「ピンク、朱に染まれ!」 高橋伴明監督ほか 1982年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 ディレクターズカンパニーとジョイパックフィルムの提携で製作された、ディレカン旗揚げ企画第一弾として作られた3作品「狼」(高橋伴明)「さらば相棒」(宇崎竜童)「ハーレム・バレンタインデイ」(泉谷しげる)のキャッチコピーとして使われているのが「ピンク、朱に染まれ!」というタイトル。DVDにはこの3作品が収録され、3作品ともに60分~70分前後の上映時間で、かつてのピンク映画の作りだが、オールカラーで、それぞれ監督の個性がにじみ出して面白い。「狼」(高橋伴明)は都会の街中を疾走する狼男(戸井十月)が主人公。狼男はボロアパートの一室でゴミにまみれながら裸で息をひそめている。そこに訪ねてくる様々な職種のセールスマンたち。保険外交員(野上正義)や新聞勧誘でサービスを争う「読切り新聞」(下元史朗)と「朝夕新聞」の拡張員。コンドーム販売員や「聖書」勧誘の女(関根恵子)。時にはコソ泥(宇崎竜童)なども紛れ込む。男は街中を走りながら若い女に襲い掛かる。ある夜、一人の若い女(紗貴めぐみ)が男の後を追いアパートに転がりこんでくる。二人は日毎セックスに明け暮れるが、金のない男はスーパーで万引きを繰り返し食料を手に入れる。そんな生活も長くは続かず、食料の途絶えたアパートの部屋を女は去って行く。男は万引きで捕まり、追ってきた善良な(?)市民たちの袋叩きに合う。再び男の部屋に舞い戻った女の前には男の姿はなく・・・。ピンク映画らしい世相を皮肉る小ネタが随所に盛り込まれている。ヒロイン紗貴めぐみの魅力で見せる一篇。「さらば相棒」(宇崎竜童)九州から上京した3人の仲間が東京という大都会で成功を追いかける物語。ロックバンドのボーカル、ラチ(石橋凌)はある音楽事務所に送ったデモテープで才能が認められスタジオ録音のチャンスを持つが、録音当日バンドメンバーが集まらずご破算。高額なスタジオレンタル料を悪徳プロモーター(安岡力也)から請求される。ラチの上京仲間で恋人でもあるクミコ(太田あやこ)は高額なレンタル料を払うため自分の身体を犠牲にしようとするが・・・。脚本が宇崎竜童、黒沢清の共作で、「狼」(脚本宮田諭)に比べ格段に映画作品としてのまとまりが感じられる。宇崎竜童の演出もピンク映画としては水準以上で、監督としての才能を感じた。「ハーレムバレンタインデイ」(泉谷しげる)1986年のカラフト戦線から戻った戦場帰りのイシ(館山イサム)が昔の恋人麗子(伊藤幸子)を探して近未来都市を彷徨う物語。「亜細亜娼婦館」という娼館で麗花と名を変えていた麗子をイシは漸く探し出すが、麗子は「アンタなんかに見覚えはない」と突っぱねる。戦場で異常をきたした男は狂い始める・・・。サイケデリックな映像と音楽が泉谷しげるらしさを発揮。3作品の中では最も破壊的な作品。ヒロイン麗子を演じた伊藤幸子(こうこ)は結城しのぶ的雰囲気があって魅力的。いずれの作品も60分前後で、日野繭子など、かつてのピンク映画の人気女優も出演しており、ピンク映画ファンにはおすすめの作品。「狼」(高橋伴明)☆☆★ 「さらば相棒」(宇崎竜童)☆☆☆★ 「ハーレムバレンタインデイ」(泉谷しげる)☆☆☆
イメージ 1
イメージ 2
 
イメージ 3
 
イメージ 4
イメージ 6
 
イメージ 5