知能(IQ)に関する本もやっと日本語で読める文献が出版され始めた。というわけで、導入本的なものをいくつか紹介。しっかりとした実証的な学術論文は残念ながら大学図書館じゃないと読めない(しかも英語)なので省略。

IQってホントは何なんだ?/日経BP社
IQを語るなら必読。分かりやすくIQの歴史などがまとめてある。
知能のパラドックス/PHP研究所
英国の名門ロンドンスクールオブエコノミクス准教授(進化心理学者)の本。IQと人間の様々な行動との実証研究の結果がわかりやすく紹介されている。各仮説は統計的に実証されているので異論はないが、各仮説の理由づけを、著者の言う「サバンナ仮説」に求めるのは説得力が微妙。
なぜ人類のIQは上がり続けているのか?--人種、性別、老化と知能指数/太田出版
平均IQは10年で3程度上昇しているという。つまり、30年前の人を現在に連れてきて現在の知能検査を受けさせると平均が70になる。これを「フリン効果」という。ニュージーランドの研究者がこのフリン効果について自説を述べている。

遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書)/筑摩書房
統計的な研究から遺伝子の影響の大きさを測定し、性格や知能も大半は遺伝的な影響であるという研究を紹介している。知能論についての本ではないが、興味深い一冊。


COURRiER Japon(クーリエジャポン) 2015年 12 月/講談社

 久々にクーリエ・ジャポンを購入して読書。興味を持った記事が、MENSAメンバーが語る天才と頭が良い人の違いに関する記事。MENSAはIQ 130以上(標準偏差15、知能指数上位2%)の人なら誰でも入会可能な社交クラブである - ちなみに、私も会員。彼らも語るようにMENSAは天才な団体ではない。天才はそうした知性だけではなく、人並み以上の努力と創造力があってこそである。あと、興味深いのが、史上最年少12歳でグランドマスターの称号を得たチェス棋士の記事である。彼曰くここまできたのは「努力の賜物」だという。チェスを毎日やり、規則正しい生活をして、睡眠時間はしっかりとり、体力をつける。甘い物と魚は頭に良い効果があるという。そして、スパルタ教育は逆らしい。

 とはいえ、天才の一義的な定義がないし、また天才から一定の法則を導くことも不可能だと思われる。プリンストン大の調査だと、練習量がパフォーマンスに与える影響はゲームや音楽によって異なるが、せいぜい1~2割程度だという(*)。先のチェス棋士から法則を導けば、天才は練習量が多いとなる。しかし、練習量が多いから天才になったのではなく、才能がある故に自然と練習量が増えたのだと思う。無才に練習だけ強いても苦痛なだけだろう。私は球技が苦手だが、これは練習しなかったからではなく、そもそも才能(私はサッカー・バスケみたいに複数人が法則性もなく動くのを把握するのが苦手)も興味もないから練習しなかったのであり、決してその逆ではない。

* http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140702111033.htm?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+sciencedaily%2Fmind_brain+%28Mind+%26+Brain+News+--+ScienceDaily%29


ちなみに、マルコム氏が「天才! 成功する人々の法則」のなかで、1万時間の法則(実績を残した天才はその分野で1万時間の練習を重ねている)を提唱しているが、プリンストン大の実証研究によってそれは反証されたのである。ただ読み物としては面白いので一読する価値はある。

天才! 成功する人々の法則/講談社


あと、MENSAの話が出たので、この前参加したMENSAのイベントの感想。まず、MENSA会員は変わり者が多いというが、全然普通 - 普通の人と話していているよりも量子力学の話が出てくる確率は高いかもしれないが...。そして学歴は関係ないとは言うが、圧倒的に有名大の学生や出身者が多い。職業的にはなんとなくシステムエンジニア等の理系と医者・歯医者・弁護士などの専門職が多い印象。とりあえず、いろいろ集まりがあるみたいなので暇の時に参加しようかなと。あと、どうでもいいけど、会員同士でIQテストの話が出てて、標準偏差やテスト方式とか、wikiのページについての話が出てたんですが、私はブログでもIQ関連の記事書いてるし、wikiの記事もだいぶ加筆・編集したので、話してた人の中には私の文章を読んでる人もいたのかなぁと思うとかなり嬉しい。「wikiのその記事編集したのです!」と言いたかったけど、アカウントからいろいろ素性バレてもあれなんで黙ってましたが・・・。ひっそりwikiの編集やブログ記事執筆は続けていきたいですね。

本年度のショパンコンクールの結果が出た(入賞者は下記)。1位は韓国人のチョ・ソンジンである。アジアとしては、ダンタイソン(ベトナム)、ユンディリ(中国)に続く快挙である。日本人の小林愛実さんは残念ながら入賞を逃している。今回は北米勢の活躍が目覚ましい。欧州勢はロシアだけというから、クラシック音楽界の重心が移動していることを物語っている。優勝したチョ氏は、中村女史をして「桁外れの才能」と言わしめていたから、優勝も当然と言えば当然かもしれない。しかし、各国の文字通りトップがしのぎを削る国際コンクール。出場だけでも極めて栄誉である。順位は審査員などの好みによっても変動する水物である。とはいえ、入賞者には大きな拍手を送りたい。また、コンテスタントには脱帽して敬意を表するところである。


1 チョ・ソンジン(韓国)
2 シャルル・リシャールアムラン(カナダ)
3 ケイト・リュウ(アメリカ)
4 エリック・ルー(アメリカ)
5 イック・トニー・ヤン(カナダ)
6 ドミトリー・シシュキン (ロシア)


それにしても今年は韓国勢の音楽コンクールでの活躍が目覚ましい。チャイコフスキーでは4部門中3部門で入賞者をだし、エリザベートコンクールではヴァイオリン部門で優勝者、今度はショパンコンクールで優勝者を輩出した。世界の大学ランキングでも日本は中韓に猛追されているが、クラシック音楽においても日本はアジアにおいてその指導的な地位を失いつつある;クラシック音楽に関しては失ったといってもいいのかもしれない。韓国人の活躍、これは芸術文化政策に力を入れてきた成果だろう。才能のある人は20歳前後には国際コンクールで入賞するので、音楽教育の結果は早期に出やすい。韓国が芸術に力を入れ始めたのが1990年頃だから、2025年のラグを経てちょうど結果が出始めたのである。1990年代ぐらいまではアジアではクラシック音楽を嗜める富裕国は日本ぐらいで、それゆえ国際コンクールの常連はアジアでは日本だけだった。しかし、韓国や中国などが経済力を増す中で、韓国人や中国人の活躍が目立ってきた。本屋に行くと「日本凄い論」に関する駄本が並んでいるが、単に先んじて西欧的なシステムを導入したのが、日本がたまたま早かっただけであり、日本人が特別なわけではない。実際、音楽では韓国・中国が比肩・凌駕しつつある。


上智大理工学部古屋准教授の書いた「ピアニストの脳を科学する」にもあるように、音楽は早期教育が重要である。ピアニストの金子三勇士は国立リスト音楽院大学ピアノ科に11歳に飛び級入学し卒業したが、日本に帰国したら、高校に編入となった。日本では飛び級ができないからである。日本の音楽指導法の水準は世界でもかなり高いと言われているが、音楽ギフティッドの伸びゆく才能を制度が阻害していると思われる。音楽に限らず、ギフティッドの才能を伸ばしやすい環境作りは不可欠だろう。


アメリカのアメリカ合衆国教育長官はアーン・ダンカンはハーバード大学卒業、イギリスの教育大臣Nicky Morganはオックスフォード大学Hugh's Collegeを卒業し企業弁護士をとして勤めていた。ドイツの教育・研究大臣のJohanna Wanka博士号保持者、フランスの国民教育・高等教育・研究大臣のベルカセムはパリ政治学院卒業である。新しい安倍内閣の文科大臣は元プロレスラー、副大臣の義家は元ヤンキーの不良である。日本の教育行政の未来は明るい。












ポーランドの首都ワルシャワで開かれている第17回ショパン国際ピアノコンクールの3次予選の結果が17日発表され、山口県宇部市出身の小林愛実さん(20)が本選に進んだ。本選は18~20日に行われる。米国とカナダから各2人、日本、韓国、ロシア、ポーランド、クロアチア、ラトビアからそれぞれ1人の計8カ国10人で競われる。
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http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015101700116&g=soc


2000年は4位に日本人が2名入賞したが、2005年は二次予選で日本人は全員落選してしまった。今回は小林さんが本選に出場とあって、喜ばしい。一次予選出場者では、中国・ポーランドが最多だったが、中国0人で、ポーランドも1人になってしまった - 国籍でどうこうと下世話な発想で申し訳ないが。三次予選に3人送り込んだ韓国も1名となった - ちなみに今年のチャイコフスキーコンクールは日本人入賞者は0人だが、韓国人はピアノ部門以外はすべて入賞者を出している。今回のショパンコンクールは北米勢が健闘している。ただ、名前的に米国の2名、カナダも1名はアジア系(?)なので、本選出場者の半数はアジア系ということになる。アジアの躍進が特徴的といえよう。小林愛実さんはコンクール歴も華々しい。現在は米国カーティス音楽院で学ばれているらしい-やはり米国の音楽院のレベルは高い。市井の私からすると、ガラコンサートが楽しみである。今年は優勝者が出るのだろうか。小林さんは入賞できるだろうか。日本人初の優勝者とならないだろうか(日本人最高位は内田光子の第2位)。気になる結果は2日後に判明する。


ちなみに、本選出場者は下記である。
・Mr Seong-Jin Cho (韓国)
・Mr Aljoša Jurinić (クロアチア)
・Ms Aimi Kobayashi (日本)
・Ms Kate Liu (アメリカ)
・Mr Eric Lu (アメリカ)
・Mr Szymon Nehring (ポーランド)
・Mr Georgijs Osokins (ラトビア)
・Mr Charles Richard-Hamelin (カナダ)
・Mr Dmitry Shishkin (ロシア)
・Mr Yike (Tony) Yang (カナダ)


ピアニストは指先で考える (中公文庫)/中央公論新社

中村紘子のエッセイがきっかけで、音楽エッセイに最近はまっている。Amazonで衝動買いした「ピアニストは指先で考える」を読了した。著者は青柳いづみこ女史である。マルセイユ音楽院を首席で卒業し、ピアニストとしては珍しく、東京芸術大よりドビュッシーの研究で学術博士号を得ている。エッセイストとしても高名で、吉田秀和賞を受賞している。

エッセイは人となりが出るものである。中村女史に比べるとあっけらかんな性格なのか、フランクな内容が多い。中村女史は社会状況や人生観のような思想を分析する傾向があるが、どちらかというと青柳氏は、演奏技巧や音楽教育など実務家的な話が多いように感じられる -- 大阪音楽大教授としても働いているので当然といえば当然だろうか。


それにしても興味深いのが大阪と東京の演奏の違いである。大阪の方が感情表現が豊かで、ダイナミックなのだという。国によって演奏に違いがあることはよく言われるが、やはり同じ国でも演奏に若干のスタイルがあるのである。

あと、ミケランジェリといえばイタリア出身のピアノの巨匠だが、彼は初見演奏が苦手だったという。14歳で受けた音楽院では難曲で満点10点をとるものの、初見演奏は6.5点だったという。エリザベート王妃国際コンクールでは、協奏曲で現代最高のピアニストといわれたが、コンクールのために作曲された曲の演奏(コンクール中に渡されるので準備期間が短い)が芳しくなく、7位だったらしい。ちなみに、下手の横好きだが、私もピアノを弾くが、音色の操作では褒められるが(もちろん趣味でやっているにしてはだが)、初見演奏や譜読みは異常に苦手である。プロでも苦手な人がいるというのは意外な発見だった。こうした能力は、生まれつきなのだろうか。アルゲリッチにいたっては、睡眠中に聞いただけで曲を覚えてしまったという逸話があるが、これはさすがに先天的な才能だろう

ちなみに、青柳女史は東京芸術大学附属高校出身だが、昭和40年代はかなり自由な学風だったらしい。管理主義教育云々の時代だと思われるが、パーマも何もかも自由で、授業は午前中のみ、テストも教科書をみながら解くというような環境だったらしい。その後の改革で厳しくなたらしいが。その後、芸大に進み、エリートコースのパリ音楽院に留学する予定が、病気をしたため、そのまま芸大の修士に進んだらしいーそこで研究の楽しみに気がつき博士にまで進むのである。しかし、結果的にはこれが良い結果だったという。当時は自分のピアノに不満が多く、留学してもノイローゼになっていたかもしれないと。芸大中退で留学していたら、博士どころか修士課程にも入れなかっただろう。まさに塞翁が馬である。