『ひまわり』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督 1970年) | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『ひまわり』(監督・ヴィットリオ・デ・シーカ 脚本・チェザーレ・ザヴァッティーニ アントニオ・グエラ ゲオルギ・ムディバニ 撮影・ジュゼッペ・ロトゥン 音楽・ヘンリー・マンシーニ 伊・仏・ソビエト・米 合作 1970年)

 

出演・ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サべーリエワ、アンナ・カレーナ 他。

 

ジョバンナ(ソフィア・ローレン)のもとに夫のアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の行方不明通知が届いた。

 

貧しいお針子のジョバンナ(ソフィア・ローレン)と電気技師アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はナポリの海岸で出会い恋に落ちる。第二次世界大戦中さなかの出来事だった。アントニオは兵士としてアフリカ戦線行きを控えていた。結婚すれば12日間の休暇が貰えることから二人は結婚届を出したが、アッと言う間に時は過ぎる。二人は一計を案じアントニオが精神病者の振りをしてジョバンナを街中で追い回し懲役を逃れようとする。いったんは上手く行ったように見えたがすぐに露見してしまい、アントニオはソビエト戦線に送られた。

 

アントニオの行方不明が信じられないジョバンナはミラノに帰って来た復員兵からアントニオとは同じアルプス隊にいて、アントニオはソビエト戦線の雪の中で行き倒れになったと知らされた。ジョバンナはモスクワに向かった。役人の案内でウクライナの首都キエフ近くのひまわり畑を訪れた。そこはロシア人捕虜とイタリア兵が眠る広大な墓地だった。ジョバンナにはアントニオが死んだとは思えなかった。アントニオの写真を持って町や村を訪ね歩くジョバンナ。とうとうアントニオの居所を探しあてるジョバンナ。案内されたその家の庭には洗濯物を干している若いロシア人女性・マーシャ(リュドミラ・サべーリエワ)の姿があった。

 

ジョバンナにマーシャの話す言葉は通じなかったが、部屋に通された時ベッドに並んだ二つの枕と幼い子供の姿を見てすべてを悟った。工場から帰って来るアントニオが乗った列車が到着した。迎えに行ったマーシャが列車から降りてきたアントニオにホームにたたずむジョバンナを指さす。アントニオを見ていたたまれず走る列車に飛び乗るジョバンナ。イタリアに帰ったジョバンナは部屋にあったアントニオの写真を破り捨てる。時が過ぎ、アントニオの一家は高層アパートに引っ越すが、マーシャに話しかけるアントニオの姿はなかった。

 

マーシャに勧められアントニオはイタリアにいるジョバンナを訪ねた。ジョバンナは会うことを避けるがアントニオの思いが通じたのかジョバンナはアントニオに会うことにした。雪に埋もれ記憶を失った自分をマーシャに助けられたこと、今でもジョバンナを愛していることを伝えた。心の奥底にあるアントニオへの愛はジョバンナも変わらずにいたが、ジョバンナには夫も子供もいた。歳月の経過は人の心も生きていく事情も変える。出会った頃にはもう戻れないことをジョバンナもアントニオも理解した。兵役に行くアントニオを見送ったミラノの駅。再会することはもうないだろう。

 

戦争によって引き裂かれる男女の悲劇を描いた作品は古今東西数ある中で、イタリアを代表する作品と言えばこの『ひまわり』が挙げられる。(他にクラウディア・カルディナーレ、ジョージ・チャキリス主演の『ブーベの恋人』ジェラルディン・チャップリン、ニーノ・カステルヌオーヴォ共演の『悲しみは星影と共に』なども主題曲を含めた名篇) フランスではカトリーヌ・ドヌーヴ主演、ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘』 アメリカ映画ではハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン共演の『カサブランカ』 ウィリアム・ホールデン、ジェニファー・ジョーンズ共演の『慕情』が思い浮かぶが、いずれの作品も主題曲との相乗効果で名作として記憶に残る作品になっている。ヘンリー・マンシーニが音楽を担当したこの『ひまわり』も、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニというイタリアを代表するスターの名演と巨匠ヴィットリオ・デ・シーカの繊細な演出で映画ファンには忘れられない名作となった。広大なひまわり畑はウクライナで撮影されたもの。☆☆☆☆☆(☆5が満点)