全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が主催し、真夏の風物詩として半世紀の歩みを重ねてきたピティナ・ピアノコンペティションの最上位にあたる特級のファイナルの審査が8月21日、サントリーホール 大ホールで行われ、西山響貴(にしやま・ひびき/24歳)がグランプリに選ばれた。ファイナルの来場者の投票による聴衆賞、YouTubeライブ配信の視聴者による投票によって決まるオンライン聴衆賞は、いずれも沢田蒼梧が受賞した。
ピティナ・ピアノコンペティションの特級の結果が出たが、グランプリは西山響貴(東京大文学部卒業・桐朋学園大学院在学)。銀賞は山﨑 夢叶(東京芸大在学)、銅賞・聴衆賞・オンライン聴衆賞は沢田 蒼梧(名古屋大医学部医学科卒業)だった。入賞者のうち学部が音大なのは銀賞の山﨑氏のみだった。グランプリの西山氏は東京大学文学部、沢田氏は名古屋大医学部卒の医者である。
最近は非音大系のピアニストが散見される。ショパンコンクールの三次予選まで出場したセミファイナリストでありユーチューバー・ピアニストの角野隼斗は、開成から東京大工学部卒業後に東京大情報理工学系研究科を修了している。また、米国を代表するヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの2025年の優勝者はアリスト・シャムであるが、ハーバード大学で経済学の学士号を取得している(ニューイングランド音楽院音楽修士号)。2015年のショパンコンクールの第5位入賞者のイーケ・トニー・ヤンも経済学部卒である。
2025年のショパンコンクールのセミファイナリストで、2023年のショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位入賞者のピオトル・パヴラクは数学の天才でもあり、国際数学オリンピックにポーランド代表で銅メダルを獲得し、グダニスク大学で数学を学び、修士号まで取得している。キット・アームストロングは、名ピアニストのアルフレッド・ブレンデルの弟子だが、9歳でユタ州立大に通い始め、20歳でパリ第6大学から数学修士号を取得。アンドレイ・コロベイニコフはロシアのピアニストだが、17歳で大学を卒業し法学士号を取得し、ピアニストとしての活動と並行して法学研究も行っている。
多才なピアニストをみていると、理系に秀でている人が多いように思う(なお、現代経済学もほとんど数学)。これは音楽が数学の一種だからだろうか。要は音の高さ(周波数)やリズムの比率などは、多くの要素が数学的な秩序に基づいているのである。数学的な知性が高い場合、音楽の理解が早いので、あとは運指などのトレーニングでピアノは弾けるようになるのではないかと思う。つまり、数学的知能と音楽的才能は一定の相関性があるのだと思うが、学術研究だと一般知能Gとの関係等で、様々な議論があるようだ。音楽演奏も脳の機能である以上、やはり知能の呪縛の中にあるようだ。しかし、そういうと音楽は数理モデルで説明可能だが、音楽の持つ不思議な叙情感や精神性はなんだろうか。私は理知性や合理性から締め出されたゴーストなのだと思う。しかし、音楽をそれたらしめるのはそのゴーストなのだとも思うのである。

