代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの価格が急伸している。米東部時間21日未明には一時7万9450ドル近辺まで上昇した。週間での上昇ペースは2割強に及ぶ。週間の上昇率では約2年半ぶりの大きさを記録する勢いだ。基軸通貨ドルの価値が下落するなか、受け皿として仮想通貨を買う動きが優勢となっている。

 

暗号資産がまた急速に価格を上昇させ話題になっている。しかし、年初から下落基調であり、ここ数日の上昇程度では年初の価格には及ばず、最高値には程遠い。こうした価格の上昇に一喜一憂しても仕方がない。重要なのは、なぜこうした価格変動が起きたのかという点を理解しておくことであろう。

 

一つにはトランプ大統領が、暗号資産法案可決を議会に要請したことだ。また、暗号資産の業界関係者を集めて会合を行うなど、法案成立への本気度を見せている。ここには商品先物取引委員会のセリグ委員長、証券取引委員会(SEC)のアトキンス委員長も出席しており、また、かつてSECと訴訟でもめていたリップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOも同席していた。もともとSECが訴訟を乱発して、米国の暗号資産業界は萎縮し停滞していたが、法的な枠組みが整備されれば、米国は暗号資産を牽引するだろう。今年度中の成立は未知数であるが、トランプ大統領はまだ2029年1月まで任期があるので、何らかの法整備は進捗するものと期待される。

 

ここまで暗号資産が注目される背景には、長期的な米ドルや法定通貨の価値に対する懸念もあるのではないか。米国の連邦政府債務が40兆ドル(約6300兆円)を超えたのだ。高齢化に伴う社会保障費の増加が続き、また、利払い費も増加しており年1兆規模である。債務の利息の支払いだけで、ドイツ連邦政府予算(約0.6兆ドル)を上回るといえば、その債務の巨大さが分かるだろうか。米国はデフォルトはなんとか回避するだろうが、結局、歳出削減や増税は政治的に困難なので、インフレをある程度は黙認し、「インフレ税」により債務を圧縮するのではないかという動きが出てもおかしくない。

 

ドルで資産をもっていても、インフレ(物価上昇)により、購買力は下がっていくのだ。米国の債務問題はいまのところ解決策がないので、借り換え等で対処しているが、いつまで続くのだろうか。こうしたときに価値保存手段として適しているのが、年間の新規供給が急増しにくい現物資産のゴールドや、発行量に上限がある暗号資産なのだ。ビットコインは発行量が2100万枚であり、法定通貨と異なり、中央銀行などが発行量を増やすことによって希薄化することがない。今後、インフレが加速した場合に、法定通貨は価値が棄損するかもしれないが、逆に暗号資産は価値を上昇させるかもしれない。短期的には上昇と下落が繰り返されるが、長期的なトレンドではビットコインの価値は上昇していくのではないかと期待できる。

 

ちなみに、最高値更新の期待を持っている投資家もいるかもしれないが、これまでの傾向を踏まえると、何等か新規の要因が生じない限り、最高値の更新はまだ先である。最高値の更新は過去のサイクルからすると、半減期から約1年~1年半後である。つまり、2028年4月中旬~下旬に半減期を迎え、2029年秋頃に最高値を更新するだろうと予測できる。ただすでに95.6%は採掘済みであり、残り4.4%しか追加の流入がないのだとすると、もしかしたら供給量の減少による価格上昇は限定的かもしれない。ただ前述のとおり法定通貨へのリスクヘッジとしての需要増加は価格の上昇要因となるだろう。2030年には100万ドル(1.6億円)に達するとの強気の予測もあるが、そのためには米株式市場全体の時価総額の約25%規模の資金流入が必要である。それは難しいので、現実的には40~50万ドル程度にとどまるのではないかと思う。日本は暗号資産が金融商品として取り扱われるようになることや、今後、米国政府のビットコイン購入などがあればありえない話ではない。まだまだこれからが本番なのである。