『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年 監督深作欣二)渡哲也×梅宮辰夫×梶芽衣子 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 本日、本作をTOEI Xstream theater で鑑賞しました。以前書いた感想がありましたので再掲載致します。

 

『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年 監督深作欣二 脚本笠原和夫)

出演・渡哲也、梅宮辰夫、梶芽衣子、金子信雄、藤岡琢也、室田日出男、佐藤慶、川谷拓三、八木孝子、矢吹二朗、小林稔侍、

成田三樹夫、藤岡重慶、八名信夫、曽根将之、志賀勝、大島渚 

 

大阪府警捜査4課の刑事・黒岩竜(渡哲也)は大阪南部に勢力を持つ暴力団・西田組の情報収集にあたっていたが、若い組員の

若本(矢吹二朗)をペテンまがいのやり方で逮捕し所轄の刑事・梶山(川谷拓三)と暴力的な方法で締め上げた。西田組と繋がり便宜を受けている山王署の署長・赤間(金子信雄)はいきり立つ黒岩をなだめ、西田組二代目組長・杉政明(藤岡琢也)や刑務所に収監中の若頭・松永(今井健二)に代わり若衆頭代理を務める松永の妻・啓子(梶芽衣子)らに引き合わせる。黒岩と持ちつ持たれつの関係を築きたい杉は黒岩にその旨を伝え車代として大金を包んで渡そうとするが、黒岩はそれを突っぱね出て行った。

 

西田組の縄張りに進出を目論む関西に拠点を置く巨大組織「山城組」傘下の武田組の情報を掴みたい黒岩は、拳銃発砲事件の件で恩を売り手なずけた西田組の若本と北島(小林稔侍)を使い、

武田組の組員・金井(曽根将之)の動きを探らせる。金井が入って行った「山光総業」のビルは元警察本部副部長・寺光伝之助(佐藤慶)が社長で社員は捜査課OBたちで構成された「山城組」の資金源になっている金融ブローカーの会社だった・・・

 

暴力団と警察関係者の癒着、在日朝鮮人問題に踏み込んだ笠原和夫(脚本)と深作欣二の意欲作。のちに黒岩と兄弟分の関係を結ぶ西田組の顧問でキックボクシングジムの館長・通称ダボ牛と呼ばれる岩田五郎(梅宮辰夫)は生粋の朝鮮人で、収監中の松永に代わり西田組の若頭代理を務める啓子は父が半島人で母が日本人の在日朝鮮人。西田組の跡目相続の問題で鳥取刑務所で松永と

面会した啓子は松永に「ワシが刑務所に入ることになった時なんで首をくくって死ななんだんや。この淫売、ドチョーセン、死んでまえ!!」と蔑みの言葉を浴びせられ蹌踉として海に向かう。啓子を引き留める黒岩自身も満州大陸からの引揚者で日本人に虐められた根無し草の少年だった。荒波が打ち寄せる海に向かい泣きじゃくって啓子が叫ぶ。「向こうへ帰るんや。死ね、言われたんやもん。死んでたまるか。うちかて帰るところがあるんや」。

 

寺光の手でペイ中毒にさせられた黒岩は岩田を売り、岩田は警察の罠に嵌められ留置場で転落死とされて殺される。岩田も啓子も裏切った黒岩は単身警察本部に乗り込み啓子への愛が本物だったことを証明しようとするが・・・。

 

黒岩が城北署時代に射殺した暴力団組員(志賀勝)の妻でのちに黒岩と情婦関係になる初江を演じた八木孝子、所轄署の刑事で登場する川谷拓三、警察本部長役の大島渚、警察学校時代の同僚でのちに黒岩の上司になる室田日出男、西田組のチンピラ組員矢吹二朗や小林稔侍も忘れ難い印象を残す。笠原和夫は東映を去り、深作欣二とのコンビはこの作品が最後になった。☆☆☆☆☆