『肉体の門』(五社英雄監督 1988年)       かたせ梨乃×名取裕子×根津甚八 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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 『肉体の門』(1988年 原作田村泰次郎 監督五社英雄 脚本笠原和夫) 

 

出演・かたせ梨乃、名取裕子、根津甚八、渡瀬恒彦、芦田伸介、西川峰子(仁支川峰子)、松居一代、マッハ文朱、汐路章、志賀勝 他。

 

 1947年(昭和22年)の東京有楽町。空襲で廃墟になったビルの跡を寝ぐらにした浅田せん(かたせ梨乃)、通称・関東小政らのグループは、銀座を根城にしたラク町のお澄(名取裕子)たちのグループ、有楽町界隈のマーケットを支配するヤクザの袴田組(根津甚八)らと対立していた。進駐軍の街娼狩りで助けた町子(西川峰子・現仁支川峰子)を仲間に加えたせんたちの廃墟ビルに、ある日瀕死の男・伊吹新太郎(渡瀬恒彦)が迷い込んだことから次第にグループの結束に波風が立ち始める。

 

田村泰次郎原作で5度目の映画化作品。

鈴木清順監督で日活で64年に映画化された『肉体の門』(脚本棚田吾郎 主演・野川由美子、宍戸錠)は観ているが、清順作品はボルネオ・マヤに扮した野川由美子とその仲間たちと宍戸錠が扮した伊吹新太郎らとの葛藤が中心になっていたと記憶している。(数十年前に観たので間違っていたらすいません。)

 

 五社英雄監督の『肉体の門』(脚本笠原和夫)は東映映画らしく、ヤクザ映画版『肉体の門』になっていた。

袴田組の組長が根津甚八で、付き従うのが汐路章、志賀勝、成瀬正(正孝)、福本清三らお馴染み東映やくざ映画の面々(三国人に扮した志賀勝が怪演)。せんたちを見守る彫師に芦田伸介。

女同士の大立ち回りが五社作品の見所でもあるが、この作品でもそういった見せ場はふんだんに用意されている。マッハ文朱は殴り合いのシーンで大怪我をしてそのまま入院、せん(かたせ)と澄子(名取)のタイマン勝負では本番で本物のドスを使用、ラストの爆風シーンでは仁支川の顔の近くで水素ボンベを噴出させ、

仁支川峰子は首の骨が折れるかと思ったそうだ。

五社英雄が女優たちに嫌われる理由の一端がうかがわれる。

主演を引き立てる二番手としてこそ持ち味を発揮するかたせ梨乃に主役は似合わなかったのか、興行的には失敗したらしい。

 

戦争、空襲で家を焼かれ、家族を失なったある種の女たちが生き残るには体を張るしか術がなかった。ビルが建ち並ぶ現代の東京で始まり、焼け跡に残された廃墟のビルが爆発した跡に現代の東京の高層ビル群が現れる。繁栄の影に埋もれた戦後の過ぎ去りし日々の記憶。エンドクレジットで八代亜紀の「星の流れに」が流れ、焼け跡・闇市世代の五社英雄・笠原和夫、東映映画らしいエンタメやくざ映画版『肉体の門」。進駐軍兵士たちが見守る中で踊るかたせ梨乃と名取裕子に見惚れる。☆☆☆☆(☆5が満点)