『セッション』(デイミアン・チャゼル監督 2014年) | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『セッション』(監督・脚本 デイミアン・チャゼル 撮影・シャロン・メール 音楽・ジャスティン・ハーウイッツ 2014年 日本公開 2015年)

 

出演・マイルズ・テラー J・Kシモンズ、ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ 他。

 

 ドラムを叩く低い音が黒味の画面のまま続き、やがて長い廊下の奥でドラムを叩き続ける若者の姿にカメラが接近していく。アメリカ最高峰のシェイファー音楽学校。1年生のアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)はバディ・リッチ(1917~1987年まで活躍したビッグバンドの有名ドラマー)を目指す19歳の若者。音楽学校の教授テレンス・フレッチャー(J・Kシモンズ)の指導は超厳格で、厳しさを通り越した生徒への虐めを楽しむサド男のような指導法。軍隊にいる鬼軍曹そのもので生徒たちは戦々恐々としている。まるでキューブリックの「フルメタルジャケット」を観ているようだ。ニーマンがドラムを叩く、フレッチャーは「速い!」「若干遅い」「速い!」「遅い!」の繰り返し。指示通りに叩けないニーマンに業を煮やしたフレッチャーが椅子を投げつける。悔しいニーマン。ついにはフレッチャーの往復ビンタを食らう。家に帰ってニーマンの猛練習が始まる。手のひらは皮が破け血だらけでドラムを叩き続ける。リンカーン・センターでのジャズコンテスト控え室。フレッチャーが入って来る。「クソども!注目、リンカーン・センターの目的は人材発掘だ。くれぐれも私に恥をかかせるなよ!!粗チンで音が不揃いのバカどもいいな‼」

 

教授のフレッチャーを徹底的にヒールとして見せながら、彼の虐め(指導)に反骨精神むきだしで応酬するニーマンをヒーローとして描こうとするデイミアン・チャゼルのシンプルな作劇術。映画館で知り合ったニコル(メリッサ・ブノワ)とのデートシーンやドラムに没頭するためニコルに別れを告げるシーンもあるが、これはドラムにひたすら打ち込もうとするニーマンをより際立たせるためのもの。フレッチャーvsニーマンにドラマの方向を絞りサブストーリー的なものを最小限に抑えたことで作品が引き締まった。ラスト、思いがけないフレッチャーの復讐、一旦は立ち去ったニーマンが再び戻り反撃を開始、最後に二人の気持ちが通じ合う。デイミアン・チャゼル「セッション」「ラ・ラ・ランド」作風は好みではないが、次回作に期待を抱かせる監督である。☆☆☆☆★((☆5が満点 ★は0.5点)

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