返り花母の嫁ぎし日の記憶

実家に帰った日々は暖かい日が続いた。

洗濯ものを干していたら母が来て話しかけてきた。庭に植えていた桃が今年初めて一個できて妹と食べたら美味しかったと。

僕が子供の頃、植木市で買った桃の木だというが、花をつけるが実をつけたことはこれまで聞かなかった。(植えた場所も違うから別の桃かもしれない)


よくみると一輪花が咲いていた。

暖かいからかな。不思議だね。そんなことを話していると、庭のこの辺りに葡萄の木があったこと、僕と叔父さんの喧嘩?から祖父が切ったこと、など昔語りが続いた。

話は母の嫁いだ日のことなどにも及んだ。

もう嫁いで65年だという。え、そんなにか。(僕が61歳だから驚くほどのことではないが)。

僕たちはここに生まれるも、今は兄弟4人それぞれ旅立っていて、住んだ時間も20年に満たない。母の65年が重たく長く感じた。

父が入院し、他界し、1人となってもここに住み続けた母の時間はどんなものだったのだろか?

そんなことを思いながら母の話を聞いていた。

小春の日差しが優しかった。



田舎では何故か低い向日葵が咲いていた。