キム・ハンター)を訪ねてくる。

ステラは久しぶりに再会した姉を歓迎するが、夫のスタンリー(マーロン・ブランド)はいずれ自分たちにも舞い込むはずの遺産が全て失われたと聞いてブランチに対し冷酷に振舞った。

スタンリーの賭博仲間で心優しいミッチ(カール・マルデン)と親しくなったブランチはミッチと結婚を考えるが、ブランチの故郷での評判を職場仲間を通じて知ったスタンリーはブランチの素性をミッチに話し、やがてブランチを精神的に追い込んでいく。

 

粗暴で野獣的なスタンリーによって次第に化けの皮を剝がされて、まるで『サンセット大通り』(ビリー・ワイルダー監督)のグロリア・スワンソンを彷彿とさせる狂気に進んで行くヴィヴィアン・リーの演技がモノ凄い。映画の脚本も原作者のテネシー・ウィリアムズが書いているが、映画では大分ボカした表現(描写)もあり(制作当時の映画コードの問題などか)、観る側が想像力で補う必要もありそう。ヴィヴィアン・リーの演技が演劇的でオーバー過ぎるという感想もあるが何とも言い難い。アカデミー賞主演女優賞、マッチ役のカール・マルデンが助演男優賞受賞★★★★★

 

 

『ゴッドファーザー』1972年

監督・脚本・フランシス・フォード・コッポラ  原作・脚本・マリオ・プーゾ 撮影・ハリー・ストラドリング        音楽・ニーノ・ロータ

 

出演 マーロン・ブランド アル・パチーノ ジェームズ・カーン ロバート・デュヴァル ダイアン・キートン ほか。

 

何十年振りかで再見した。観たのは約3時間近い175分版だが、正直中だるみ(三男のマイケル(アル・パチーノ)がイタリアに逃亡して土地の娘と結婚するまでのエピソードなど)があって、あと30~40分くらいは切って2時間20分前後にまとめたらもっと引き締まって良くなったのではないかと思えたが、コッポラは当初125分として編集していたらしい。それが、製作会社のパラマウントから「これでは予告篇だ。もっと長くしろ」と言われて175分の長さになったようだ。逆のケースはしばしばあるだけになんとも不思議な判断だ。内容については長くなるので書けないが、ラストのダイアン・キートンのあの表情がこの作品の全てを凝縮しているように感じられた。

アメリカ版『仁義なき戦い』と言っては失礼だろうか。★★★★★

 

 

 

 

『グロリア』1980年

監督・脚本・ジョン・カサヴェテス 撮影・フレッド・シュラー 音楽・ビル・コンティ

 

出演 ジーナ・ローランズ、バック・ヘンリー、ジュリー・カーメン、ジョン・アダムズ 他

 

ニューヨーク・サウスブロンクスのアパートで起きたプエルトリコ人一家惨殺。生き残った6歳の少年と謎の女グロリアが”組織”に追われ、奇妙な逃避行が始まる。(ぴあ シネマクラブより引用)オープニングのニューヨークの空撮シーンで野球ファンなら(特にメジャーリーグのファンなら)ヤンキー・スタジアムが登場したところで心が高鳴ったのではないだろうか。こんなヤバイ所でメジャーリーグの選手たちはゲームをしているのか。

グロリアも相当危険な女だ。マフィアのボスの元情婦で、ショーガールだった過去。付けられた名前がグロリア・スェンソン(人気女優グロリア・スワンソンのもじり)で笑ってしまう。テレビで射殺事件のニュースを見ていたグロリアも自分の名前が紹介される所で笑っていた。元祖ニューヨーク・インディーズの監督ジョン・カサヴェテスが妻のジーナ・ローランズで娯楽に徹して徹底的に楽しんで作っているように感じられる。

グロリアと逃避行を共にするフィルという6歳の少年も大人びて、グロリアが敵を射殺するシーンでは東海林太郎のように直立不動の姿勢で見守っている。逃避行にエマニュエル・ウンガロのきらびやかな装いのグロリア。ラストの墓場での再会は、前半の伏線を忘れているとやや困惑しそう。ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)受賞。★★★★★