『ともだち』『パッチギ!』『狂った野獣』『八月の濡れた砂』他、2021・10 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 8月中旬頃からパソコンが不調でアメーバブログにログイン出来ない状態が続いていましたが、初期化して漸くログインできるようになったのでお知らせいたします。まだスムーズな入力が出来ない状態なので(文字の入力に恐ろしく時間がかかる)去年の今頃鑑賞していた映画の感想を書いた記事を再掲載しました。 出来れば11月頃から本と映画鑑賞記録の記事を再開したいと思っています。(2022 10.20)          

 

最近鑑賞した映画の備忘録的印象記です。私的観点による評価の為皆様の評価と異なる際はご容赦下さい。今回鑑賞した作品はすべてYouTubeで鑑賞した作品で、取りあえず観た作品を記録しておかないと本数が溜まった際に書く意欲を失くしてしまうので、ほぼ一週間単位で区切り、再見後の訂正(記憶違い等)は随時行い、特に詳しい感想を書きたい作品はその都度取り上げていく予定です。 ☆5が満点 ★は0.5点                                                 

 

『ともだち』(監督・澤田幸弘 脚本・勝目貴久 1974年) 

 

家の事情で岩手県から神奈川県川崎市に転校してきた小学6年の少女が、喘息持ちであることから(川崎に引っ越してきてから喘息に)クラスで孤立するが、教師(地井武男)やサッカー好きの少年らに励まされ、やがてクラスメートたちと理解し合うようになっていく。日活児童映画は1970年代から1990年代初めにかけて年間1本のペースで制作され、非劇場映画として主に公民館、学校などで上映されたが、これはその第2作目にあたる作品。公害問題がテーマとして取り上げられ、澤田幸弘監督とは日活ニューアクションで組んでいる地井武男が主人公の担任教師、映画デビュー間もない松田優作が給食センター(弁当屋)の従業員、本格映画デビュー前の原田美枝子が少年の姉役で出演しているのも見どころ。☆☆☆☆ 

                                                                                   

 

『四年三組のはた』(監督・藤井克彦 脚本・勝目貴久 1976年)

 産休で学校を休むことになった若い担任教諭(立石涼子)の代理でやってきたおばさん先生(南美子)の厳しい指導に反発しながらも次第に親しみを感じ、クラスメートへの誤解が溶けていく中で成長していく児童たちの姿を通して子供が生まれることの不思議、親と子供、親と教師たちの関わりの大切さを描いた日活児童映画の第4作。にっかつロマンポルノ作品でも活躍した藤井克彦監督の達者な演出。☆☆☆☆ 

                                                                      

 

『夏の庭 The Friends』(監督・相米慎二 脚本・田中陽造 1994年) 

大阪の小6のサッカー少年3人組が近所の廃屋に住む老人(三国連太郎)に興味を持ち、老人が死ぬところを見届けようと見張り、老人の外出先を付け回す。やがて老人とも打ち解けて、雑草が生いしげった庭の草刈りをしてコスモスの種をまいた。得体のしれない正体不明の老人への好奇心が少年たちを真夏の不思議な出会いに導いていく。☆☆☆☆ 

                                           

 

『夏時間の大人たち』(監督・脚本 中島哲也 1997年) 

 

鉄棒の逆上がりが出来ないことを先生にとがめられた小学校四年生のたかし(日高圭智)は、交通事故以来無気力になっている父(岸部一徳)や、電気店の仕事を手伝いに来た従姉(島村千草)テレビのよろめきドラマに熱中している母(菜木のり子)クラスメートで思いを寄せる女の子らに接するなかで、人生のさまざまな疑問に思いをはせる。小学生の本音、大人の本音が詰まった、中島哲也の隠れた傑作。☆☆☆☆☆ 

                                               

 

『うみ・そら・さんごのいいつたえ』(監督・椎名誠 1991年) 

夏休み、東京から母(余貴美子)の生まれ故郷の沖縄にやってきた少女(本名陽子)が地元の少年たちと交流しながら、かけがえのないひと夏の思い出を胸に抱いて東京へ帰っていく。

父とうまくいかず里帰りした母、温かく迎えてくれた祖母や祖父、地元の人々との出会いの中でちょっぴり大人になっていく少女の姿を沖縄の海の印象的な碧さとともに描いている。

椎名誠の脚本、演出はプロの目からは色々欠点を指摘されそうだが、肝心なところを外した素人っぽさが却って新鮮にも感じる。☆☆☆☆                                                                                           

 

『ドンマイ』(監督・神山征二郎 原作・脚本・新藤兼人 1990年)

 わけあって瀬戸内海の因島から東京の下町にやってきた母(桃井かおり)と小学校6年の息子(池上竜馬)。下町の弱小少年野球チームの関係者に才能を見い出された息子はチームに入るよう勧められるが母親は頑として受け入れない。少年野球チームの監督を演じている永島敏行は市立千葉高校時代は高校球児だった。娯楽映画の要所をおさえ、脇役一人ひとりの見せ場にも配慮を怠らない新藤兼人の心憎いばかりの脚本。監督は近代映協系の神山征二郎。☆☆☆☆  

  

                              

 

『スパルタ教育 くたばれ親父』(監督・舛田利雄 原作・石原慎太郎 脚本・中野顕彰 佐治乾 1970年) 

プロ野球の審判員(石原裕次郎)が主人公という珍しい作品。

安月給で5人の子をもち3DKの公団暮らし。試合では微妙な判定で選手や監督にどつき回される。休日に遊びに連れて行ってもらえない子供たちは不満が爆発して団地内で大暴れ。バリケードで学校封鎖した高校の学園紛争、終盤には暴走族が家の中に入り込んでオートバイで暴走したりで時代を感じさせる。

石原裕次郎、若尾文子の共演は最初で最後?☆☆☆☆ 

                                      

 

『独立少年合唱団』(監督・緒方明 原作・脚本・青木研次 2000年) 

1970年代初め、群馬県の山間にある全寮制の私立中学校が舞台。父親を亡くした少年(伊藤淳史)はこの中学校に入り吃音のためにイジメにあうが、歌をうたっている時にはどもらないことを音楽教師(香川照之)に指摘され、合唱部に入部して同じ合唱部のクラスメート(藤間宇宙)と親交を深めていく。昭和30年代の映画を思わせる緒方明の演出にはやや退屈感があるが、主人公をみつめる目は確かで、爆弾闘争で指名手配になった過激派が登場する辺りは1970年代初めという時代性を感じさせる。☆☆☆☆☆                                                                  

 

『パッチギ!』(監督・井筒和幸 脚本・羽原大介 井筒和幸 2005年) 

1968年、京都の不良高校生と朝鮮高校の不良高校生たちの凄まじく痛ましく時に滑稽な暴力抗争、京都の気弱な高校生と朝鮮学校生徒の恋愛、朝鮮(韓国)と日本の間にある埋めることのできない溝の深さ。主題曲「イムジン河」に加え、沢尻エリカ、

高岡蒼佑、桐谷健太、オダギリジョー、真木よう子、江口のりこ、小出恵介らの若い時の姿に出会えるのもこの作品の魅力。☆☆☆☆☆ 

                                                           

 

『オイディプスの刃』(監督・成島東一郎 原作・赤江瀑 脚本・中村努 成島東一郎 1986年)

稀代の刀剣をめぐり複雑な家族関係が絡み合い生みだされる悲劇。大筋は理解できたが、現実と想像、妄想などが入り交じり、一度の鑑賞で完全に理解するのは私の理解力では困難だった。

古尾谷雅人の力演、五月みどり、佐藤友美の色香が見どころ。☆☆☆☆ 

 

                                                                                               

 

『旅立ち~足寄より~』(監督・今井和久 脚本・鴨義信 2009年) 

松山千春の自伝的小説の映画化。「全国フォーク音楽祭 北海道地区大会」の審査員だった地元ラジオ局のディレクター(萩原聖人)が、音楽以外の問題で落選になった千春(大東俊介)の音楽的才能を認め、ときにぶつかり合い反発し合いながら、やがて強い絆で結ばれていく。シンプルで直線的な構成だが、作り手が届けたいテーマは確かに伝わってきた。千春の父親役で泉谷しげる、姉役で尾野真千子が共演。☆☆☆☆                                                          

 

『ボディーガード牙 必殺三角飛び』(監督・鷹森立一 脚本・中西隆三・鷹森立一 1973年) 

オープニングタイトルバックの石橋雅史の志穂美悦子への目潰し、ラストの郷鍈二の千葉真一への目潰しが強烈。内容に目新しさはないが、ボス系三悪人が大島系の戸浦六宏、日活系の深江章喜、東映系の室田日出男というひねりを利かせたキャスティングにヒロイン水原麻記が妙味。☆☆☆★ 

                                                                            

 

『狂った野獣』(監督・中島貞夫 脚本・大原清秀 関本郁夫 中島貞夫 1976年) 

銀行強盗に失敗した2人組(川谷拓三・片桐竜次)が路線バスを乗っ取り京都の町を暴走する。乗り合わせた十数人の客の中にサングラスをかけ、楽器ケースを抱えた怪しい男がまぎれていた・・・。一歩間違えば大惨事必至という信じられないような作品。この脚本を書いた大原清秀、関本郁夫、中島貞夫、バスの乗客として出演した俳優諸氏、この企画にゴーサインを出した

東映、監督の中島貞夫みんな狂っている。「映画は狂気の旅である」と看破した今村昌平の言葉はけだし名言。志賀勝のチンドン屋はケッサク。☆☆☆☆☆ 

                                                                                        

 

『八月の濡れた砂』(監督・藤田敏八 脚本・峯尾基三・大和屋竺・藤田敏八 1971年)

朝もやに包まれた湘南の砂浜、人々であふれた昼間の喧騒、夕闇が落ちた夜の海辺。大人になることはこんなに虚しく悔恨だけが残るのか・・・。制作から半世紀が過ぎてもなお色あせない新鮮さ。邦画で一番鑑賞回数が多いのがおそらくこの作品。広瀬昌助も渡辺文雄も地井武男も原田芳雄も山谷初男も八木昌子も大和屋竺も藤田敏八も、もういない。~あの夏の光と影はどこへ行ってしまったの~。☆☆☆☆☆