黄昏の色濃き五階赤蜻蛉
台風が過ぎた。
当初は近畿を直撃しそうな予想だったものが大きく迂回して、九州から近畿に向けてゆっくりと進んできた。多くの地域で風雨による被害があったが、幸いにも我が家の周りは強風も吹かず、雨もそれほど降らなかった。
夕方、晴れ間が見え遠く二上山に日が沈みつつあった。夕日がマンションを照らしていたが、その明かりも少しずつ落ちてやや赤みがかった影が伸びて来た。
このマンションも高齢化が進み、子供達は数えるほどしかいない。それも一階二階にしかいない。何故?
五階には外国人の方を除けば、みんな五十代後半からの年代だろうか。僕以外に誰も外には出ていない。随分と寂しいマンションとなった。
五階から外を眺めていたら十は下らないだろう、赤蜻蛉がゆらゆらと飛んでいた。
ほう、五階まで上がってくるものなのか、とちょっとした驚きがあった。
赤蜻蛉が訪ねて来た、そんな気分にさせた。
若山牧水の歌にこんなのがあったな。
胡桃とり疲れて草に寝てあれば赤とんぼらが来てものを言ふ(だったかな?)
二上山夕景