『一条さゆり 濡れた欲情』１９７２年 監督脚本神代辰巳
出演 一条さゆり、伊佐山ひろ子、白川和子、高橋明、粟津號、小宮山玉樹、絵沢萠子、中田カウス、中田ボタン、小沢昭一 ほか。
大阪のストリップ劇場吉野ミュージックに出演のため阪神電鉄野田駅に降り立ったストリッパーのはるみ（伊佐山ひろ子）は、大きなトランクをかついだヒモの若い男が一緒だったが、刑務所に入っていたはるみの元のヒモ・大吉（粟津號）が今日出所すると聞いて男ははるみを置いて逃げ出した。大吉は刑務所に入っていた間にはるみに男が出来た事を聞いて怒りだすが、はるみの父親が死刑になって死んだことやずっと施設に預けられていたという身の上話しを聞いて許してやった。吉野ミュージックに出演している人気ストリッパー・一条さゆりに対抗心を燃やすはるみは、さゆりに悪戯まがいのことをして同僚のまり（白川和子）にとがめられるが「そんなん、うち知らへんで」と言ってとぼける。さゆりのローソクショーが終わった楽屋で「うちも一条はんと同じ施設出身なんですわ」といって取り入ろうとするが、「着替えの邪魔なんやけど」と言われて追っ払われる。
さゆりに邪険に扱われたはるみは一層さゆりにライバル心を掻き立てる。そんな中、舞台でレスビアンショーを演じていたはるみとまりが猥褻物陳列の容疑で警察に逮捕される。留置場の中でも反目しあっていた二人は、釈放された帰り道、はるみがまりとやっているレスビアンのコンビを解消すると言い出した事から二人のヒモ同士大吉と勇（高橋明）が喧嘩騒ぎに。はるみがまりのヒモの勇に殴られ引っ込みがつかなくなった大吉はナイフで勇の足を突き刺した・・・。
一条さゆりだけでは一本の映画にはならないと判断した三浦朗プロデューサーの考えで、映画の３分の２を一条さゆりにライバル心を燃やす伊佐山ひろ子の話にしたそうだ。このはるみという若いストリッパーがやさしい菩薩のような一条さゆりに対比される形で実に活き活きと描かれている。ヒモや一条さゆりに話す父親の死刑や施設に入所していたというのはみんなはるみの作り話。強面のヒモにも主導権は取らせずに自分の思うがままに引きずり廻す。伊佐山ひろ子なくしてこの映画は成り立たなかったと思うような嵌まり具合。長年日活のアクション映画でその他大勢の俳優だった高橋明が足を刺されてちんばになったヒモ役を好演。
伊佐山ひろ子はロマンポルノの時代の流れにも乗ってこの年のキネマ旬報主演女優賞を受賞した。一条さゆりの舞台のローソクショーは圧巻。キネマ旬報ベストテン第８位。映画芸術ベストテン第２位。☆☆☆☆☆（☆５が満点）
