最近観た映画 2020 4月『極道の妻たち』他 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 4月8日以降に鑑賞したブログに感想を書いていない作品の星取りと感想です。鑑賞後時間が経った作品もあり記憶違い(事実誤認)があるかも知れませんのでご了承お願いします。

(☆5が満点)                 

 

「愛の化石」岡本愛彦監督1970年 

前年にヒットした浅丘ルリ子の同名タイトル曲の映画化。Amazonの商品解説にはこう書かれている。「劇場公開以来、門外不出であった幻とも言われた作品が解禁!愛するって耐えることなの・・・・恋に傷つき、疲れ果てた孤独な女心にしのびよる愛の渦!!夢の幻影を求めて彷徨う哀しくも美しい女心!!」

映画が作られた1970年(昭和45年)の社会、時代性を感じる。浅丘ルリ子ファンのための映画だが、この作品に満足した浅丘ルリ子ファンがどれほどいたのか疑問。(☆☆★) 

 

「カフェ・ド・フロール 愛が起こした奇跡」ジャン=マルク・ヴァレ監督2011年 

現在の出来事と何十年前かのフランス・パリの出来事とが交互に交わり、繋がっているというスピリチュアルな物語。

ジャン=マルク・ヴァレらしい意欲的な作品。ヴァネッサ・パラディがクラウディア・カルディナーレを思わせる。(☆☆☆★) 

 

「極道の妻たち」五社英雄監督1986年

「極妻」シリーズの第一作目。シリーズの中ではこの作品が最高というファンも多いらしい。オーソドックスな作りで五社英雄監督らしいケレンもたっぷりと用意されている。終盤の岩下志麻、かたせ梨乃の取っ組み合いの姉妹喧嘩が壮絶。(☆☆☆★) 

 

「新・仁義なき戦い 謀殺」橋本一監督2003年

 渡辺謙、高橋克典主演。前作の阪本順治監督「新・仁義なき戦い」」は深作欣二が監督した「仁義なき戦い」「新・仁義なき戦い」シリーズとは異質なものになっていたが、この「謀殺」も「仁義なき戦い」というタイトルだけ頂いたヤクザ映画という以上の感想を持てない違和感。(☆☆★) 

 

「内海の輪」斎藤耕一監督1971年

松本清張原作、山田信夫・宮内婦貴子脚本。

山田・宮内コンビの脚本で一抹の期待をしたが・・・。

夫の不倫が原因で別れることを決意した妻(岩下志麻)が夫の弟(中尾彬)と不倫関係になり、やがて訪れる悲劇的結末。

サスペンスドラマというより不倫劇。結局何が描きたかったのは中尾彬が人混みの中に消えて不明・・・(☆☆☆) 

 

「ゼロの焦点」野村芳太郎監督1961年

久我美子主演。何度も映画化テレビドラマ化されているが、この野村芳太郎作品がベストではないだろうか。松本清張の社会派の視点を感じる。断崖サスペンスドラマの原点。(☆☆☆★)

 

「新感染・ファイナルエクスプレス」ヨン・サンホ監督2016年

 高速鉄道車内で発生したゾンビ大量感染に巻き込まれた人々のサバイバル劇。ゾンビ映画とは知らずに鑑賞したが、親子愛、人間愛がテーマの作品でしっかりと作られた韓国映画(☆☆☆★) 

 

「極道の妻たち 死んで貰います」関本郁夫監督1999年

 高島礼子主演の二作目。東ちづる、斉藤慶子が共演。

東ちづるが<極道の妻>たち(高島礼子、斉藤慶子)と張り合う。ラストの殴り込みは「昭和残侠伝 死んで貰います」の健さんと池部良。闇夜にうかぶ大文字焼きが美しい。(☆☆☆★) 

 

「目の壁」大庭秀雄監督1958年

松本清張原作。佐田啓二主演。

渡辺文雄、鳳八千代の兄妹の隠された過去の秘密。競馬にのめり込んで身を持ち崩す渡辺文雄が他人事に思えない。終盤安物のアクション映画風になったのが残念。(☆☆☆★) 

 

「セーラー服と機関銃」相米慎二監督1981年

薬師丸ひろ子の人気を決定づけた相米慎二の傑作。

鈴木清順や大和屋竺を彷彿とさせる面白さ。

清順一党の田中陽造らしい型破りの脚本。

ラストで浜口物産の会長(北村和夫)をコケにして機関銃を炸裂させる泉(薬師丸ひろ子)に<カ・イ・カ・ン!>。

エンドテーマ曲が流れる新宿伊勢丹前の隠し撮り、排気口の上に立った薬師丸ひろ子の捲り上るスカートシーンは映画史上に残る。(☆☆☆☆★) 

 

「顔」大曽根辰保監督1957年

松本清張原作、岡田茉莉子主演。貧しい生まれからファッション界の花形モデルに上りつめた女の悲しい結末。女の起こした事件の現場を目撃して新聞社や警察にたかる男に大木実が扮して本領を発揮する。珍しい笠智衆の刑事。岡田茉莉子の美貌と演技力はジャンヌ・モローを思わせる。(☆☆☆★) 

 

「極道の妻たちⅡ」土橋亨監督1987年

十朱幸代主演の「極妻」シリーズ第二作目。村上弘明が共演。

村上の女(かたせ梨乃)は堅気の生活を望み、刑務所から出て来た村上と復縁することを拒むが・・・。初監督の土橋亨の演出は堅実で悪くないが『極妻シリーズ』はこの一本でお役御免となった。(☆☆☆★) 

 

「処刑の部屋」市川崑監督1956年

石原慎太郎の原作を和田夏十、長谷部慶治が脚色。

U大の学生(川口浩)が慶大の女子大生(若尾文子)と思想研究会で知り合い、街で友人の女子学生と一緒だった所を誘い、仲間の男と睡眠薬を飲ませ犯す。他の大学の不良学生たちとトラブルになった川口は女の前で痛めつけられながら「もうお前には何も感じない」と言って女を冷たく突き放す。名門大学の学生たちのある暗い側面、大人たちへの反抗。センセーショナルな市川崑作品。(☆☆☆☆) 

 

「極道の妻たち 最後の戦い」山下耕作監督1990年

「極妻」シリーズ四作目で岩下志麻が復帰。監督に自ら山下耕作を要望。現代ものでありながら何処か任侠映画の雰囲気があるのはやはり山下耕作。黒づくめの喪服姿のラストは「黒衣の花嫁」のジャンヌ・モローを思い起させる。(☆☆☆★) 

 

「極道の妻たち 地獄の道づれ」関本郁夫監督2001年

高島礼子主演の四作目。草刈正雄、とよた真帆、雛形あきこ共演。関東の大組織の組長(中尾彬)の術中にはまり身を滅ぼした草刈の怨念を妻のとよた真帆が晴らす。(☆☆☆★) 

 

「極道の妻たち NEO」香月秀之監督米村正二脚本2013年「極妻」シリーズ初登場の黒谷友香主演。「極妻」シリーズ十六作目にしてシリーズ最終作。「仁義なき戦い」シリーズもそうだが、監督や主演者が変わるとシリーズとしてのタイトルは同じでも内容が別種のものになってしまうことがある。

「極妻」シリーズは監督や主演者が変わっても脚本が高田宏治をメインにした東映の一線級が書いていたので(「新・極道の妻たち」は那須真知子「惚れたら地獄」は松田寛夫、「赫い絆」は塙五郎、「赤い殺意」「リベンジ」は中島貞夫)作品としての大きな落ち込みは無かったが、最終作で大きな変化があった。この脚本交代は致命的に感じる。長嶋一茂が組長というのが凄いです。共演の原田夏希がなんともグロテスク。ドギツいメークに長キセル。大林作品に出演していた原田夏希とは思えない変わりように呆然。女は怖い。(☆☆★) 

 

「マイ・フェア・レディ」ジョージ・キューカー監督1964年 ブロードウェイのミュージカルをオードリー・ヘプバーン、レックス・ハリソンで映画化。3時間近い作品で見るには前半忍耐を要するが徐々に引き込まれて次第に長さを忘れる。アカデミー賞作品賞、主演男優賞などを受賞。オードリーのファンなら必見。(☆☆☆★) 

 

「シェイプ・オブ・ウォーター」ギレルモ・デル・トロ監督2017年

1962年冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザ。そこに極秘裏に隔離されていたアマゾンで発見された謎めいた生き物に魅せられてゆく。ファンタジーとリアルが入り混じった不思議な作品。(☆☆☆☆) 

 

「金閣寺」高林陽一監督1976年

 原作三島由紀夫。ATG映画らしく娯楽性に欠けやや観念的で実相寺昭雄監督の「無常」を思わせる雰囲気。撮影森田富士郎、美術西岡善信という大映京都のベテランスタッフに支えられた映像は見事。篠田三郎、市原悦子、テレサ野田、加賀まりこが出演。島村佳江が鮮烈。(☆☆☆★) 

 

「竜二」川島透監督1983年

 34歳で急逝した金子正次の渾身作。従来のやくざ映画にはない現実感とホームドラマ感。金子正次の上手いのか下手なのか分からない生々しさの残る演技。永島暎子の名演。語り継がれるラストの「肉屋」の別れ、ショーケンの主題歌。(☆☆☆☆) 

 

「わが母の記」原田眞人監督2012年

 作家井上靖の自伝的作品の映画化。終盤、長年抱いていた母への誤解が溶けて涙を流す役所広司が感動的。樹木希林、宮崎あおいが好演。黒沢清作品でおなじみの芦澤明子の撮影がすばらしい。(☆☆☆★)