『下女』『天使のはらわた 赤い眩暈』『新極道の妻たち』『夜のダイヤモンド』他、2021.10月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 鑑賞した映画の中で感想を記事にしたい作品が何本かありましたが、記事にするには数回鑑賞しなければならず、その間に観た映画も増え続け、先延ばししているうちに感想を書く意欲も無くなっているという悪循環になっているので、しばらくは以前書いていた「最近観た映画」という形で備忘録として簡単な感想を残して置こうと思います。ここ1か月くらいの間に観た映画ですが、本数も20本近くあるので詳しいスタッフ、キャストは省略し製作年度と監督名のみになっています。私的満足度が評価の基準のため皆様の評価と異なる際はご容赦下さい。(星取りは☆5が満点、★は0.5点)

 

                                                     

『乱』(監督・黒澤明 1985年)  

「リア王」と毛利元就の「三子教訓状」をもとにし、黒澤明晩年の最高傑作の一本と言われているそうだが、騎馬隊の戦闘シーンや衣装、美術に目を見張るものがある一方、ドラマ部分に深みがなく主人公の仲代達矢に付き従うピーターの存在も活きているようには思えず傑作という評価に疑問。(☆☆☆★)

 

 

                                      

『下女』(監督・キム・ギヨン 1960年) 

一部では韓国映画の最高傑作と呼ばれる作品。

新東宝映画と石井輝男のグロさを混ぜ合わせたような奇怪な作品で、ラストのどんでん返し?には失笑か喝采か。(☆☆☆☆☆)

 

 

 

 

 

 

                                       『ハウスメイド』(監督・イム・サンス 2010年) 

『下女』(キム・ギヨン)をもとに、現代風にアレンジした韓国映画。主人の子供を妊娠したハウスメイドの逆襲劇だが、残念ながらオリジナルほどの毒とユーモア?には及ばず。(☆☆☆★)

 

 

                                        

『タクシー運転手~約束は海を越えて~』(監督・チャン・フン 2017年) 

1980年5月、ソウルのタクシー運転手(ソン・ガンホ)は、溜まった家賃の支払いと娘のために民衆運動で軍による厳戒態勢が敷かれた光州をめざす。ソン・ガンホの個性が光る一篇。(☆☆☆☆)

 

 

                                                                                                 

 『光州5・18』(監督・キム・ジフン 2007年) 

『タクシー運転手~約束は海を越えて~』と同じく、「光州事件」が起きた1980年5月の光州でタクシー運転手として働く男を主人公に据え、その弟、病院勤務の看護師へのほのかな思慕を織り交ぜながら「光州事件」を庶民の視点に立って描いている。(☆☆☆☆)

 

 

                                                     『『明日へ』(監督・プ・ジョン 2014年)

韓国で実際に起きた実話をもとに、非正規雇用で働くショッピングセンター労働者たちの不当解雇への戦いを描く。(☆☆☆☆)

 

 

                                                                 「『オールド・ボーイ』(監督・パク・チャヌク 2003年) 多弁で減らず口ばかりたたいていた男がある日誘拐され15年間の監禁生活を送ることになった。ようやく娑婆に出てきた男はこの出来事の真相を探るため手を尽くすが、やがて思いもよらない真実に遭遇する。<口は災いのもと>という言葉を今一度考えさせられる。他人や他国の悪口ばかり言っている人には教訓になりそうなパク・チャヌクの復讐劇。(☆☆☆☆☆)

 

                    『昼下がりの情事 古都曼荼羅』(監督・小沼勝 1973年) 古都京都を舞台に繰り広げられる男と女の曼荼羅模様。

初期日活ロマンポルノの傑作。主人公に風間杜夫、ヒロインに

山科ゆり。坂本長利、宮下順子が共演。脚本中島丈博。(☆☆☆☆★)

 

                                                                                            『ルージュ』(監督・那須博之 1984年) 

石井隆の原作、脚本で主人公の名前も『天使のはらわた』シリーズと同じ名美と村木だが、演じているのが新藤恵美と火野正平というところがミソ。この二人ではやや大物感があり過ぎ、那須博之の演出もイマイチ。(☆☆☆★)

 

 

                                                           

『極道の妻たち 三代目姐』(監督・降旗康男 1989年) シリーズ第三作。三田佳子、萩原健一の共演で成田三樹夫と三つ巴の演技合戦が見どころ。アンナ・バナナが歌うエンディングテーマもいい。(☆☆☆☆★)

 

 

 

                                 『覗かれた情事』(監督・西村昭五郎 1972年) 

官能作家の妻(白川和子)が夫の書いている小説の内容も知らず友人の誘いで秘密の快楽に目覚める。中島丈博らしいドロドロした内容の愛憎劇。(☆☆☆☆)

   

   

                                                                      

『たそがれの情事』(監督・西村昭五郎 1972年)

 有名カメラマンの貞淑な美人妻が、街に買い物に出かけた時にヤクザに目を付けられ帰宅後襲われる。初めは拒否していたが次第に男に惹かれ始めるという内容は、気持ちの変化を丹念に描き込まなければ所詮男の妄想の域を出ず、果たしてこの作品は成功していただろうか。ひと言も話さなくなった夫と見る寂し気なラストの情景は良かったが・・・中島丈博と西田一夫の脚本力の差を感じた。(☆☆☆)

 

                                                      『極道の妻たち 最後の戦い』(監督・山下耕作 1990年) やくざの姐かたせ梨乃の妹石田ゆり子に惚れるが、「あんたみたいなチンピラヤクザなんてまっぴらや!」と言われて暴走する

哀川翔が哀しい。(☆☆☆☆)

 

 

 

                                  『天使のはらわた 赤い眩暈』(監督・石井隆 1988年) 自身の原作、脚本による石井隆の監督デビュー作。

その後の石井隆の監督作に共通する要素がこの作品にほぼ詰まっているという意味で石井隆のファンにとって必見作。

名美が強姦されかかった村木に心を開いてゆく辺りの描写がやや強引で描写不足に感じるが、これはロマンポルノ作品の時間的制約も関係があり割り引く必要もありそう。ラスト近く柄本明に理不尽に射殺されるシーンは北野武的虚無感が漂い、死んだ村木の魂が浮遊して廃墟にいる名美のもとに辿り着くキャメラワークが素晴らしい。オーラスの「テネシーワルツ」にはやや白けたが「マッ、イッカ」(☆☆☆☆)

 

 

 

                                『新極道の妻たち』(監督・中島貞夫 1991年) 

ヤクザとは知らず身体を許し、翌朝男の背中一面に彫られた刺青を見て恐怖に泣き叫ぶ海野圭子が超リアル。

若(高嶋政宏)の暴走を抑える綿引勝彦の姿がいじらしく、中島貞夫らしいアクションの冴えが見え、マシンガンを乱射する本田博太郎、ラストの志麻姐さんも見事に決まっている。アクション映画にも定評がある女性脚本家・那須真知子ならではの『新極道の妻たち』。(☆☆☆☆★)

 

 

                                                                                           『スリ』(監督・黒木和雄 2000年) 

伝説のスリ師(原田芳雄)と長年来の顔馴染みで今も追い続けている刑事(石橋蓮司)。幼い頃両親に棄てられ面倒を見てくれた原田に恩義を感じアル中の原田の世話をする若い娘(真野きりな)。男にだらしない母親(伊佐山ひろ子)を軽蔑し、原田に弟子入りする若い男(柏原収史)。断酒会の主催者で元アル中の女(風吹ジュン)、恋人に振られて暴れまわる断酒会の青年(香川照之)。人生に傷を持つ男と女がめぐり逢い、傷つけあいながらやがてささやかな希望の光を見いだして・・・

原田芳雄と石橋蓮司、風吹ジュンの掛け合いが絶品。(☆☆☆☆☆)

 

 

                                                                 『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(監督・行定勲 原作・井上荒野「つやのよる」2012年)

映画のタイトルがテレビドラマのようでポスターも内容とかみ合わない違和感。主演級の女優をゴージャスに配したのが何とも勿体なく、野波麻帆と真木よう子のエピソードは無くてもよかったのでは。それでなくとも2時間18分は長すぎ、つやを媒介にした女たちの物語がどれも中途半端で、つやや阿部寛の人物像が言葉だけのものになっているのが惜しい。風吹ジュンと忽那汐里、大竹しのぶ母娘のエピソードはしみじみとして好感。(☆☆☆☆)

 

         

                                                                   『多羅尾伴内』(監督・鈴木則文 1978年) 

人気アイドル歌手が舞台上で上から吊り下がり、体半分が徐々に切り裂かれていくシーンはトラウマになりそう。小林旭の七つの顔はどれも愛嬌があって楽しめる。才人監督鈴木則文の面目躍如。(☆☆☆☆)

 

                                                                                『運命じゃない人』(監督・内田けんじ 2005年) 

『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』と同系列の内田けんじ作品で、アイディア勝負的作品なので種明かしがされた後、

二度三度の鑑賞に耐えられるかどうかで作品の真価が決まりそう。主演の中村靖日は巨人桑田真澄コーチのような容貌と雰囲気で癒される。(☆☆☆☆)

 

 

                                                               

『夜のダイヤモンド』(監督・ヤン・ネメッツ(ニェメッツ)1964年) 

制作から4年後の1968年にアートシアターで日本公開。

ユダヤ人を乗せた貨物列車から飛び降り山林を逃げ、飢えに耐えながら故郷のプラハを目指す二人の若者の運命。

力強い映像で綴られるチェコヌーヴェル・ヴァーグ?(☆☆☆☆☆)

 

 

                                               『ドライヴ』(監督・ニコラス・ウインディング・レフン 2011年)

昼間は自動車修理とスタントマン、夜は犯罪者を運ぶドライバー。同じアパートに住む子持ちの美人妻と恋愛感情が芽生えるが、彼女には懲役中の旦那がいて、やがて男は危ない犯罪に巻き込まれ・・・。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞に興味がわいて鑑賞。ライアン・ゴズリングの豹変ぶりが見もの。

キャリー・マリガンのキュートな魅力。(☆☆☆☆)