『約束』『遠雷』『新極道の妻たち 覚悟しいや』『蛍川』『転々』他、2021.10月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 今週観た映画の備忘録的感想ブログです。数年前、数ヶ月前に複数回鑑賞した作品がほとんどですが、(『半落ち』『赤と黒の熱情』のみ初見)直近1回の鑑賞と記憶力低下で、記憶違いがあると思われますのでその点は御了解お願い致します。作品評価は観客目線で見た私的満足度が基準で皆様の評価と異なる際は御容赦下さい。☆5が満点 ★は0.5点。                                                                                                                                

『約束』(監督・斎藤耕一 1972年)

酒乱の夫殺害で7年の実刑判決を受け、名古屋の刑務所に服役中の女囚(岸恵子)が模範囚の恩典で亡き母の墓参りと服役中の女囚から託された手紙を届けるため女性看守員付きで外出を許され日本海を走る列車に乗っていた。女は目の前の座席に乗り込んできた若者(萩原健一)とやがて心を通わせ、2年後の出所後の再会を約束するが・・・

石森史郎の脚本、坂本典隆の撮影、岸恵子、ショーケンの演技が素晴らしい。韓国映画のリメーク作品とは意外。☆☆☆☆☆ 

 

 

                                                                『赤と黒の熱情』(監督・工藤栄一 1992年) 

組織を裏切り三億の金を奪ったダチ(柳葉敏郎)を射殺し、記憶喪失になったその妹(麻生祐未)を世話する男(陣内孝則)と

その仲間たち。金を奪い返すため手段を択ばない組織のボス(古尾谷雅人)の冷酷非道な仕打ち。オープニングからいきなりクライマックスのようなシーンを使う野沢尚の脚本。

<新感覚のやくざ映画>というふれこみで、工藤栄一監督らしい映像は見られるが、ラストに及んでも一向に盛り上がらないのはどうしたものだろう。麻生祐未、室田日出男、余貴美子の演技はそれぞれ楽しめたのだが・・・・ ☆☆☆★

 

 

                              『『半落ち』(監督・佐々部清 2004年) 

認知症の妻を殺したことは認めたが、自首するまでの空白の二日間についての行動を偽り、頑なに口を閉ざす男(寺尾聰)。

元警察官の男が守ろうとしたものとは一体何だったのか? 

横山秀夫原作で直木賞候補にも挙がったが、現実的な箇所で決定的な誤りがあり受賞が見送られたといういわくつきの作品。

裁判シーンの若手裁判官(吉岡秀隆)の台詞、演技、空白の二日間の真実、エンディングテーマの絶叫調の森山直太朗の歌に違和感を覚えた。この作品が日本アカデミー賞最優秀作品賞?☆☆☆★                       

 

 

                                                                        『白昼の無頼漢』(監督・深作欣二 1961年) 

『誇り高き挑戦』の佐治乾脚本×深作欣二監督コンビによるニュー東映の最期を飾るギャングアクション映画の傑作。

8人の男女の中で最も金に無頓着だった中原ひとみ一人が最後に生き残る。金への凄まじい執念と色と欲が絡んだ虚々実々の騙し合い。☆☆☆☆☆ 

 

 

                                              『新・極道の妻たち 覚悟しいや』(監督・山下耕作 1993年) シリーズ第6作。組長(梅宮辰夫)の危機を救いムショに入った姐(岩下志麻)が出所して一人香港へ。そこで知り合い一夜を共にした男(北大路欣也)は名うての殺し屋だった。

志麻姐さんのベッドシーンがあるのはシリーズ中この作品だけだったはず。☆☆☆☆★  

 

 

 

                              『セーラー服と機関銃』(監督・相米慎二 1981年) 

アイドル映画でこんなシュールな脚本が書けるのは田中陽造以外に思い浮かばず、アイドル映画でこんなに型破りでヴィヴィッドで奇天烈な演出ができる監督は相米慎二以外に思い浮かばない。クレーンで吊り下げられセメント漬けにされるアイドル!。

登場人物の誰もがスクリーンに息づいている。ラストの薬師丸ひろ子はビリー・ワイルダー『七年目の浮気』へのオマージュ?☆☆☆☆☆ 

 

 

                                                                     『OH!タカラヅカ』(監督・小原宏裕 1982年) 

女だらけの島<宝塚島>の女子高校に赴任した新米教師が巻き起こす大騒動。丹野雄二監督『ハレンチ学園』をしのぐ、タカラヅカ女子高校のハレンチぶり。ナンセンスロマンポルノの傑作。

美保純のファンなら『ピンクのカーテン』とこの作品は必見。☆☆☆☆★ 

 

 

 

                               『遠雷』(監督・根岸吉太郎 1981年)

宇都宮近郊の大型団地に隣接したトマト栽培のビニールハウス。新鮮なトマトを安く分けて欲しいと団地の主婦がやって来て、満夫(永島敏行)はそこでカエデ(横山リエ)という子持ちの女と知り合い夜のビニールハウスでセックスをした。翌日カエデの浮気に気付いた旦那(蟹江敬三)がハウスにきて満夫にくぎを刺す。母親の勧めで見合いをした満夫はすぐに見合い相手の女(石田えり)をモーテルに誘う。満夫の幼馴染の土木作業員・広次(ジョニー大倉)はカエデとできて100万円を持って姿を消した。地方都市の再開発で農地が買い上げられ大型団地や商業施設が次々に建設されていく中、時代の流れに逆らうようにビニールハウスでトマト栽培を続けようとする若者夫婦。永島敏行の認知症の祖母役で原泉が怪演。☆☆☆☆☆  

 

 

                                                                              『新・極道の妻たち 惚れたら地獄』(監督・降旗康男 1994年) シリーズ第7作。対立する大組織と構成員300人足らずの老舗暴力団の全面抗争。組長の姐(岩下志麻)に付き従う四人衆(山下真司・世良公則・清水宏次朗・小西博之)とその妻たち(斉藤慶子・川島なお美・海野圭子・中野みゆき)のそれぞれの生き様、死にざまが見どころ。☆☆☆☆

 

 

                            『螢川』(監督・須川栄三 1987年) 

昭和37年冬から翌年初夏の富山が舞台。

中学2年の竜夫(坂詰貴之)は家の没落と父(三国連太郎)と母(十朱幸代)のわけありな過去、幼馴染の同級生(沢田玉恵)への思いや思春期の性の目覚めに悶々とした日々を送っていた。

ある日親友の関根が川で溺れ死に関根の父親(川谷拓三)は発狂して精神病院に送られ、脳梗塞で入院していた父も死に、母の兄(河原崎長一郎)が住む大阪に引っ越しの話が持ち上がる。

富山という地方都市を舞台にして方言が生き、人生への深い洞察に満ちたノスタルジックな情緒が匂い立つ佳篇。ラストは特撮によりかかりすぎてファンタジー映画のようになってしまいテーマが十分表現し切れないまま終ってしまったのが残念。

宮本輝芥川賞受賞作の映画化。☆☆☆☆★  

 

 

                                                            『転々』(監督・三木聡 2007年)

84万の借金をかかえた大学8年の男・竹村(オダギリジョー)は、借金を返す当てもなく、妻を殺して自首するという借金取りの男・福原(三浦友和)に警視庁がある霞が関までの散歩に同行すれば100万をあげると言われて渋々付き合うことになった。行く先々で奇妙な人間たちとシュールな出会いが待っている三木聡監督お得意のナンセンス系脱力映画。ふせえり、岩松了、松重豊ら常連組に小泉今日子、吉高由里子が共演。この作品に何か深い意味を見い出そうとしても徒労に終わりそうだが、かけがえのない何気ない日常に心癒され、三木聡のセンスに感応できるセンスを持ち合わせた人にはたまらない映画。☆☆☆☆★