『秋津温泉』『黒木太郎の愛と冒険』『OH!タカラヅカ』他、9月の映画鑑賞記録Ⅰ | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 9月1日以降に観た映画の感想、星取りです。鑑賞本数が多かったため2回に分けました。ほぼ自分のための鑑賞備忘録で、皆様の評価と異なる際はご容赦ください。

(作品紹介はWIKIPEDIA、ぴあ「シネマクラブ」等を参照、引用) (☆5が満点)

 

『秋津温泉』(監督・吉田喜重 原作・藤原審爾 脚本・吉田喜重1962年) 終戦直前、生きることに絶望し岡山の秋津温泉(モデルは奥津温泉)を訪れた青年(長門裕之)と旅館の娘(岡田茉莉子)との十数年に渉る情愛。岡田茉莉子出演100本記念作品。林光の音楽と成島東一郎の流麗なキャメラワークに引きこまれる。☆☆☆☆☆  

 

『狂った一頁』(監督・衣笠貞之助 脚本・川端康成・衣笠貞之助・犬塚稔・沢田晩紅1926年) 日本初の前衛映画。無字幕の無声映画として作られ洋画系で公開される。フィルムは消滅したものと思われていたが、71年に完全な形で発見され監督自らサウンド版を作りフランスやイギリスで公開。「メトロポリス」等のドイツ表現主義の作品を想起させる。映画史に興味ある方は必見。☆☆☆☆☆   

 

『マダムと女房』(監督・五所平之助 脚本・北村小松 1931年) 日本映画初の本格的トーキー作品。締め切りに追われている劇作家が隣の家から聞こえるジャズの音がうるさいので苦情を言いに行くが、美人のマダムに丸め込まれるというたわいない内容だが、長閑な雰囲気に癒される。劇作家の女房が若かりし田中絹代。☆☆☆☆   

 

『阿部定 最後の7日間』(監督・愛染恭子 脚本・福原彰 2011年) 麻美ゆま主演。「阿部定事件」の最後の7日間の出来事にしぼり、刑事(菅田俊)の尋問を受ける定のシーンとパトロンや宿屋での吉蔵との回想を描いている。麻美ゆまにこの内容の作品は重すぎるように思えた。タレント性のある女優さんなので美保純的立ち位置の映画の方が合っているのでは。田中登「実録・阿部定」や大島渚「愛のコリーダ」と比べるのは酷。☆☆☆   

 

『OH!タカラヅカ』(監督・小原宏裕 脚本・高田純 1982年) ロマンポルノでこれ程馬鹿馬鹿しさに徹した作品を作ってくれると嬉しい。新任早漏教師と暴走族リーダーの悲哀。美保純の魅力全開。☆☆☆☆★   

 

『忍者武芸帳』(監督・大島渚 脚本・佐々木守・大島渚1967年) 静止画像(漫画)をモンタージュし、ナレーション(小沢昭一)を被せるという実験的作品。ATG作品だからこそ製作可能、観るほうは退屈、忍耐を強いられる。☆☆☆   

 

『大根と人参』(監督・渋谷実 脚本・白坂依志夫・渋谷実1964年) 原案は小津安二郎と野田高梧。小津が『秋刀魚の味』の次に用意していた作品だが実現ならず(小津死去のため)渋谷実が「小津安二郎記念映画」として完成させた作品。笠智衆の新しい一面?。出演俳優が豪華。☆☆☆☆   

 

『警察日記』(監督・久松静児 脚本・井出俊郎1955年) 会津の田舎町の警察署に勤務する巡査たちと町に暮らす人々たちとの悲喜こもごも。宍戸錠がこの作品で映画デビュー。子役の二木てるみが名演技。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 柴又慕情』(監督・山田洋次 脚本・山田洋次・朝間義隆1972年、シリーズ第9作。以下このシリーズは全作監督、脚本は同じコンビ) 北陸で出会った3人娘のひとり・歌子(吉永小百合)に想いを寄せる寅次郎だが、彼女は小説家の父親と恋人の間で悩んでいた。二代目おいちゃん、松村達雄が登場。モコ、ビーバー、オリーブのモコ、高橋基子が北陸を旅する3人娘のひとりとして出演。日本が「ディスカバー・ジャパン」で盛り上がっていた頃。☆☆☆☆★   

 

『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(1974年、第13作) 吉永小百合が『柴又慕情』に続いて登場。山陰、津和野で寅さんが以前片想いの相手だった歌子(吉永小百合)に再会。今は未亡人になった歌子と仲違いしている父親(宮口精二)の間で奔走する。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975年、第15作) 自由を求めて蒸発した窓際族のサラリーマン(船越英二)と青森で出会った寅さんが函館でリリー(浅丘ルリ子)と再会、奇妙な三人旅が始まる。行方不明になった夫の安否を尋ねてとらやにやって来た妻(久里千春)。寅さんの仕事を聞かれて言いよどんでいるさくらに、「まさか道端で叩き売りのような事をされている訳ではございませんでしょう?」。浅丘ルリ子がキネマ旬報主演女優賞。シリーズ屈指の作品。☆☆☆☆★   

 

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』(1978年、第21作) さくらの幼友だちでSKDの踊り子・奈々子(木の実ナナ)に夢中になった寅さんは毎日浅草国際劇場に通いづめ。そのうえ、九州で知り合った青年(武田鉄矢)が寅さんを頼って上京。彼もレビューの若い踊り子に夢中になって、とうとう劇場近くのラーメン屋に就職してしまう。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 噂の寅次郎』(1978年、第22作) 旅先で博(前田吟)の父(志村喬)と出会い人生のはかなさを教えられた寅さんは、柴又に帰ったあと直ぐに修行の旅に出ようとするが、そこでとらやで働くことになった美しい女性・早苗(大原麗子)と店先でばったり出くわしてしまう。直ぐに気が変わった寅さん、さくらに腹痛と言って救急車が出動する騒ぎに。大原麗子の可愛さ、色気は歴代マドンナ・ナンバーワン。早苗の従兄弟の教師役で室田日出男が出演。☆☆☆☆★   

 

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』(1979年、第24作) 薬のセールスで日本にやって来たアメリカ人・マイケル(ハーブ・エデルマン)は商品が売れず行倒れ寸前でとらやの人たちに救われる。面倒を見てもらう内にさくらに惚れてしまったマイケルは気持ちが抑えきれずさくらに愛の告白。一方、外人嫌いの寅さんは英語の先生(香川京子)に一目ぼれ。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年、第25作) 旅回りの歌手リリー(浅丘ルリ子)から<沖縄で病院に入院中>という便りをもらった寅さんは急ぎ病院に駆けつけてリリーを励ます。看病の甲斐あって回復に向かうリリーだが、所持金も少なくなって昔馴染みのクラブに仕事を頼みに行くが、リリーの体が心配な寅さんと些細なことで衝突してしまう。リリーがマドンナ役で登場するのはこれが三作目。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』(1981年、第27作) 瀬戸内の小島で若い女性・ふみ(松坂慶子)と知り合った寅さん。大阪でテキヤ商売の最中にふみとばったり再会。ふみは芸者で生き別れの弟に会うのをためらっていると知り、一緒に弟の仕事先を尋ねる寅さんだが・・・。芦谷雁之助がうだつの上がらない旅館の息子役で印象的な演技。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎紙風船』(1981年、第28作) 九州・日田で旅館の相部屋を頼まれた寅さん。静岡から家出して来た若い娘・愛子(岸本加世子)で、初めは寅さんを警戒して無礼な態度をとっていたが、意外にも優しいおじさんと知り寅さんになついてしまう。愛子と一緒にテキヤ商売をしていると寅さんを知っているというテキヤ仲間のおかみさん(音無美紀子)と遭遇。旦那(小沢昭一)が病気で寝ていると聞き見舞いに行くが、そこで思いもよらぬことを頼まれてしまい・・・。岸本加世子の兄の遠洋漁業の漁師役で地井武男が登場し迫力ある演技。☆☆☆☆★  

 

『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(1982年、第29作)京都で陶芸の大先生(片岡仁左衛門)と知り合いになった寅さん。そこでお手伝いとして働くかがり(いしだあゆみ)と仲良くなるが、かがりは先生の弟子に失恋し故郷の丹後に帰ってしまう。かがりさんを慰めてやってくれまいかと大先生に頼まれた寅さん、かがりが幼い娘と暮らす丹後を訪ねてみるが・・・。上京したかがりと鎌倉のあじさい寺でデートする事になった寅さんに嫌々ついて来るのは、中村はやとから満男(さくら夫婦の息子)役を引き継いだ(前作「浪花の恋の寅次郎」から)吉岡秀隆。☆☆☆☆★   

 

『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(1982年、第29作) 青年・三郎(沢田研二)が惚れているのは、大分の母の供養先で知り合ったデパート勤務の女性・蛍子(田中裕子)。気弱で蛍子に言い出せない三郎に恋愛指南する寅さん。この作品が沢田研二、田中裕子の出会いのきっかけ。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(1983年、第31作) 演歌の女王・京はるみ・(都はるみ)とは知らず、傷心の旅に出たはるみと知り合った寅さん。京はるみとは気づかず二人で佐渡へと向かったが・・・。芸能界を引退直前だった都はるみがマドンナ。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(1983年、第32作) 岡山に来ていた寅さん。妹さくら・(倍賞千恵子)の夫・博(前田吟)の亡き父の墓参りに出かけたが、そこで住職(松村達雄)の娘・朋子(竹下景子)に出会って居座ることに。三回忌の供養にやって来たさくらや博の前に袈裟姿の寅さんが。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』(1984年、第33作) 北海道でフーテンの美容師・風子(中原理恵)と意気投合した寅さん。一緒に寅さんと旅をしたいと言う風子だが、寅さんは地道に地元で仕事を続けることをすすめる。そんな折、風子は町にやって来たサーカスのオートバイ乗り(渡瀬恒彦)に付きまとわれて。印刷会社のタコ社長(太宰久雄)の娘で美保純が初登場。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(1984年、第34作) 上野の飲み屋で一流証券会社の課長(米倉斉加年)と知り合った寅さん。意気投合し昵懇になった矢先、課長が失踪。故郷の鹿児島で見かけたという情報を頼りに課長の妻(大原麗子)と夫探しの旅に出る。大原麗子がシリーズ二度目の登場。☆☆☆☆★  

 

『男はつらいよ 寅次郎恋愛塾』(1985年、第35作) 仲間のポンシュー(関敬六)と五島列島にやって来た寅さん。知り合いになった老婆を助けた事がきっかけで、東京在住の孫娘・若菜(樋口可南子)と知り合う。若菜が住む東京のアパートの階下で司法試験勉強中の青年(平田満)が若菜に惚れていると知り、青年に恋愛の手ほどきを買ってでる寅さん。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 幸せの青い鳥』(1986年、第37作) 筑豊で昔なじみの旅役者の娘・美保(志穂美悦子)と再会した寅さん。上京した美保は寅さんの紹介で柴又のラーメン屋に就職する。そんな折、美保が上京中に救けてもらった絵描きの青年(長渕剛)がとらやを訪ねてきて。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 知床慕情』(1987年、第38作) 知床半島で武骨な獣医(三船敏郎)と知り合った寅さん。東京から結婚生活に破れ帰って来た娘(竹下景子)に冷たくあたる父に寅さんが説教。独り身の獣医の世話をしているスナックのママ(淡路恵子)との縁結びにも奮闘する寅さん。知床の夏は短く美しく。☆☆☆☆★   

 

『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』(1989年、第40作) 俵万智のベストセラー「サラダ記念日」にヒントを得て作られたシリーズ20年目にして40作目。信州で出会った美しい女医(三田佳子)に一目惚れの寅さん。柴又に戻った寅さんはさっそく早稲田大学に通う彼女の姪(三田寛子)を訪ねるが・・・。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(1989年、第41作) 田舎の駅で心身症のサラリーマン(柄本明)を元気づけたのをきっかけに彼の憧れの地、オーストリア・ウィーンに同行する事態になった寅さん。そこで知り合った日本人観光バスガイド(竹下景子)に惚れてしまった寅さんだが、彼女には現地人の恋人がいて。竹下景子が三たびのマドンナ。☆☆☆☆   

 

『男はつらいよ 寅次郎の休日』(1990年、第43作) 寅さんの甥・満男(吉岡秀隆)は高校時代の後輩・泉(後藤久美子)が愛人と同棲している父(寺尾聰)を尋ねて九州へ向かうと知り見送りに来るが、矢も楯もたまらず泉の乗る列車に飛び乗ってしまう。一方娘の泉が心配な母(夏木マリ)も寅さんと共に九州へ。運よく泉と満男を発見した寅さんだったが・・・。☆☆☆☆   

 

『黒木太郎の愛と冒険』(監督・森崎東、脚本・森崎東1977年) はみ出し映画スタントマン黒木太郎(田中邦衛)を主人公に、東京の下町界隈に生きる庶民群像をエネルギッシュに描いた森崎東のATG作品。20匹の猫を飼育している独り者の女教師(緑魔子)とそんな頑なな女教師を説得に来た黒木太郎の攻防が凄まじい。財津一郎、伴淳三郎も好演。☆☆☆☆★  

 

PART1終了(PART2は後日)